中小企業でもできるBCP構築!~期限を決めて、できるところから始めてみました~ (株)アサヒ 長濱弘晃さん

中小企業でもできるBCP構築!~期限を決めて、できるところから始めてみました~ (株)アサヒ 長濱弘晃さん

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BCP 地域力連携拠点事業

新型インフルエンザが流行期に入り、企業の対策が必要な段階です。大分市で自動車部品・用品の卸売業を営んでいる株式会社アサヒ社長の長濱弘晃さんは、いち早くこの取り組みを進め、集団感染を防ぐことをはじめとするBCP(事業継続計画)を作られて、実際に運用されています。今回は中小企業におけるBCP策定のノウハウを教えていただきます。

――この度は、NHKの番組に御社が紹介されたそうですが、何という番組ですか?

はい、NHK福岡放送局が制作している「九州沖縄インサイド」という番組です。10月16日(金)に九州・沖縄地区で一斉に放映されました。タイトルは、「新型インフルエンザ 感染拡大を防げるか」というもので、当社は企業での取り組みという立場で放映されました。

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――取材を受けられた印象は?

NHKさんの取材の熱心さに感心しました。実は当社で新型インフルエンザ対策というものを検討している時期は夏でしたから、まだ蔓延している状況ではありませんでした。今回の取材では、新型インフルエンザの蔓延に対する危機感を、逆にNHKさんの取材を通して感じることができ、今まさに蔓延期にさしかかっているという事の重大さを実感したような気がします。

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――放映された反応はいかがでしたか?

九州中の知り合いの方から“見たよ”と連絡がありました。たとえば、以前から私はリスクマネジメントやBCP(事業継続計画)の考え方については、当社が一社だけの取り組みでは成り立たないと思っており、知り合いの経営者の方々とも取り組みへの必要性をお話しておりましたから、実際に今回の当社の取り組みをご覧になられ、考えが少し近づいたとのご意見もありました。

また、同業の自動車ディーラー関連の方からもお手紙を頂戴し、“すごく参考になりました”とのお言葉をいただきました。これは大変嬉しく思いました。

一方で、NHKさんにも“どのような企業か”との問い合わせがあったようです。残念ながら、当社はBCPに取り組んではいるものの内容について他の企業様にご説明することをなりわいにしておらず、また業務に支障をきたす可能性があることから失礼ながらお断りをさせていただいた次第です。

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――さて、御社の事業内容はどのようなものですか?

業種は自動車部品・用品の卸売業です。販売エリアは大分県内です。
現在、九つの拠点(グループ会社含む)で約60人の社員がいます。このほかにコンピュータ関連会社(約10人)も運営しています。

県内一円の自動車整備工場や部品販売店等に、自動車用の部品や用品を卸す業務です。受注センターによる受注業務がその中心になり、リアルタイムな納品業務が最も要求されます。

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――このBCP構築への取り組みのきっかけは何ですか?

取り組みのきっかけは、ずばりインフルエンザです。5年ほど前に季節性インフルエンザが社内で発生し、受注スタッフのチームのほぼ全員が感染し、7人中5人が休む状況となり、結果業務が回らない事態になりました。

その時の印象的な出来事ですが、“アサヒの社員がインフルエンザを運んでくる”という風評まで出てしまい、非常にショックを受けました。併せてこのような事態が起きれば売上に大きく影響が出ることも考えるようになりました。

その後、2年ほど前、テレビで鳥インフルエンザの特集があり、致死率の高いインフルエンザが蔓延すると大変なことになるな!と思い、それから対策への取り組みを意識するようになり、早速そのテレビを見た翌日には簡単な対策のマニュアルを作りました。

そして今年の初めぐらいでしたか、BCPという言葉をよく耳にするようになりました。取引先の金融機関でも実践されているとの説明を聞きました。ただ、内容が複雑でとても大変だ!という話があり、中小企業でも取り組めるものはないかと探しておりました。

丁度、中小企業大学校直方校で、「企業リスクマネジメント講座~事業継続計画(BCP)の作り方~」の研修があるのを知り、担当者と二人で参加したのがきっかけでした。

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――BCP構築を行う際にどんな準備をされましたか?

中小企業大学校の講義で聞いた内容に沿って進めました。中でも、講師から“社内全体で周知徹底すること、作成も社員全員で進めることが重要”というところに感銘を受け、その通りに進めることにしました。しかし、拠点も多いことから先ずは管理職に集まってもらい、BCPの必要性、そして何をしなければいけないかということについて段階を経て説明しました。

――BCP作りはどのようにされましたか?

重要業務の特定のための“仕事の棚卸し”という作業を社員全員で行いました。これが結果としてとても良い結果を生むことになりました。つまり、このBCP構築をする上で部門の必要な業務が浮き彫りになりました。たとえば総務の機能が実はすごく重要なことが認識できたりしました。

次に、想定したリスクが発生したときにどのような事態が発生するか、そしてその対策を練っていきました。それも新型インフルエンザの場合、国が示しているガイドラインの第1~4段階ごとも対応策を検討しました。そして、各自が考えたマニュアルを持ち寄り、内容をすり合わせて最終的には会社のマニュアルを作っていきました。

具体的には、中小企業大学校の講義で講師が言った、“新型インフルエンザの第二派が10月を目途に蔓延しそう”の言葉を目安にスケジュールを立てました。
それは、対象リスクは新型インフルエンザ、そして、期間は8月までに作り、9月までに運用の周知徹底を図るというものです。

講義が6月に行われましたから、8月までの2ヶ月間でできるものを作り上げることを優先しました。つまり細かい部分まで考えていたらどうしても第二波到来に間に合わないので期間を優先したわけです。

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――BCPによる対策の内容を少しご説明いただけますか。

新型インフルエンザに集団感染しないための対策を少し紹介します。独自のマニュアルによる徹底したインフルエンザ対策を行っています。

まず始めたのは、社員に毎朝体温を測らせ、熱が37.5度以上ある場合は、出勤を止めさせます。それは、感染者をなるべく早く発見し、ウイルスを会社に持ち込ませないための対策です。
伝票などの受け渡しにも工夫しました。外回りの外勤社員と、内勤の社員はできるだけ接触しないよう伝票受け渡し用のボックスを配置し、同様に外部からの感染防止対策を行っています。

最も重点をおいたのは、受注センター(お客様からの注文を受ける部署)を2班に分ける体制への変更を行ったことです。従来は一つの部屋に集中して行っておりましたが、9月からは班分けして従来の部屋とは別に役員室にも担当者を配置しました。仮に感染者が出ても全体には広がらないようにしました。

さらに、飛沫感染を防ぐため、昼食の取り方も変えました。これまでは皆で向かい合って食べていましたが、今はそれぞれの席で食べています。
このような活動を進めていく上で、社員の意識も大きく変わってきました。

――それで、実際に社内で感染者が発生したようですね?

はい、あれは、9月のシルバーウィーク明けの24日の朝に、社員から37度7~8分くらいの発熱があるとの連絡を受け、出勤させず病院での診察を受けるよう指示したのです。その後、熱がさらにあがり、結局新型インフルエンザに感染していたということが分りました。

また、別の社員の子供がこのシルバーウィーク中に新型インフルエンザに感染したという連絡を受けまして、本人がキャリアだったら困るので、この社員を24日~26日の間欠勤をさせる対策をとりました。

結果としてこのような対策で集団感染を免れたのではないかと思っています。

――活用された施策や支援機関はどのようなものですか?

以前に県が主催するセミナーに参加したり、金融機関の方に聞いたりしたのですが、やはり中小企業大学校の2日間コースを受講したのが有効でした。というのも、具体的なBCP構築の進め方のノウハウがこの講義で初めて分ったからです。

また、構築に際して福岡商工会議所の専門家による資料の確認や相談対応も効果的なものでした。

――苦労されたのはどのような点ですか?

一番苦労したことは、BCPを浸透させることでした。

それについては、社内全員に考えさせるということを進めました。BCP構築の進め方の基本に則って、段階的に考えてそれを用紙に書いてもらい、さらに次のステップに進むという作業を行いました。

ただ、このような取り組みをふまえたことが、結果として社員の日常業務の意識につながっていっているものと思います。

――成功された(うまくいった)理由はなんだと思いますか?

先ほども申し上げましたが、2ヶ月間で作り上げることを最優先しました。しかし、必要な項目は欠かさず行うことにしたのです。ポイントは、できる範囲で行ったことが挙げられると思います。
日頃から全ての仕事には期限を作ることにしていますが、今回も同様に期間を決めました。しかも、あまり長くなると意識が薄れてしまいますので、2ヶ月という割と短い期間に、“仕事7割、BCP3割で頭を使って欲しい!”と要求しました。

結果として、目標どおり2ヶ月で形ができたことで、社員の意識付けもできたと考えます。

――逆に失敗したことはありましたか?

失敗は・・・、失敗はないですね。というか、失敗と思っていることがないですね。社員の皆が良く取り組んでくれていると思います。

実際に、まだ社内での感染者が出ておりませんので、それが失敗でない証だと思っています。

――専門家のアドバイスで良かったのはどのようことですか?

前述と重複しますが、専門家の話を聞いてハウツウがよくわかりました。そして、“こうやって行けば上手くできんるんだ!”という確信ができたということです。

もう一つ大事なことで、会社の全員を巻き込んで(参加させて)行うということを教わりました。BCPが上手く策定できて、運用できるということは、なかなか数値化した判断が難しいところです。結局は、個々の意識や躾の部分が大事だということです。社員全員で取り組むことで、それが醸成できたと思いますし、そのことが非常に有効に機能したと感じております。

――今言われた、会社の全員を巻き込んで(参加させて)行うということについてですが、他の企業でも同様の取り組みをされていますが、なかなか満足する結果が得られていないようです。御社では具体的にどのような取り組みをされたのでしょうか?

まず行ったことは体制作りでした。これは、当社の組織図に基づいて、“BCP構築のための組織図”を作りました。これは、社長である私がトップダウンで決めました。続いて、前の説明と少し重複しますが、“仕事の棚卸し”、“重要業務の選定”、“対策案の検討”という順に社員全員に意見を出してもらいながら進めたのです。結果としてそのプロセスが、実行段階である社員への“行動と意識の浸透”に繋がったのだと思います。

――現在のBCP構築・運営の課題はどのようなことですか?

BCPだけを重視して進めるということではなく、気持ち的には商売への傾注が100%で、BCPは生活習慣みたいな位置づけで進めたいと思っています。あくまで、お客様あっての商売なので、商売優先を基本におきながら、一方でリスクマネジメントもしっかり進めておくというバランスを保ちながら進めていくということが理想の姿だと思います。

今後の運用面の進め方ですが、“見直し”を重要視しています。時が経つと、とかく意識が薄れたり、忘れがちになるので、年に一回だけ「BCPの見直し強化月間」というものを作って、年間行事としています。これは新入社員向けにも有効になりますので、“見直し”と“復習”を欠かさず進めていきたいと思います。

――地震への対策は進めてはいないのですか?

はい、地震についても具体的な対応策を検討しています。ただ、新型インフルエンザ対策ではあまりお金がかからないのですね。たとえば、うがいや手洗いの励行だとか、集団感染しないための体制作りなどが主な対策となりますから、比較的お金は掛かりません。中小・零細でも取り組みやすいと感じます。

一方、地震についても実際取り組んでいます。たとえば、リスクファイナンスという面から保険の見直しというものを行いました。そこで、地震や火災に関する損害保険関連のコストは相当高いものであることが分りました。特に拠点の多い当社では大きな費用負担となります。なので、お金をかけられるところと、かけられないところをもう少し調べる必要があります。

また、耐震対策の面については、たとえば商品が置いてある棚の転倒防止の工夫などを検討しています。

地震向けのBCPについては、今のところ一気に行うのではなく、お金のかかる面も多いので、お金の掛からないところから、時間を掛けて少しずつ進めていこうと考えています。

――他の中小企業がスムーズにBCP構築を進めるためのポイントをアドバイスください。

はい、1つ目はBCPの必要性を知ることだと思います。
2つ目はBCPの策定の方法を具体的に知るということです。
そして、3つ目は社内を巻き込む(全員参加させる)ということです。意識面において躾という意味で、全社員の生活習慣を変えることです。それは会社でもプライベートでも必要なことです。
最後は、見直して忘れない仕組みを作ることだと思います。

――これからの事業の目標や夢は?

格好をつけるわけではないのですが、私は社長になったときに、“良い会社作り”ということを社員の皆に約束しました。長く会社を続けられるように私の思いを伝えました。

その内容につきましては、社外に公表はできませんが、強いて言えば、若い時分から本田宗一郎さんや松下幸之助さんの考え方に共感し、その理念を徹底して研究し、その上で自分なりの考え方を纏めたものです。文書で社員に渡してあり、社内会議等でくどいくらいに伝えています。これに記載されている考え方を貫くことを目標としています。

レポーターのコメント

中小企業でBCPに取り組んできるところはまだまだ少ないと思われます。そのような中でいち早く取り組んでいるアサヒの長濱社長にお会いし、取り組みの内容について取材を進めていくと、BCP構築に取り組むまでの背景にそのポイントがあると感じました。
それは、長濱社長の経営姿勢が明確で、実行力がすばらしいということです。

今回のBCP構築は、2ヶ月で取りまとめ、1ヶ月で社内に浸透させる、つまり3ヶ月という非常に短い期間でBCP運用の仕組みを作り上げています。長濱社長は日頃から、仕事には必ず期間(期限)を決めて行うということを基本とされており、また集中力維持のためにも短い時間で行うことを決められたようです。

それと、日頃から問題意識を持って経営を推進され、リスクマネジメントをしっかり進められているけど、なるべく予算の掛からない方法を選択されるなど、経営上の攻めと守りのバランスが上手くかみ合っていると感じます。
このスピードとバランス感覚との融合ということを、今回のBCP構築の成功要因に挙げたいと思います。新型インフルエンザ対策に引続き、地震対策も進められているとのことですが、地元中小企業での先行事例となるよう、BCPの取り組みをさらに進化させていただきたいと思います。

添付資料(印刷用にご利用ください)

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レポーター:薗田 恭久(そのだ やすひさ)

中小企業診断士

民間企業勤務を経て、情報通信関連会社を同僚と創業。以後代表取締役含む14年間に亘る企業経営実務を経験。その後2005年、有限会社薗田経営リスク研究所を設立、経営コンサルタントに転身する。事業承継支援、事業再生支援、経営革新支援、およびBCP(事業継続計画)・BCM(事業継続管理)の企業経営リスクマネジメント構築支援等を専門分野として、中小・中堅企業の支援を積極的に行っている。

株式会社アサヒ

自動車部品・用品の卸売業

大分市西新地2-6-39

代 表 者:長濱弘晃
設 立:昭和29年2月
従業員数:60名
※本件(BCP)に関する内容につきましては、業務に支障をきたすこともあるため、直接の問い合わせはご遠慮ください。

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