インターネット上での表示・広告規制について

インターネット上での表示・広告規制について

本コラムでは、インターネット上での表示・広告規制について、インターネット上で事業を行う方が注意しておくべき事項について説明する。なお、本コラム中の意見にわたる部分は、すべて筆者の個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係である。

現実社会とサイバー社会の違い

まず、現実社会において商品を購入する場合、商品の購入を考えている消費者は、通常、商品を販売している店舗へ訪れて、実際に商品を見て、手にとって確認したり、販売員から商品についての口頭説明を受けたり、逆に販売員に対して質問をしたり等を行い、商品に関する情報を入手する。

このようにして得られた商品情報をもとに、消費者は、自己の欲する商品であるかを判断し、実際に商品を購入するか否かを決定する。

これに対して、サイバー社会において商品を購入する場合、当然ではあるが、実際に商品を手に取ったりして確認することができない。また、店頭での販売員による口頭説明を受けることもない。

つまり、サイバー社会での商品購入の場合、消費者にとって、自己の欲する商品と合致するかどうかを判断する材料は、インターネット上の画面に表示される商品情報に限定されるということである。

以上のように、サイバー社会での商品購入が、非対面的な取引であることから、ネット上に記載された商品に関する情報だけをもとにして、当該商品を購入するか否かを判断することになる。

このように、消費者の判断材料が表示情報に限定されているという特質から、サイバー社会での商品購入においては、その表示される情報について、一定の制約が課せられている。具体的には、商品の品質・性能・その他契約条件等について、消費者に対して正確な内容が提供され、商品情報の質と量についても十分なものであり、その商品情報の表現においても購入希望者に分かり易いものであること等が要求されている。

つまり、サイバー社会においては、
  1. 情報の正確性
  2. 情報の質と量
  3. 情報の難易度と表示方法
が、ネット上での表示・広告を行う際のポイントになるということである。

表示・広告規制

基本的な考え方

サイバー社会での取引の場合、基本的には、①事業者のWEBページを閲覧した消費者が、自らの判断で商品購入の申込を行うものであること、及び②訪問販売のときのように直接勧誘を受けたりするような不意打ち的な要素も少ないといえること等から、勧誘の方法や態様等は、通常、問題にならないと考えられている。それ故、サイバー社会における表示・広告規制は、商品情報に関する規制が中心となる。

この表示・広告規制を行為態様という点から見ると、消費者に商品に関する情報が伝わらない場合又は誤って伝わるような場合としては、次のものが考えられる。

  • 提供する情報が不足している場合(消極的広告規制)
  • 積極的に虚偽情報を提供する場合(積極的広告規制)
そして、表示・広告規制に関する法律としては、代表的なものとして、特定商取引に関する法律(以下、「特商法」という。)及び不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景表法」という。)がある。

特定商取引に関する法律における表示・広告規制

まず、特商法において、①積極的広告規制である一定事項の表示義務(特商法11条)、及び②消極的広告規制である誇大広告等の禁止(特商法12条)が規定されている。

以下、それぞれについて見ていく。

積極的広告規制である一定事項の表示義務(特商法11条、省令8条)

表示・広告
事業者がサイバー社会において、インターネット取引を行う場合、以下の事項を表示・広告しなければならないとされている。
  1. 販売価格・役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、 販売価格及び商品の送料)(法11条1号)
  2. 代金・役務の対価の支払時期及び方法(法11条2号)
  3. 商品の引渡時期・権利の移転時期・役務の提供時期(法11条3号)
  4. 商品・権利の売買契約の申込みの撤回、又は売買契約の解除に関する事項(法11条4号)
  5. 事業者の氏名又は名称、住所、電話番号(省令8条1号)
  6. 事業者が法人である場合は代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名(省令8条2号)
  7. 申込み有効期限があるときはその期限(省令8条3号)
  8. 代金・送料以外に必要な手数料等があるときはその内容・金額(省令8条4号)
  9. 瑕疵担保責任の特約があるときはその内容(省令8条5号)
  10. 商品又は役務を利用するために必要な電子計算機の使用及び性能その他の必要な条件(省令8条6号)
  11. 販売数量の制限その他の特別な条件がある場合はその内容(省令8条7号)
  12. 広告の表示事項の一部を表示しない場合であって、法11条但書の書面を請求した者に当該書面に係る金銭を負担させるときは、その額(省令8条8号)
行政処分
そして、上記の特商法11条の記載事項に違反した表示・広告は、主務大臣による指示(特商法14条)、業務停止命令(特商法15条)の対象になる。

なお、消費生活安心ガイドにおいて、平成22年7月1日現在、特商法違反に基づく処分件数の推移及び事業者一覧の公表が行われている。行政処分の対象になった行為について、消費者庁がどのような認定を行ったのかがわかることから、事業者の方には一読をお勧めする。
参照条文
特定商取引に関する法律第11条(通信販売についての広告)
販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは指定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし、当該広告に、請求により、これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、販売業者又は役務提供事業者は、主務省令で定めるところにより、これらの事項の一部を表示しないことができる。

一  商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料)

二  商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法

三  商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期

四  商品若しくは指定権利の売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(第十五条の二第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)

五  前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
特定商取引に関する法律施行規則第8条(通信販売についての広告)
法第11条第5号の経済産業省令で定める事項は、次に掲げるものとする。

一  販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号

二  販売業者又は役務提供事業者が法人であつて、電子情報処理組織を使用する方法により広告をする場合には、当該販売業者又は役務提供事業者の代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名

三  申込みの有効期限があるときは、その期限

四  法第11条第1号に定める金銭以外に購入者又は役務の提供を受ける者の負担すべき金銭があるときは、その内容及びその額

五  商品に隠れた瑕疵がある場合の販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容

六  磁気的方法又は光学的方法によりプログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)を記録した物を販売する場合、又は電子計算機を使用する方法により映画、演劇、音楽、スポーツ、写真若しくは絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞させ、若しくは観覧させる役務を提供する場合、若しくはプログラムを電子計算機に備えられたファイルに記録し、若しくは記録させる役務を提供する場合には、当該商品又は役務を利用するために必要な電子計算機の仕様及び性能その他の必要な条件

七  前三号に掲げるもののほか商品の販売数量の制限その他の特別の商品若しくは権利の販売条件又は役務の提供条件があるときは、その内容

八  広告の表示事項の一部を表示しない場合であつて、法第11条ただし書の書面を請求した者に当該書面に係る金銭を負担させるときは、その額

九  通信販売電子メール広告(法第12条の3第1項第1号の通信販売電子メール広告をいう。以下同じ。)をするときは、販売業者又は役務提供事業者の電子メールアドレス

消極的広告規制である誇大広告等の禁止(特商法12条、省令11条)

表示・広告
事業者が消費者に対し、虚偽又は欺まんにわたる表示・広告を行って、消費者の判断を誤らせることを予防するため、特商法12条は、事業者に対し、インターネット取引をするにあたって、以下の事項に関しての誇大広告を禁止している。
  1. 商品の性能、権利・役務の内容(法12条)
  2. 返品特約(法12条)
  3. 商品の種類・性能・品質・効能、役務の種類・内容・効果、権利の種類・内容・権利に係る役務の効果(省令11条1号)
  4. 商品・権利・役務、事業者・事業者の営む事業についての国・地方公共団体・通信販売協会その他著名な法人その他の団体・著名な個人の関与(省令11条2号)
  5. 商品の原産地・製造地、商標・製造者名(省令11条3号)
  6. 法11条各号に掲げる事項(省令11条4号)
行政処分
そして、特商法12条の違反行為に対しても、主務大臣による指示(法14条)、業務停止命令(法15条)の対象になる。また、誇大広告等の禁止違反に対しては、100万円以下の罰金に処する制裁も規定されている(特商法72条3号)。
薬事法・健康増進法における表示・広告規制
誇大広告等の禁止については、特商法以外にも、景表法や、薬事法・健康増進法等においても規定がなされている。そして、薬事法・健康増進法等による表示・広告規制は、サイバー社会における取引規制にも及ぶ。

まず、薬事法68条は、未承認の医薬品等の広告を禁止している。具体的にどういうことかと言うと、健康食品の広告において、医薬品的な効能・効果を宣伝すること等が、この未承認の医薬品等の広告を行うことに該当する。

次に、薬事法66条は、医薬品等において、承認された効果を超える誇大広告を禁止している。上記の薬事法違反については、特定商取引法等と重複して適用される。

なお近時、インターネット上での健康食品広告は、薬事法違反になっているものが頻出している状況であるとの報告がなされているところであり、現在、消費者庁において、特定保健用食品を含む健康食品の表示のあり方、及び健康食品の表示の適正化を図るための表示基準及び執行のあり方等を議論するために、健康食品の表示に関する検討会が開催されている(http://www.caa.go.jp/foods/index1.html)。

健康食品に関する事業者の方で、最先端の議論状況を知っておきたい方には、一読をお勧めする。

また、健康増進法32条の2は、「何人も」を規制対象にしていることから、広告主である食品製造業者や販売業者はもちろんのこと、食品の健康増進効果について、誇大な表現をしたチラシ・書籍の発行団体、新聞社、雑誌社及びテレビ局等にも健康増進法の規制が及んでいる。

そして、薬事法と同様に、特定商取引法等と重複して適用される。

事業者が健康食品を製造しているような会社でなかった場合であっても、その広告に関わっている事業者については、健康増進法32条の2の規制が及んでいることに注意する必要がある。

なお、消費者庁では、健康増進法第32条の2に基づく業務の一環として、インターネットにおいて、健康食品等の虚偽・誇大表示の監視業務を行っているところである。
参照条文
薬事法第68条(承認前の医薬品等の広告の禁止)
何人も、第14条第1項又は第23条の2第1項に規定する医薬品又は医療機器であつて、まだ第14条第1項若しくは第19条の2第1項の規定による承認又は第23条の2第1項の規定による認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
薬事法第66条(誇大広告等)
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2  医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

3  何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
健康増進法第32条の2(誇大表示の禁止)
何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第3項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。

2 内閣総理大臣は、前項の内閣府令を制定し、又は改廃しようとするときは、あらかじめ、厚生労働大臣に協議しなければならない。

不当景品類及び不当表示防止法における表示・広告規制

不当な表示の禁止

景表法は、第4条において、「不当な表示の禁止」について規定している。その不当表示の禁止事項としては、以下のとおりである。
  1. 商品や役務等の内容についての「優良誤認」(法4条1項1号)
  2. 取引条件についての「有利誤認」(法4条1項2号)
  3. 内閣総理大臣が指定するもの(法4条1項3号)

優良誤認表示

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格その他の内容についての不当表示のことをいう。

例えば、カシミヤ混用率が80%程度のセーターに対して、「カシミヤ100%」と表示するような場合、すなわち、内容について、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示が優良誤認表示に該当する。

また、「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していたような場合、すなわち、内容について、事実に相違して競争業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者に示す表示も優良誤認表示に該当する。

有利誤認表示

有利誤認表示とは、商品やサービスの価格その他取引条件についての不当表示のことをいう。

例えば、当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨を表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合、すなわち、取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示が有利誤認表示に該当する。

また、他社商品の2倍の内容量です。」と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量に過ぎなかった場合、すなわち、取引条件について、競争業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示が有利誤認表示に該当する。

行政処分

景表法4条1項の違反行為に対しては、内閣総理大臣による措置命令(景表法6条)の対象になる。また、この措置命令に違反した者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する制裁も規定されている(景表法15条)。

実際の措置命令の例としては、消費者庁の創設後、初めての景品表示法に基づく行政処分として、株式会社ファミリーマートに対する措置命令がある。

参照

参照URL
 消費者庁の景品表示法のホームページ  http://www.caa.go.jp/representation/index.html#m01
参照条文
景表法第4条(不当な表示の禁止)
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

一  商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

二  商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

三  前2号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの

2  内閣総理大臣は、事業者がした表示が前項第1号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第6条の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。

ガイドラインによる表示・広告規制

その他、ガイドラインによる表示・広告規制として、平成20年7月付けの経済産業省による「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」において、
  1. 薬事法及び健康増進法に基づくウェブ上の健康食品、ペット用品、化粧品等の表示・広告規制(薬事法12条1項、健康増進法26条、32条の2等)、
  2. 貸金業法による広告規制(貸金業法15条、16条)、
  3. 金融商品取引や商品先物取引に関する広告規制(金融商品取引法37条等)
が具体例として挙げられている。

上記事業に関連する事業者の方は、一読されるようお勧めする。
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山根 義則(やまね よしのり)

弁護士

1972年福岡県生まれ。1996年九州大学工学部情報工学科卒業。2006年弁護士登録。2007年九州大学大学院システム情報科学府情報工学専攻博士後期課程に飛び級入学。暗号理論と情報セキュリティの研究に従事し、その後弁護士となる。弁護士として、事業再生、M&A、税務訴訟、住民訴訟、知的財産コンサルティング等の案件を扱う。研究者としては、電子商取引、電子マネー等の情報セキュリティに関する研究に従事する。法律と技術との架け橋となること、クライアントのニーズに対して戦略的解決を図ることに注力している。

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