「辛子明太子業界」にみる「在庫」の分析

「辛子明太子業界」にみる「在庫」の分析

福岡の名産品と言えば「博多辛子明太子」。空港、ターミナル駅のお土産や、スーパーの食品売場で並ぶ、博多っ子ならずとも全国的に人気の高い水産加工品のひとつです。TDB業界研究の第1回目はこの「辛子明太子」業界を「数字」から分析します。

「辛子明太子」は新幹線に乗って広まった?

辛子明太子業界は、発祥の地とされる福岡県を中心に発展し、1975年の山陽新幹線開通を期に、出張族、観光客のお土産として全国に浸透したと言われています。最近では生産も山口県、佐賀県、宮城県など各地に広がりをみせ、福岡県のシェアは下がる傾向も見られています。製法が比較的簡単で、参入障壁が低かったこともあって、現在までで約1200億円のマーケットが形成されました。

さて原料のスケコはスケトウダラの卵巣です。アメリカ、ロシア、北海道が主な漁場となっていて、各々シアトル、釜山のマーケットで取引されています。1月から4月にかけて、漁が行われ、サイズや状態によっていくつかのグレードに選別され、入札を経て中国や、国内工場で生産されます。売上ランキングはやはり博多ブランドが上位を占めています。

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上位5社中4社が福岡県の企業で占められています。5社の売上高合計は約597億円となり、前年と比較すると約5%の減少となっています。これは、消費者の嗜好が多様化したことと、インターネット通販などが普及したことで、新規参入業者が台頭したことも影響しています。このため、各社は通販事業を充実したり、従来とは異なった製法、味付けの新商品を開発したりと、巻き返しに余念がありません。

業界が抱える「在庫」とは?

前述の様に、原料となる「スケコ」は1年を通じて限られた時期にのみ漁獲されるので、常にストックしておく必要があります。またスケトウダラの漁獲量には変動するリスクがあり、過去においても騰落が経営に大きな影響を及ぼす事もありました。そのため安定した生産と、コストを維持するために、業界では数ヶ月分の原料を持つケースが多いのも特徴です。

さてここで言う「在庫」ですがバランスシート上では「棚卸資産」で計上されます。製造工程別に「完成品」「半製品」「仕掛かり品」「原材料」などと表記されますが、合計値として「棚卸資産が何ヶ月分」などとして分析します。

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(*計算式1)棚卸資産期間回転期間=棚卸資産/年売上高×12
              6.1カ月=813,406千円/1,600,000千円×12

A社の場合年間売上高が16億円とすると、(計算式*1)の通り、約6.1カ月となります。棚卸資産が増加するとキャッシュフローはマイナスに働き、また運転資金の増加を招くなど、財務分析では重要なポイントとなっています。特に「旬」がある商品の場合、不良在庫となっていないかを見極めるのも大切です。ただし、極端に少ないと、販売の機会損失を招くほか、スケコのように収穫漁が大きく変動し、相場が変動する場合は在庫による相場リスクヘッジとして、ある程度の確保は必要だと言えます。

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藤森 徹(ふじもり とおる)

帝国データバンク福岡支店情報部 部長

1986年関西大学卒業後、アパレルメーカー勤務を経て1992年帝国データバンク入社、大阪支社調査部に配属 企業信用調査に従事。その後情報部に配属となり「帝国ニュース」記者として企業動向の取材を担当。中小企業の経営破綻を数多く取材し、客観的な企業の分析のほか、企業内の与信管理セミナーなども行っている。

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