1 平成23年警察白書によるサイバー犯罪の検挙状況
平成23年警察白書(http://www.npa.go.jp/hakusyo/h23/index.html)によりますと、サイバー犯罪の検挙件数は、毎年増加をし続けており、平成22年度の検挙件数は、合計6,933件となっており、前年度よりも243件(3.6%)増加し、過去最多となっております。
出典:http://www.npa.go.jp/hakusyo/h23/honbun/pdf/06tokushu2.pdf
2 コンピュータ・ウイルスとは
コンピュータ・ウイルスとは、平成12年12月28日(通商産業省告示第952号)における「コンピュータウイルス対策基準」(http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/CvirusCMG.htm)の定義によると、次のとおりとされております。第三者のプログラムやデータべースに対して意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムであり、 次の機能を一つ以上有するもの。 (1) 自己伝染機能 自らの機能によって他のプログラムに自らをコピーし又はシステム機能を利用して自らを他のシステムにコピーすることにより、 他のシステムに伝染する機能(2) 潜伏機能
発病するための特定時刻、一定時間、処理回数等の条件を記憶させて、発病するまで症状を出さない機能(3) 発病機能
プログラム、データ等のファイルの破壊を行ったり、設計者の意図しない動作をする等の機能
3 従来のコンピュータ・ウイルスへの対応
コンピュータ・ウイルスを取り締まる法律として、刑法上では、電子計算機損壊等業務妨害罪関係(刑法234条の2)や、電磁的記録毀棄罪関係(刑法258条、259条)等の適用があるとされておりました。
ただし、これらの法律は、例えば、コンピュータ・ウイルス等を使用することによって、サーバーに不正な指令を与え、データベース上のデータを削除してしまったような事案を想定しており、未遂罪や予備罪についての規定はなく、また、コンピュータ・ウイルスを作成したり、それを他人に提供する行為については処罰することができませんでした。
(1) 原田ウイルス事件
「原田ウイルス」と呼ばれるコンピュータ・ウイルスを作成してアニメ画像などに添付し、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を通じて、インターネット上に流出させた事件が起きたとき、京都府警が平成20年(2008年)1月、被疑者を逮捕したときの罪名は、著作権法違反でした。
コンピュータ・ウイルス作成罪の規定があれば、当然、それに基づく逮捕をしていたと考えられるところですが、従来はその規定がなかったため、コンピュータ・ウイルスを作成した点ではなく、テレビアニメの静止画像を著作者に無断で添付していたことを逮捕理由にしていたということでした。
なお、上記事件は、平成20年(2008年)5月16日、懲役2年、執行猶予3年(求刑・懲役2年)の有罪判決が言い渡されているようです。
(2) イカタコウイルス事件
「イカタコウイルス」と呼ばれるコンピュータ・ウイルスを作成して、音楽ファイル等に仮装した上で、ファイル共有ソフトのネットワークに公開し、それを音楽ファイル等と誤信した被害者に、そのコンピュータ・ウイルスのファイルを受信、実行させて、ハードディスク使用不能にしたという事件が起こりました。
このときも、行為時において、コンピュータ・ウイルス作成罪の規定がなかったため、インターネット上にコンピュータ・ウイルスを流して、感染者のパソコンを壊したことを理由に、器物損壊罪で逮捕勾留され、起訴されたようです。
その後、東京地裁において、平成23年7月20日、懲役2年6月(求刑懲役3年)の実刑判決が言い渡されたようです。
ただ、この「イカタコウイルス」を作成して流出させたのは、上記「原田ウイルス」の作成者と同一人物で、かつ執行猶予中の犯行であったことから、実刑判決になったものと思われます。
4 新たな法律
以上で述べたとおり、従来は、コンピュータ・ウイルスに関する罪が規定されていなかったため、現実に発生した結果をもとにして、著作権法違反で対応したり、器物損壊罪で対応したり等をせざるを得ませんでした。
そこで、平成23年6月24日、「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」※1(平成23年法律第74号)が公布され、罰則部分の一部を除いて、同年7月14日から施行されることになりました。
この改正法によって、
①不正指令電磁的記録(いわゆるコンピュータ・ウイルス)に関する罪(刑法168条の2、168条の3)
②電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂犯処罰規定(刑法234条の2第2項)
が新設されることになりました。
その他にも、この改正法では、差押令状の執行に際して、コンピュータ等の差押えの対象となる記録媒体自体の差押えに代えて、コンピュータ・データ等の電磁的記録をDVD-R等の他の記録媒体に複写等をし、それを差し押さえること等を可能とするサイバー関係の手続法の整備も新設されております(http://www.moj.go.jp/content/000072565.htm)。
5 まとめ
平成23年警察白書にも記載されているとおり、サイバー犯罪は年々増加をしているところですので、実際にコンピュータ・ウイルス作成罪の規定が適用される事件も、近々発生するのではないでしょうか。この改正法についての実際上の問題点については、今後、実際の事件が発生することによって(できれば発生しないことを望みますが)、深められていくことになると考えられます。
















