サービスレベルマーケティングと農商工連携・6次産業化
サービスレベルマーケティング、という聞き慣れない言葉。これは、筆者が提唱している、我が国の企業の行く先を決めるための概念である。読者諸氏もご承知の通り、経済史的には十分すぎるほど成熟した我が国は、既に第三次産業が国内総生産の70%以上を占める。諸外国へ訪問した折に感じることは、我が国の事業者のサービスレベルの高さであり、これは経済の成熟に加え、国民性のなせる業であろう。
大連で「日本のレストランへ行こう」と、現地の方に案内された時、行く先は「餃子の王将」だった。
餃子は中国の料理ではないか、王将さんには申し訳ないが「レストラン」と呼ぶのもどうか、等といった軽い疑問を持ったが、実際に王将さんに連れて行かれて、現地の他店に比べたとき、クリンリネスや従業員教育の徹底等、我が国の代表選手として大連で十分な存在感を示している、企業・事業の在り方に感じ入ったものだ。
その背後に、我が国の第三次産業、特に、外食を含めた消費者サービス業のサービスレベルの高さを感じたのである。
相互扶助の精神
東日本大震災から1カ月が経った。
何ができるということもなく、ただ被災された方の命と健康を祈り、亡くなられた方を追悼するばかりの日々だった。
最近になって、国から支援志願確認が届き、中小企業の復興が現地の復興に繋がるならと志願はしたものの、まだ何ができるか見えているわけではない。
むしろ、刮目に値するのは、外部からの支援ではなく、被災者同士の互助活動にあると考えられる。
海外のメディアが次々に賞賛の声をあげたといわれる被災された方の振る舞い。「秩序意識を失わない日本人」「非の打ちどころのないマナー」「敬意と品格に基づく文化」などといったヘッドラインを、Webメディア上でも見ることができる。
ただ経済が成熟しただけでは成し得ない、相互扶助の精神、これは、ルース・ベネディクトが太平洋戦争直後に記した「菊と刀」で述べた、我が国の文化の特異性「恩義」「孝行」「仁義」など、日本人が日本人として持っている日本文化の型であり、これらを基に我が国の消費者サービス業におけるサービスレベルの高さが形成されていると考えられる。

サービスレベルマーケティングの展開
石油と食糧の自給が難しい我が国における、諸外国から認められる企業や国民のサービスレベルの高さは、BRICS等の急成長による資源不足を織り込まなくてはならない、世界経済・社会情勢において、産業や生活のエネルギーを確保するための大変重要な要素である。
このサービスレベルという概念が、国家間競争や多国籍企業間における競争優位性へと昇華できるかどうかは、それぞれのビジネスプレイヤーの判断に任せるとして、我が国の中小企業や農林水産業者においては、どのような考察ができるだろうか。
筆者は、我が国のサービスレベルの高さが最も競争優位性を発揮するのは、消費者サービス業であると考えている。
直接消費者に接し、さらには役務(えきむ)提供というサービスそのものを販売するビジネスは、サービスレベルに対する消費者の評価が厳しい。
その厳しい評価が故に、海外で差別的優位性を発揮する我が国のサービスレベルの高さを「生育」するための「苗床」にもなり得る。
これは、重要なトピックだ。
たとえば、現状BtoB(ビジネス対ビジネス)の製造業を営んでいる方であれば、より消費者へ近いBtoC(ビジネス対消費者)の製造業への転換を図れば(注:転換の必要があるわけではない)、サービスレベルを高めることが可能になる。
さらに言えば、製造業から小売業へ、小売業から消費者サービス業へと、順番に業種を拡大していくことで、段階的なサービスレベル向上が図れることになる。
業種を次々に拡大していくなど、経営者から見ると冗談のような話だが、一瞬でそれを行うわけではない。取り組んでいる企業は、すでに先を行っている。
農商工連携・6次産業化の本質
そもそも農商工連携や6次産業化の本質は何なのか、という話である。筋論からいえば、農が家業であるならば、農をすればよいことだし、商業者なら商業に励むのが当たり前である。
よく「付加価値を上げるために」、連携や6次化を図るという話もあるし、私もそういう説明を行うことがあるが、実際のところ、プレイヤーが増え、また業容が拡大する分、増えた付加価値が分散するリスクが拡大する、また付加価値増大そのものの不確実性も高まるのであり、自社にとっての付加価値が拡大するから連携・6次化を行うという議論には隙が多いといえよう。
では、連携・6次化の本質は何か。それは、マーケティング、つまり消費者が求めるが故に行っていること、なのである。新鮮な生鮮品を食べたい、でも中間流通を経由して買うときには、既にその鮮度を保てていない、だから産直なのであり、通年食べたい贔屓の農産物、しかし旬を除けば楽しむことはできない、だから加工を行うのである。
当たり前のことであるが、農商工連携も6次産業化も、マーケティングの視点、つまり顧客からの要望に応えんがためのビジネススキームであって、他ではないということをここでは強調しておきたい。
これは、まさに前述したサービスレベルをあげるために、業種を拡大していく考え方と同期を取るものであり、我が国の企業・人材としての強みを生かすためにも、サービスレベルの向上を目的に取り入れた、農商工連携・6次産業化が求められる今日であると、筆者は考えているのである。















