-開業時期と事業概要を教えてください。
平成21年(2009年)9月に、メイクレッスンを行う「美塾」の福岡教室を天神に開設しました。現在、私1人で福岡教室を運営しております。「美塾」はフランチャイズ形式で事業を展開しており、本校は平成17年(2005年)3月に創設され、東京にあります。
-「美塾」とは、どのようなことを行っている塾なのですか?
美塾は「自分自身のメイクのプロになる」ためのメイク塾です。従来型の「欠点」を隠し変えるメイクから、その人の「魅力」を生かし磨くメイクレッスンを行っています。普段ご自分が使っているメイク道具を使って、さらに美しくなるメイクを学んで頂きます。
今ではメイクは、多くの女性がテレビやCM、雑誌などの作りこまれた「美の基準」に合わせようとした結果、難しいメイクプロセスが当たり前になってしまいました。
そのため、メイクは難しいとあきらめている女性がいたり、凝り過ぎたメイクになっていたり、本当の自分を活かしたメイクをしている方は少ないように感じます。それではあなたの個性が生かせずに勿体ない。
この美塾メイクでは、今の自分を否定することなく、人それぞれの持っている魅力を引き出し、磨き続けることができるメイク方法です。

-そうですね。普段私たちが行っているメイクは、欠点隠しという考え方からスタートしているかもしれません。もう少し、この「魅力生かしのメイク」という考え方を教えてください。
今の女性の多くは、単に顔に化粧品を塗っている行為で終わっています。
メイクという行為がいかに自分の顔を変化させているか知らずに通り一遍のプロセスを終えただけのメイクをしている方がほとんどです。その行為によってどれだけ変化したか、言い換えると結果キレイになったかを意識することで初めて成長があります。
メイクを考えてするというのは脳を使うことですし、メイクが確実に脳へ働きかけていることも明らかになっています。
女性の毎朝の習慣として行っているメイクは、ライフスタイルの一つとなっています。この毎朝行っているメイクの考え方が変われば人生が変わる、と思っています。
毎朝鏡を見るたびに、溜息をついて自己否定からはじまり、それを隠すもしくは欠点を修正するのがメイクだ、と多くの女性が考えています。欠点をカバーすることからスタートすれば、マイナスからスタートするので、お化粧が完成してもキレイにはなっていない。
所詮、プラスマイナスゼロのメイクなので、マイナス部分がゼロになっただけです。
低い鼻を高く見せたい、小さな目を大きなバッチリ目に見せたい、顔の大きさを隠して小顔に見せたい、といった欠点カバーのメイクテクニックばかりを気にして、結構高いお金を化粧品にかけている方が多いのではないのでしょうか。
自分が欠点だと思っていることは、周りの人たちはそれほど気にはなっていないことが多いのです。単に、自分にないものを求めているだけにすぎません。
美塾のメイクの考え方は、魅力へのフォーカスです。自分の持っているものを変えない。隠さない。そして、左右対称にしない。という考え方をしています。
人間は生ものですから、人と違って当たり前ですし、左右対称ではないことは当然です。自分の顔の特徴を変えないから、メイクは難しくないのです。自分が今まで欠点と思い込んでいたことを、自分がもつ強みとして捉え、鏡の見方を変える。美塾はそこからスタートするのです。
実は、この美塾では化粧品は一切販売しておりません。“自分自身のメイクのプロになる”がコンセプトのため、メイクの仕方をお教えすることが私たちの使命です。
世の中には、一回5万円といったメイクレッスンもある中で、美塾は二ヶ月かけてレッスンを行っています。
メイクはスポーツと同じで「わかったこと」と「できること」は違うという考え方です。
自分でメイクができるまでの基本を身につけるためには、本人がしっかりと美塾の思想と技法を習得するまでお教えすることが必要になってきます。そのために、二ヶ月間というレッスン時間を設けております。
-「美塾」メイクレッスンのコース内容について教えてください。 また、他のメイク塾とは異なる特徴を教えてください。
「美塾」福岡教室では、まず入門編のレッスンとして『美塾のキホン』という講座があります。
これは1回のみの参加で2時間3,000円の料金設定となっております。この入門編は、美塾の基本的な考え方やプチレッスン形式で実際に数名をメイクさせて頂きます。
参加された方がキレイになっていく過程をご覧頂けます。このほかに初級コースとして『劇的4回コース』というのがあります。これは2週間に一度のペースで全4回(1回あたり2時間で2ヵ月間)のコースです。料金は税込み33,600円となっています。
初級を修了された方は「中級(飛躍)」、「上級(アドバンス)」に進級できます。その他、個人レッスンやグループレッスン・セミナーなどご希望に沿った形式でのレッスンを行っております。

他のメイク塾とは違う美塾の特徴として、次の5つを挙げることができます。
- 自分のメイク道具を使うため購入の必要がないこと。
- 化粧品の量を最小限に留め最大限のキレイを引き出すため、化粧品の減りが少なく経済的に有り難いこと。
- メイク時間が短縮され、その時間を他の事に有効に使えること。
- 化粧品や道具などの“もの”に頼らず、自分の腕があがること。
- 外見も内面も磨かれるメイク塾。

-起業されたきっかけを教えてください。
実は私、美容には全く興味がなかったので(笑)、これまで美容業界とは縁のない業界で働いていました。
大学卒業後は旅行代理店に勤務し24歳で結婚、25歳で出産を経験しました。1年間は専業主婦をしていたのですが、どうしても仕事をしたいとの思いから、子育て雑誌を編集する会社に勤務し、雑誌の編集・広報を行っていました。
その後、インターネットの業界に転職しました。この時、私生活では離婚をし、一人息子と二人の生活になりました。この頃、仕事と子育て、家事の両立に苦労し正直ヘトヘトになっていたので、自分のために女性問題、女性の自立について必死に情報を集めたり、相談に行ったり、女性の生き方を深く考える時期となりました。
そして、30歳で大手のマーケティング会社に勤務し、CRM(Customer Relationship Management:カスタマー リレーションシップ マネジメント)という顧客関係性を重視したインタ-ネットマーケティング手法を企業向けに提案・分析する会社で働いていました。その時、数人の部下をもつ中間管理職に就いていたのですが、かなり忙しい日々が続いたことで組織内のコミュニケーションが殺伐となりました。
中間管理職という立場だったので、部下や上司、同僚とのコミュニケーションをとってグループ内の風通しを良くしないといけない、と考えるようになりました。その時、自分に足りない知識やスキルを補おうと考えて、カウンセリングの勉強をはじめました。
カウンセリングの勉強を通して、自己否定ではなく自己尊重のトレーニング方法などを学びました。これは、今の「美塾」の基本的な考え方と相通じる概念だと思います。
つまり、自分の欠点探しではなく、ありのままの自分を受け入れるという考え方です。ほかにも、カウンセリングの勉強を通じて、コミュニケーションのあり方や会話の方法、傾聴の重要性などを勉強しました。この勉強の成果として、産業カウンセラーの資格を取ったのですが、これを機に勤めていたマーケティング会社は退職しました。
その後、このカウンセリングの資格を活かして、女性の自立支援サポートを目的に「女性のためのキャリアカウンセリング “your Support”」というテーマで、講演会やセミナー、ワークショップ、相談などを行っていました。
そしてちょうど40歳(2008年)を迎える頃に、たまたま友人に誘われて行ったのが、内田裕士さん(美塾の塾長)のメイクレッスンだったのです。この時は佐賀市で開催されたのですが、会場に100人以上の女性たちが集まり、この女性たちが真剣で楽しそうにセミナーに参加している様子をみて、感動と驚きを覚えました。
その時の様子を少しお話すると、セミナー前半の「美塾のキホン」を伝えるコーナーでは、みんな真剣に聞き入って頷いたりメモを取ったり・・・、後半のメイク模擬レッスンのコーナーでは内田さんの手先やメイクの様子を食い入るように見ながら、自分の鏡を取り出して、同じようにシミュレーションしている女性がいたり・・・。
このように、メイクレッスンを受けている多くの女性たちが、目を輝かせながら楽しく真剣な表情で参加している様子をみて、女性向けセミナーで「メイク」をテーマにすることは大きなインパクトがあることを確信しました。
実際、私自身がこのセミナーに参加して鏡の見方で自分の顔がみるみる変わっていくことを実感したこと、そして、その時に「メイク技法」と「心理学」を併せた美塾のセミナーは、他のメイクにはない魅力と特徴を持っていると感じました。
その後、塾長である内田さんが大阪でメイクセミナーを行うという情報があったので、大阪まで足を運び、その時はじめて彼と話をする機会がありました。
ちょうどこの頃、塾長が全国に美塾プロを養成するために新しく講座を開講することが決まった時でした。私が美塾の理念を共有したいという思いと、プロ育成講座を開設するというタイミングがちょうど一致し、私はすぐに美塾プロ育成講座に参加することを決めました。
そして、6ヵ月間の大阪での研修を修了しライセンスを取得し、2009年9月に福岡初の教室を開講しました。
-独立のための準備はどうなさったのですか?
マーケティングの会社を辞めた時、2003年に開催された「創業塾(福岡県中小企業振興センターで開催)」に参加しました。そこで、経営に関する基礎的な知識を習得しました。
また、メイクの技術的なスキルは、半年間大阪まで隔週の頻度で通い、美塾プロ養成講座で習得しました。
プロ養成講座では、いつもたくさんの宿題が出されましたので、それをこなすのが大変でした。その宿題というのが、モデルさんを使って実際にメイクをするという実践的なものが多かったので、それをこなすために、私の友人やそのまた友人など、多くの女性たちにモデルになってもらい、メイクをさせてもらいました。
女の人って、楽しいことやキレイになれることに対しては、とても貪欲で口コミのスピードも速いのです。
タダでメイクモデルさんになれるということもあり、メイクに興味のある多くの女性たちが次々に名乗りを挙げてくれました。この時に出会った100人ぐらいの女性たちとのネットワークは今もなお、私の貴重な財産になっています。
福岡教室を開講した時、このモデル体験者の皆さんにDMで告知をさせてもらいました。美塾の卒塾生としてまたはその候補生として、今も美塾のファンでいてくださっています。

-主なターゲットはどのような方ですか?
メインのターゲットとしては、メイクに関心がある30代~40代が多いでしょうか。
特に社会で活躍している方々が多いように感じます。OLさん、看護師さん、広告代理店やコールセンターなどに努めている方など、働く女性が多いですね。
また、人前に立ったり、人と接したりするお仕事で学校の先生やお医者さんなども比較的多くお見えになっています。
最近では、フリーターで就職活動中の方々もいらっしゃいますね。これからは、男性もターゲットとして広げていきたいと考えております。営業職についていらっしゃる方や訪問販売などお客様と直接接する機会が多い方や就職活動を行う学生などを対象に新しいコースを開講したいと考えております。
男性も、自分の「魅力」を生かし磨くための表情や髪形、眉毛の整え方などで大きく変わっていきます。人間ほど、表情で会話している動物はいないですからね。
-顧客獲得のためにどのような取り組みをされていますか?
イベントを定期的に実施しています。
イベントを新規のお客様が気軽に参加できる場として捉えております。
大きなイベントを年4回実施しております(3月、5月、7月、9月)。4月からは、子育てママのための「カウンセリング&メイク」を開催します。美塾はこれからも、いろんな業種とのコラボレーションイベントを予定しております。

-美塾レッスンを受けた、お客様の反応はいかがですか?
有り難いことに、反応はとても良いですね。受講された生徒さんたちから口コミで評判が広がっております。
「美塾」は全国8都市で開講されているのですが、福岡の生徒さんが東京の友人に紹介してくださったり、大阪の生徒さんが福岡の友人の方に紹介してくれるなど、全国でネットワークが広がっています。
福岡教室でレッスンを受けている方のエピソードなのですが、レッスンを受けて天神から自宅に帰る途中、男性からナンパされたというお話があります(笑)。その方はもう結婚されているのですが、見知らぬ男性からナンパされるなんて10年ぶりだ、とおっしゃっていました。きっとレッスンを通して、内面の変化が表情や所作ふるまいとして外面に現れたのではないでしょうか。
美塾のレッスンでは、人が人を呼ぶという嬉しい反応の連鎖が広がっています。
-事業を通して手ごたえや実感を得るのはどのようなところですか?
メイクレッスンを受けられている生徒さんが生き生きとした表情に変わっていくプロセスを一緒に体感し、その達成感をともに実感できることですね。やはり、メイクは目に見えて効果がわかりますからね。実は、これはカウンセリングのセミナーを行っていた時には得ることができなかった反応なのです。
それから、レッスンに参加された生徒さん同士が仲良くなれることですね。女性はコミュニケーションスキルが高い方が多いので、女性同士のネットワークがどんどん広がっていくのです。自分磨きやメイクに興味をもった同じ価値観の方々が、この美塾を通じて広がっていくことは大変嬉しいことですね。

-苦労されたのはどのようなところですか?
「美塾」の知名度アップのために、年間を通してさまざまなイベントを実施しているのですが、このイベントを行う場所の確保に苦労しています。天神エリアには貸会議室というのはたくさんありますが、会議室でのメイクイベントは味気ないですよね。
ですから、メイクイベントを行うにちょうど良い雰囲気のフリースペースを探すのが一番大変です。
事業をスタートする時は、事務所兼イベントができる場所を賃貸することを考えておりました。しかし、最初はあまり固定経費をかけないように、リスクを最小限に抑えてスタートしようと考えを改めました。
よく言われることですが、創業は小さく生んで大きく育てるという発想です。
その結果、私は自宅兼オフィスという形で、メイク教室を行っております。しかしイベント開催時は、多くのお客様がお見えになるので自宅は使わず、その都度カフェ兼フリースペースなどを借りて半日から一日を使ってイベントを行っております。
一般的にメイク教室というと、見栄えの良いきれいなサロンというイメージが先行されますが、最初から無駄なお金や見栄を張る必要はないと考えました。素敵なサロンスペースを借りたいのはやまやまですが、最初から設備にお金をかけると収益性や採算性に縛られて、集客すること自体が目的となり“ガチガチ”に目先の利益にとらわれてしまいますからね。
特に女性のお客様は、それを敏感に察知されます。ですので、美塾福岡教室では、お金をかけるところとかけないところのメリハリをつけて事業を運営しています。このような考え方については、中小企業診断士の先生にアドバイスを頂きながら進めてきました。
それから、多くのメイク教室では、事業の安定性を確保するために特定メーカーとタイアップして、化粧品や化粧機器といった“モノ”を販売することで収益を確保しているケースがあります。美塾では、あえてそれはしていません。そこがお客さまとの信頼関係を生んでいるのだと確信しております。
自分ができることを一生懸命やっていると、必ず応援してくださる人たちが増えてきますからね。

-これからの目標や夢をお聞かせください。
現在、九州での美塾プロは、私一人だけなので九州各県に一人以上美塾の先生を輩出したいと思っています。さらに2014年には、アジア進出をしたいとも考えています。
日本がそうだったように韓国、台湾、中国なども今後は、ロハスやナチュラル志向がさらに高まっていくことが予測されます。美塾は化粧品を使う量がすくないために「エコメイク」ともいわれています。この浮いた化粧品代を自分へのスキルアップや投資に充てて頂きたいですね。
本当の美しさとは、顔だけではなく、内面と外面、心と体も健康であるトータルなバランスが必要だと思うからです。
女性が向かうところは、「エビちゃん」や「浜崎あゆみ」ではなく、本来の自分に向ってほしいです。
華道、茶道、武道みたいに「美塾道(究める)」みたいなものがあって、いつも本当の自分に帰れる場所や精神づくりを広めていきたいと考えています。モノから精神へ、長くおつきあい頂ける関係性を大切にしたいです。
現在、アンチエイジングに関する化粧品が増えていますが、メイクは若さにこだわるよりも、今の自分をきれいにできることが大切ですね。そうすると常にキレイでいられます。
その年その年の自分らしさを見せることができるメイクをもっと広めていきたいです。自分を隠すメイクからオンリーワンである自分に自信を持って頂き、世界に向けて日本女性の力を発揮して欲しいです。また美塾が女性をメイクのパラドックスから開放できる新しいお稽古事として日本文化に根付くことを願っています。
これまでの美塾の卒業生は、全国で1000名を超えましたが福岡ではまだ10分の1の規模です。これを3年後には500人ぐらいにしたいですね。福岡の女性は元気があって輝いている女性が多いね、と言われるような街にしていきたいですね。
【レポーターのコメント】
これまでのキャリアとは異なる美容業界に飛び込んで、起業された延さんですが、このようにあまり業界経験がない場合は、フランチャイズシステムに事業参画されるという選択肢があります。
延さんの場合は、創業前にキャリアカウンセラーという勉強を通して「自己概念」や「自己認知」といったメンタルに関する専門的知識を習得されていました。
その後、創業を意識し始めた時は、自分に不足しているメイク技法について、大阪まで通い実務的なスキルを習得されております。このように、「こころ」と「からだ」といった、「内面」と「外面」の相互作用のメカニズムを十分勉強されたことで、美塾のコンセプトを自分ものに昇華させ、自らの信念をもって事業を行っています。
また事業をスタートする上で重要なのは、初期投資を極力おさえてリスクを最小限にすることです。
事業がスタートする時は、運転資金や仕入原料などの多くの資金が必要になってきます。
まずは事業スタート時に十分に事業計画を立案して、無理のない状況からスタートさせることが不可欠です。理想的な開業とは、たとえ規模は小さくても継続できる事業をおこなっていく事だと言えます。

レポーター:齊藤 久美(さいとう くみ)
中小企業診断士 SA-KUコンサルティング代表
大手流通業でのマーケティング業務に携わった後、都市計画事務所で13年間にわたりコンサルティング業務に従事。2009年に経営コンサルティング事務所を設立。- 美塾 福岡教室
福岡市中央区渡辺通5-16-6-311
TEL:080-3375-3226
講師:延佐智子
(初級産業カウンセラー、フェミニストカウンセリング、健康管理士)blog:美塾メイクで人生パワーアップ















