ファミリービジネスが地域経済を活性化する!!

ファミリービジネスが地域経済を活性化する!!

一昔前(今もありますが)、同族会社という言葉がありました。親族で企業経営・継承するといった感じの閉鎖的企業といった感じで、どちらかというと、あまり良いないイメージで、とらえられていたことが多かった気がします。この同族会社のうち、老舗企業を取り出し、更に、そのプラスの部分だけ抜き出し、地域経済の活性化の柱として再構築したものが、本日ご紹介する「ファミリービジネス」です。

なお、今回の内容は、経済産業省が昨年まとめた「ファミリービジネス報告書」をベースに私見を交えたものなので、詳細は、以下の報告書をご参照ください。

http://www.meti.go.jp/policy/local_economy/nipponsaikoh/family.html

また、タイムリーなことに、4月6日、ファミリービジネスに関するセミナーが福岡で開催されます。是非、ご参加頂ければ幸いです。

シンポジウム「地域経済振興とファミリー企業・事業に見るリーダー力」

http://www.kyushu.meti.go.jp/event/1103/110324.html

ファミリービジネスとは~地域経済とFB~

厳しい経営環境下にあって、多くの企業において経営改革等を迫られる中、従来の価値基準を見直し、幅広い視点で経営手法を再検討する機運が高まっています。

そうした中、これまでの株主至上主義とは異なる側面を有し、不況時においても利益率が高いといわれ、雇用も守っているファミリービジネス(以下FB)という経営手法が、欧米で急速に関心を集めるようになってきています。

FBは、独自の経営手法に基づき、何世代にもわたり家族を通じてビジネス価値を継承するとともに、地域に対しても経済・文化など様々な面で貢献しているもので、持続性、安定性、地域への影響力など今後の地域経済活性化に向けての在り方を検討する上で、多くのヒントがあると考えられます。

特に、我が国には、創業百年を越える老舗企業が2~3万社存在するといわれ、欧州の6千社、米国の8百社を大きく上回り、世界でも有数の老舗大国だと言えます。

ただ、逆に、この老舗の部分が強く、新規創業、ベンチャーといったコンセプトでは、欧米や他のアジア諸国にも、大きく水をあけられていると思います。

このバランスをどう考えるかが、日本の大きな課題であると考えます。そのような中で、これまで幾多の歴史の荒波をくぐり抜けて、代々、経営を受け継いできた我が国の老舗企業も、今回の世界的な経済危機によって大きなダメージを受けており、地域において何代にも渡り事業を承継し、地域活性化に貢献してきた老舗の優良企業であるFBの減少は、地域経済に多大な影響を及ぼしかねない状況になっています。

なぜなら、FBが、地域のスポンサーであったり、アドバイザーであったり、あるいは、他企業のエンゼルであったり、タニマチであったりしていたからです。また、最近では、FBが、今まさに旬のソーシャルビジネスの苗床としても期待されており、FBの立て直しと更なる飛躍が、地域経済活性化の起爆剤になると考えられます。

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同族会社とFBの違い

FBとは、現在も創業家一族が所有し、経営において実質的な支配権を行使している企業をいうものの、法人税法で定義する同族会社のように、50%以上の出資比率を要件としないとされています。例えば、出資比率はファミリー全体で5%しかなくても、創業家一族が経営陣になって実質的に支配している場合はFBというわけです。

一般的には、『ファミリービジネス≒中小企業』というイメージを持たれがちですが、上記の定義によれば、ファミリーの出資比率が少ない上場企業であってもFBに該当することになります。

例えば、トヨタ自動車、竹中工務店、サントリーなどもFBとなるわけです。

FBの特徴

FBの特徴を5つに大別すると、次のとおりになります。

(1)経営の継続性

特に永続するFBでは、時々のファミリートップが長期的に経営者の責務を負うことが多いため、長年にわたって強いリーダーシップを発揮する形で意思決定できます。そうした内部環境のもとで家業を次代に繋いで行くことが重視されるため、以下のような経営スタイルが特徴となります。

・短期的な収益性に流されない長期ビジョンに基づく意思決定がなされやすい。
・日常的な業務の視点では、迅速な意思決定がなされやすい。
・トップを頂点とする組織としての一体感(一貫性)がある。

(2)経営のディシプリン

永続するFB は、経営のディシプリンも引き継がれることになります。それは創業者或いは中興の祖による、事業のあり方、顧客・社会・従業員との関係などに関わる家訓等の形をとる組織活動の規律と矜持を示唆するものであり、これを引き継ぐことにより、経営におけるおのずからなるディシプリンは、公開企業よりも厳なることがあります。永続するFBが通念と異なり公開企業に勝る点です。

(3)経営の方向性(持続的な競争優位性の構築)

家業を次代にバトンタッチすることが重視され、企業を投資対象の器としてみなす側面が弱いため、急速に企業を成長させる必然性がありません。また、経営方針が不況など短期的な環境変化の影響を受けづらく、持続的な競争優位性の構築を重視した経営戦略が取られます。

さらに、ファミリーの嗜好が経営にも反映されやすいこともあって、規模に依存しないニッチなポジションを志向することが多くなります。このため、ビジネスモデルとしては、強固な顧客基盤、ブランド価値や、物づくり面でのノウハウ・特許、さらに、社風・人材といった無形資産をコアコンピタンスとすることが志向されます。

(4)継続に向けての革新性

以上のように無形資産をコアコンピタンスとすることを志向する結果、顧客の獲得・管理のためのマーケティング(積み重ねることによってブランド価値の向上につながる)や、自社技術の応用先の探索といった成功の鍵を握るプロセスでは、必要とあらばリスクを負った革新的な手が打たれ、競合関係ともなり得る同業種・異業種とのオープン・イノベーション(例えば、地域の業界でのウィン・ウィンの関係を目指した技術やノウハウの公開)が志向されることもあります。

また、普遍性の高い経営理念や家訓を大事にしており、それらは現事業を継続することよりも優先されるため、現在本業の事業の衰退が見込まれる場合には、相当な覚悟をもって業種・業態の変革を含む大胆な事業革新が志向されることになるわけです。

(5)地域社会とFBとの関わり

一部上場を果たしているような少数の企業を除き、FBの多くは、中堅・中小のランクに属します。このため、自社で抱える経営資源に乏しく、競争上の参入障壁を以下のような地域性で築こうとするケースが多くなります。例えば、地域固有のニーズへの対応(市場面の地域性)や、地域固有の経営資源等の活用による差別化(協業先の資源を含む)などです。

活用される地域資源には、観光資源、地域の歴史・伝統、地域の労働力といった見え易い要素以外に、域内に偏在する情報、域内の産業集積、域内で培ってきた信用などもあります。

このように、FBと地域との関係は一体性を持つことが多く、地域からの影響、地域への影響は濃いものとなります。このことが、いたずらな経営の拡大や新規事業拡張を追い求めず適度を守り、地域から離脱せずに地域社会の経済文化に貢献する、と言う、FBの長所の源にもなっているわけです。

また、The Family Business Network(FBN)の表彰というものがありますが、その表彰条件は以下の10つです。
  1. 企業価値やミッションがファミリーの各世代で理解・共有されている。
  2. 従業員、株主、顧客、取引先、地域社会への誠実な対応。
  3. 財務状況と安定性で確かな実績を達成している。
  4. 市場で主導的な地位を占める商品を生産し、属する業界で信頼・尊敬を得ている。
  5. ファミリーメンバーの多くが直接経営に参画している。
  6. 有効な企業統治(ガバナンス)システムを確立し維持している。
  7. 世界中の国々で事業活動をしている国際的な企業である。
  8. 伝統と革新が効率的に融合している。
  9. 事業継承の準備、教育、計画等がなされている。
  10. ファミリー間で知識・経験が共有されている。

FBの課題

(1)事業継承に関わる問題

事業継承については、企業の継続とファミリーの資産管理(税金面等)の両面があります。企業の視点では、いかに円滑にファミリーの中からのリーダーを選定・育成するかが課題となり、ファミリーの視点では、いかに上手にファミリーとしての資産管理、資産相続をするかが課題となるわけです。

(2)経営資源の管理・獲得

人材面では、時間をかけた育成・選定がトップの大きな責務となり、有能な非ファミリー社員のモチベーションを下げないための処遇、ファミリーと波長の合った人材の採用・育成といった人事管理も重要になってきます。

資金面では、株主の分散を避け直接金融を志向しないため、資金調達オプションが限られます。。したがって、金融機関に対する信用の確保、或いは逆に資金のボトルネックを織り込んだ経営戦略が求められることになります。

(3)経営スタイルの特徴を踏まえたコミュニケーション

ファミリー内のコンフリクトというFBで時として見られる課題があります。

FBでない企業においては、企業経営において「マネジメント(事業経営)」を考えるだけで足りますが、FBの場合には、さらに、「オーナーシップ」と「ファミリー」という2つの要素が加わるのが特徴です(スリーサークルモデル(オーナーシップ、マネジメント、ファミリー)と呼ばれることがある)。その点を踏まえて関係者がコミュニケーションを十分図ることが重要です。

(4)企業統治とコンプライアンス

所有・経営・執行が一体化している場合が多くそのことに起因して独断・暴走のリスクも内包します。家訓の厳守や永続に対する承継者の責任感に加え、公開企業とは異なる統治体制故の制御・牽制の仕組みを如何に工夫するかが課題です。

地域経済活性化に向けての課題解決の担い手としてのFB

地域経済の活性化に向けては、地域の企業、地域支援団体、地元住民、金融機関、自治体など地域の多様な主体を巻き込んだ活動、それらを推進する上での強力なリーダーシップ等が必要となってきます。

FBは、地域に根付き世代を超えて地域とともに歩んできており、経済・雇用・文化など多方面にわたって地域に貢献しているケースが多くなっています。

また、FBは、地域からの信用を有し、地域の関係者の調整役及びリーダー的存在となっている場合も多く、地域活性化の担い手として相応しい存在といえます。

これまでも、FBがリーダーとなって地域の多様な資源を活用し新たな事業を創出したり、地域振興事業に資金提供を行うといったエンジェル機能を果たしてきた実績も見受けられます。人材の面でも、地域の主要産業の活性化に向けて同業者を含めた研修会の開催など地域社会の人的資源の付加価値向上に向けてリーダーシップを発揮している例もあります。

一方、地域の社会的課題に対しては、地域の関係者が自ら課題を解決していく取り組みや、各々の地域が資源の有効活用を図り独自性を発揮できるような取り組みを行うことが重要であり、その際、FBの主導的役割が大いに期待されるわけです。地域の課題解決・発展に向けて、FBが地域の担い手として活躍できるような環境整備を図っていくことが重要であると考えます。

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松田一也

松田 一也(まつだ かずや)

九州経済産業局地域経済課長
競争環境整備室長
JST産学官連携ジャーナル編集委員
九州大学大学院オートモーティブサイエンス専攻非常勤講師

1981年九州大学卒業後、九州経済産業局入局。中小企業技術、地域国際化等の担当を経て、環境ビジネス振興に従事、K-RIP(九州地域環境・リサイクル交流プラザ)を企画・運営。その後、九州大学工学研究院助教授、産学連携センター客員教授として、産学連携を推進。経済局復帰後は、調査課長として景気・経済動向の分析に従事、中小企業課長として施策の普及、中小企業の応援に従事。2010年5月からは現職として、各種の人的ネットワークを活かして、地域経済の活性化を支援中。全国1000名を超える読者に対して、メルマガ(真・連携通信R)も配信中。

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