激変する福岡都心の商業と競争の切り口

激変する福岡都心の商業と競争の切り口

昨年から急激に冷え込んだ商業都市福岡の一般消費。今後、2010年春には天神パルコが開業オープン予定。さらに2011年、新博多駅ビルには阪急百貨店、東急ハンズがオープン予定で、福岡都心の売り場面積は大幅拡大となる。劇的に変化する福岡商業の熾烈な競争の状況と、打ち勝つための戦略を探る。

現在の商業環境

昨年9月のリーマンショックから以降、福岡の商業をとりまく経済環境は激変した。ほんの2~3年前はミニバブルと言われており、福岡市内中心部でも外資系ファンドなどが活発に開発投資を進めていたところが一気に引いて冷え込み、中央企業の福岡支店・営業所などの縮小や撤退などが顕著に現れている。政治の不安定な動きやマスコミによる過剰なネガティブ報道などの影響もあってか、一般消費生活者においてもその意識と行動が大きくぶれて一般消費が落ち込み、商業都市福岡としてはマイナス要因が目立つ。未だ景気回復の見込みも材料が見当たらず、二番底もありそうだといった世界経済と国内地方経済とが直結しているということが、まさにグローバル化そのものだという様相を呈している。

福岡都心に大型店が開業へ

そのような厳しい商業環境の中にあって、来春開業予定(2010年3月予定)の天神パルコの出店や、再来年(2011年春)の九州新幹線全線開通と同時開業予定の新博多駅ビル内に九州初上陸オープンする阪急デパート、同居する東急ハンズの出店が明るい話題として届いている。それぞれの出店の意思決定はリーマンショック以前に行われただろうが、その後の激変した商業環境の中にあってこの福岡でのマーケティングには相当なパワーをかけて展開するものと見込まれる。魅力ある大型商業施設が増えることは福岡地域商業のポテンシャルが高まることで、広域圏から吸引する集客パワーが強まり、既存店ともに相乗効果を増すという見方もある一方で、迎え撃つ既存店にとってはマーケットのパイ争奪戦が熾烈になることも確実となる。

新博多駅ビルは開業後、商業面での売上獲得能力が約1300億円に上り、その影響で天神地区の売上高301億円減少(マイナス8.6%)が見込まれるとの試算もある。(日本政策投資銀行九州支店発表、H21年11月18日)既存店は、まさに戦々恐々であろう。

開発中の博多駅

改築工事が進む新博多駅ビル(H21年12月4日撮影)


既存店と新規店舗、郊外店舗の三つ巴戦

パイ争奪戦は、天神対博多駅、既存店対新店というばかりではなく、都心対郊外という競争の構図も大きく影響する。都心百貨店離れと郊外SCの増加傾向や、業態ではスーパー、ドラッグストア、コンビニの利用増といった変化も現れており、激しい競争の構図となっている。  

村上社長12月スライド1

村上社長12月スライド2

新たな競争の構図に打ち勝つには

一般サラリーマン家庭でも所得が減少し、先行き不安感が高まる中で、生活防衛型消費ばかりが目立っている。ユニクロ、しまむら、イオンなどが仕掛けるジーンズ、PB(プライベートブランド)などが巷の話題をさらい、ますますデフレに拍車をかけるデフレスパイラルが懸念されるが、ここにきて価格競争を最重視する消耗戦では誰も幸せにならないという議論もじわり強まってきている。価格も重要な要素だが、それ以外の生活者が望むモノやコトの要素をじっくり研究した上で、独自の戦略を打ち立てていかねば、この過当競争の中で生き残ることは難しい。

安心・安全、クォリティが高く長く使える、環境保護への貢献、人とのつながり(コミュニティ)重視など、価格ばかりではない価値観を満たすものなどは十分検討の余地がある。商業施設においては提案力やMD(マーチャンダイジング)はもちろんのこと、高齢者に優しい配慮や、子連れでの行きやすさ、時間消費の楽しみや面白さ、新しい発見や感動があるなど、大きなコストをかけずとも改良改善できることもたくさんありそうだ。


村上社長12月スライド3

村上社長12月スライド4

「価値創発」には生活者との「共創」が鍵

販売力の強化にあたっては、接客、対応力など接客現場スタッフの商品知識、接客技術や、その現場管理者の管理・指導能力によって引き出される商品以外のサービスマネージメントは特に重視すべきポイントだ。再来店の促進策には優れた企画内容が必要であることはもちろんだが、接客担当者と顧客との親密な関係性構築も重視すべきポイントとなってくる。接客担当者の人間力が大きな鍵となり、企業はなお一層の接客従業員の育成を進めねばならない。

これからの企業は独自に価値創発を行わねばならず、そのためには生活者と企業が親密な関係性を構築して生活者の真の声を反映できるようなコミュニケーションを図ることが必要であろう。これによって「価値共創」を具体的なマーケティング戦略の軸に組み入れ、地域、生活者との連携、コミュニティ機会の創造などの実践によっては、価格競争以外の戦場(土俵というべきか)を創造できるのではないだろうか。

ともかく、この先行き不安感が蔓延する中で減退した生活者の消費マインドをいかに刺激していくのか、真剣勝負で臨まねばならない。すでに決戦の火ぶたは切られている。

2009年12月3日著

(注)掲載のグラフ資料に関する調査レポートは、(株)ジーコムのWEBサイトに掲載しています。 

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村上 隆英(むらかみ たかひで)

株式会社ジーコム 代表取締役

1955年大野城市生れ。福岡県立筑紫丘高校卒業、明治学院大学経済学部商学科卒業。 福岡市内ショッピングセンター事務局でSC運営に従事。その後、人材情報会社に転職。新規事業部門(テレマーケティング事業、セールスプロモーション・スタッフ派遣事業)開発を担当。のち、求人情報誌編集長を歴任。1986年 マーケティング・コンサルタント会社ジーコム設立。福岡を本拠地として九州の民間企業・地域が抱えるマーケティング課題への取り組みや、アジアと結ぶビジネス交流サポート、コンサルティングを手掛けている。

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