九州・山口のランニング人口と巨大マラソンイベントの可能性

九州・山口のランニング人口と巨大マラソンイベントの可能性

先日2月27日、日本最大のマラソンイベント・東京マラソン2011が開催されました。参加者数36,449人はさることながら、この36,449人の枠を目指して335,147人の申し込みがあったことに驚かされます。もちろん、申込者数は過去最高、ちなみに2年前の大会で経済効果は376億円と言うから、2011年大会は400億を軽く超える数字となっているはずでしょう。

ランニングブームの一旦をあらわす現象ですが、福岡も例外ではありません。

週末ともなれば、大濠公園はランニングをする人たちでごった返しています。大濠公園の周辺には、ランニング愛好者を対象としたランナーズロッカー/シャワーを備えたフィットネススタジオができたり、洒落た飲食店も増え、周辺にも波及効果が及んでいるようにも思われます。

また、3月3日にオープンした東急ハンズの中には、ランニング用品を販売する“大濠”の名を冠した店舗もできていますし、ランニング市場の廻りは活況を呈しているように思えます。

そこで今回は、いったい九州・山口にランニング人口がどれくらいいて、福岡で巨大なマラソンイベントが成立する市場性があるのかどうか、数字をもとに解説・分析していきます。なお、本稿は弊会会員向け機関誌「九州経済調査月報」に詳細を掲載しています。
http://www.kerc.or.jp/publish/publish/cate_detail.php?Selected_Id=3&Category=3

九州・山口は“ランニング”が盛んなのか?

今年の元日、駅伝の実業団日本一を争うニューイヤー駅伝で、安川電機㈱が最終区までトップ争いを繰り広げました。この例を取り上げるまでもなく、九州・山口でいえば、山口県の“カネボウ”が日本のマラソンや駅伝の一時代を築きました。もちろん、今でも実業団の陸上部の代名詞とも言える、“旭化成”陸上部が存在します。

また、九州・山口で開催される大会も、格式として日本トップクラスの福岡国際マラソンや九州一周駅伝など九州ならではの大会が長らく続いています。

このように、九州・山口はマラソン“競技”という面において、全国でも傑出した存在感を有する地域です。つまり、、競技者も多く、かつピラミッドの頂点は高いものと思われますが、果たして、市民レベルでの、すそ野は広いのでしょうか?

総務省「社会生活基本調査」によると、ジョギング・マラソンの活動者率(10歳以上の人のうち年間1回以上ジョギング・マラソンをした人の割合)は、沖縄が最も高くなっているほか、南九州も沖縄、関東Ⅰに次いで高くなっています(図1)。

ジョギング・マラソンの行動者率は、通常、年齢が高くなるほど低くなりますので、沖縄や関東Ⅰが高いのは人口の平均年齢の若さが行動者率の高さにつながっていると考えられますが、南九州は全国的にも平均年齢が高い地域にもかかわらず、行動者率が高いことから、年齢に関係なく、幅広い層がジョギング・マラソンに興じているように思われる。

しかし、北九州については他地域ほどさほど高いというわけではありません。プラスに解釈すれば、“まだ伸びしろ”があるという見方もできます。

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九州・山口のジョギング・マラソン人口はどの程度?

当然のことながら、近年、ジョギング・マラソン人口は急激に増加しているものと思われます。

日本生産性本部「レジャー白書」に掲載されている“ジョギング・マラソン人口”をベースに九州・山口のジョギング・マラソン人口を試算すると、約360万人となりました(図2)。

全国(2,810万人)シェアは12.8%と人口比(12.6%)を若干上回るレベルですが、九州・山口でより高齢化が進んでいることを考慮すれば、決して少ない数ではないと評価できるように思います。

次にジョギング・マラソン人口の推移をみてみると、意外なのは、2005年までジョギング・マラソン人口が減少してきた点です。健康志向の高まりは長らく続いているはずですが、それは決してジョギング・マラソン人口に直結するものではなかったわけです。

ジョギング・マラソン人口が増加しはじめるのは、2006年以降で、2009年のジョギング・マラソン人口は全国、九州とも近年のピークである02年を7年ぶりに上回るところまで増えています。

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福岡におけるマラソンイベントの市場性

続いて、(株)アールビーズ「ランナーズ」各号の大会予定一覧より、マラソンイベントの開催件数を整理・集計した結果をみてみたいと思います。

もちろん、同誌に掲載された大会のみを対象とするため、全てが網羅されているものではありませんが、全国誌に掲載されているイベントであることから、ある程度、広域的に参加者を募りたい意志があるイベントが対象になっていると捉えられます。

その結果、2009年の九州・山口におけるマラソンイベントの開催件数は73件、全国は654件、全国に占める割合は11.1%となっています(表1)。

さらに、対象イベントのうち参加者数が掲載されているイベントの参加者数をまとめると、全国189.1万人に対し、九州・山口は22.2万人で、全国比は11.7%となります。

この数字の評価は難しいものがありますが、比較的少ないのではないかと判断しています。というのも、北九州(地域)はジョギング・マラソン人口の割にマラソンイベントの参加者数が少ないからです。

表1で、地域別のジョギング・マラソン行動者数(総務省「社会生活基本調査」(2006年))の地域別構成比とマラソンイベントと地域別参加者数の構成比を示していますが、マラソン大会の参加者数(供給)に対してジョギング・マラソン人口(需要)が多い地域(ジョギング・マラソン人口地域別構成比>マラソンイベント参加者数)は、首都圏の関東Ⅰであることがわかります。

しかし、関東Ⅱと合算すると(下欄参考)そのポイント差は2.2%ポイントまで縮小します。この関東Ⅰを除いて、マラソンイベントの参加者数(供給)に対してジョギング・マラソン人口(需要)が多い地域は、近畿Ⅰと北九州(福岡県、佐賀県、長崎県、大分県)であることがわかります。

いずれも隣接し一体化したブロックとして捉えられる近畿Ⅱ、南九州とを合わせても、関東のように構成比の差が縮小することはありません。

つまり、九州の中でもとりわけ北九州地域は需要に対してマラソンイベントが少ない地域と言えるわけです。そして、このデータを、当地において新規のマラソンイベントが成立しえる市場性を備えている条件をクリアしていると解釈できるように思います。

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期待される“福岡マラソン“の実現への取組

福岡を中心とする北九州地域はマラソン・ジョギング人口の割に大きな大会が少ない状況です。

ただ、福岡に大きなマラソンイベントがないわけではありません。その1つは「シティマラソン福岡」です。コースの概要は福岡ドームをスタート/ゴールとして、5km一般・5km車椅子についてはドーム周辺となっていますが、ハーフマラソンはコース全体の1/4は埠頭の倉庫街を走るコース設定になっています。

また、ハーフマラソンの参加者にはチェックポイントごとに規定時間があり、クリアできなければ棄権を余儀なくされます。もちろん交通規制の問題など、様々な条件が重なって致し方ない面もありますが、実際にシティマラソン福岡に参加するランナーたちからは「もっと市内の中心を走りたい」や「渡辺通りを走ってみたい」、「もう少し時間に猶予が欲しい」などの要望が絶えないようです。

そんな中、「アジアが誇る福岡マラソンをつくる会」が設立されました。九州を代表する都市・福岡で地元の熱き想いを昇華させ、産官民学/老若男女を巻き込んで機運を高め、福岡らしいマラソン大会の実現を目標にしています。

実行委員会には大学教授や財界人、市民らが参加。後藤社長も委員の一人として名を連ねています。ホームページで署名活動も行っていますので、是非、「福岡をマラソンイベントで元気にしたい!」という方、下記のURLにアクセスしてください。
http://www.fukuokamarathon.com/
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片山 礼二郎(かたやま れいじろう)

財団法人九州経済調査協会 情報研究部次長

九州・山口をフィールドとする景気動向、地域経済動向調査を専門とするが、種々雑多な分野を幅広くカバーし、九州経済を常にウォッチしている。中でも最も身近な福岡市をフィールドとした調査実績は数多く、福岡市内のオフィス機能や商業不動産の動向に関する調査は、福岡市が策定した福岡市新都心構想策定にも活かされている。また、ここ3年、各方面で紹介される九州経済白書の統括責任者として、テレビ・ラジオ、新聞はもちろん、各地で出前で講演活動にいそしむ。

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