基礎疾患を持つ部下対応~もともと「高血圧」「糖尿病」などの持病を持つ部下が、脳卒中などの重大な病気で倒れたとき、職場では何ができるでしょうか~

基礎疾患を持つ部下対応~もともと「高血圧」「糖尿病」などの持病を持つ部下が、脳卒中などの重大な病気で倒れたとき、職場では何ができるでしょうか~

「みんな聞いてくれ、半年前に脳梗塞で倒れたシステム主任が、来月から復職することになったぞ。」

フクショー部長が告げると、一同から「良かったね~」という声が上がりました。

よかぞう係長「この前もお見舞いに行きましたが、幸い、後遺症もほとんどないようですよ。」

ケイコ「これでご家族も一安心ですね。」

よかぞう係長「けど、脳梗塞で倒れる前に、もともと『血圧が高いんだ』と言っているのを聞いた事がありましたが、血圧のほうは大丈夫なのでしょうか?」

フクショー部長「血圧については、入社以来ずっと健康診断の結果が『要精密検査』だったそうなのだが、健診担当者がどれだけ勧めても精密検査を受診しないし、私からも勧めたことがあったが、もっと強く勧めれば良かったと反省している。」

ケイコ「そうだったのですね、そう言えば、勤務中だるそうにしていることがあり、体の具合が悪そうなときもありましたね。」

エイタ主任「それに、少々、肥満傾向にありましたし、喫煙量も多かったですし、ご家族によると、アルコールもガンガン大量に飲んでいたようですし、運動不足だったようですし、そういった生活習慣も気になりますね。」

よかぞう係長「これからは、そのようなことにも目を配って、システム主任が二度と倒れないように皆でサポートしていければいいですね。」

フクショー部長「おおっ!その言葉、待っていたぞ!」

よかぞう係長「は・・・い?」

フクショー部長「次に倒れたら、よかぞう係長のせいだからな(ニカッ)」

よかぞう係長「むちゃぶりですーーーーーっっ(どうすればいいのだろーっ?)」

・脳の血管が詰まる脳梗塞、脳の血管が破れる脳出血、それにくも膜下出血などの脳血管障害を脳卒中と言うことがあります。

・最近は脳卒中により死亡する人は減ってきていますが、脳卒中の患者数自体が減っているわけではありません。命が助かった人は後遺症により、従来通りの就労ができなくなるケースがあり、ここが職場の問題となります。

・今回のシステム主任のように奇跡的に後遺症がほとんどない人もいますが、半身麻痺や失語症などの身体障害が残る人もいます。復職の際は、専門医による残存機能の確認と、医師からのアドバイスに基づいた就労支援を行っていくことが大切です。(万が一、復職できない程度の障害が残った場合は、残存機能に基づいた再就職支援や公的支援の情報を提供するなど、できる限りのケアができるといいですね。)

・もともと、高血圧、高脂血症、糖尿病などの基礎疾患がある人に起こりやすいため、復職後は特に、これらの管理が再発防止にもつながります。

・その他、心疾患、変形性関節症、肥満症などの合併症にも注意が必要です。

・ほとんど後遺症が残らなかった人も含めて、今まで通りの生活や仕事ができなくなったことについて、動揺しない人はいません。そういった心のケアも忘れないでください。

よかぞう係長「・・・というわけで、システム主任の主治医などのアドバイスによると、最初の2ヶ月は短時間勤務で、仕事の内容は内勤で、補助業務が中心となります。そうやって様子を見ながら勤務時間を延ばしたり、元職に戻していくそうです。ただ、復職したと言っても、当分はリハビリが必要な体だということを忘れないでください。何か質問はありますか?」

エイタ主任「通院のため、月に数日休まれるとおっしゃいましたが、事前にわかりますか?というより、そういう個人情報は、私たちがあまり知りすぎてはいけないものなのでしょうか?」

よかぞう係長「いいえ、今回の場合は、主治医も、ご家族も、私たち職場も、皆で連携して支援するということで、本人に了解を得ていますから心配ありませんし、必要な情報は皆さんの仕事に支障がないように、できるだけ事前に把握してお知らせしようと思っています。」

ケイコ「システム主任は仕事をバリバリこなすタイプの人だったから、お辛いでしょうね。」

よかぞう係長「そうですね。ただでさえ、今まで通りに働けない上に、補助業務をすることについて、相当のストレスがかかることが考えられます。私も気がけておきますが、様子がおかしいなと思ったら、すぐに報告してください。」

一同「はい!」

フクショー部長「それから、『頑張れー!』とか無理に励ますことはやめておこうなっ!」

一同「それは部長が一番、言いそうですっ!」(^^;

・復職時の就労支援(就業制限)については症状によりさまざまですから、必ず、専門医や産業医に意見を求めた上で行ってください。

・もちろん、本人の就労意欲の確認も忘れないでください。

・個人情報の取扱いについても、配慮が求められます。

・本人の生活習慣等については労働者自身や家族によるケアが第一で、職場でできることは限られていますが、健康診断の結果に基づく指導等は、単に「病院へ行くように」と告げるだけではなく、実際に受診ができるような仕事の配分(時間配分)まで気を配ってください。

その他、血圧上昇の原因となる夜勤や交替制勤務が制限されるだけでなく、冬場の屋外業務不自然な姿勢で行う業務など、身体的・精神的疲労が蓄積される業務も制限されることがあります。

逆に言えば、現に、高血圧などの基礎疾患を持つ部下がこのような仕事に就いている場合、脳卒中などの重大な病気を起こす前に、精密検査を受診させる→治療につなげるなどの対策ができるということです。

特に、中高年齢者の場合、回復に時間がかかることも考えられるため、より早めの対策が欠かせません。なお、過重労働対策など職場環境の把握・改善も、この際、全社的に見直すきっかけにされるといいですね。

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久野 亜希子(ひさの あきこ)

社会保険労務士

大学卒業後、民間企業の人事労務管理担当に一貫して従事し、平成14年開業。顧問先企業の労務関連全般の相談業務に従事する一方で、新聞・専門誌等での連載、国が行う研修講師を行う。最近は、職場におけるメンタルヘルス対策に関する相談や教育等に携わる機会が増え、うつ病等のメンタルヘルス疾患に罹った社員への対応や、復職支援について、県内の多くの企業にアドバイスを差し上げたり、社員教育を行ったりしている。

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