新現役人材を活用して社員の意識改革に取組む (株)千曲屋 竹元宗美さん

新現役人材を活用して社員の意識改革に取組む (株)千曲屋 竹元宗美さん

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新現役人材 中小企業応援センター事業

元々、大阪で「タケショク」という「なにわのたらこ屋」を経営していた竹元社長ですが、辛子明太子は主に中国大連の直営工場で製造していました。2007年に起きた中国での食の安全の事件を契機に中国からの全面撤退を決めました。どうせ日本に戻るならと、辛子明太子の本場福岡市博多区に辛子明太子製造の株式会社「千曲屋」を創業し、1年後に新工場を稼働させました。

売上げが伸び悩む中、クレーム処理の相談に訪れた福岡商工会議所で、中堅企業や大企業を退職した「新現役人材」を活用して、中小企業の様々な課題解決を図るという「新現役マッチング事業」の存在を知り、これを活用して積極的に事業展開されておられます。

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―辛子明太子の本場博多で新工場を操業されて、2年程経ちますが事業の状況はいかがですか?

お陰様で、順調に事業は伸びています。この2年間で売上高は倍々と伸びました。特に直営店舗での販売やTV通販を通じた卸し販売が好調です。

―バスのラッピング広告やビルの屋上の広告塔が目立ちますね。

辛子明太子を作っているお店や会社の数は、全国で300とも400とも云われています。その中で、後発組である千曲屋は「味」や「価格」には万全の自信がありましたので、先ず知名度を上げることに注力しました。そのため、ビルの屋上広告は、中洲那珂川沿いの明治通りと国体道路の2か所に設置しました。

また、西鉄バスのラッピング広告は現在約30台に貼付しています。福岡市近郊で毎日約1200台程の西鉄バスが走っているそうですので、約40台につき1台には千曲屋の広告がされています。従って、バス通勤される方には1日に1回以上はこの広告を観られていることになりますね。

2010070702.jpgまた、RKBラジオに1日20回、月600回、年間7200回の千曲屋CMソングを流して、企業イメージの定着と訴求を図ってきました。そのせいか、最近では「博多めんたい千曲屋の名前は分かったから、どこに行けば千曲屋の明太子が買えるの?」といった問合せが増えてます。(笑い)

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―「新現役人材」を活用されていますが、どのような経緯でこの事業の活用を思いつきましたか?

博多の工場を立ち上げて半年ぐらい経った頃、インターネットの口コミ人気ランキングの「辛子明太子編」の順位で「千曲屋」は10位内に入ってきました。しかしながら、逆にその投稿サイトでクレームも急増しました。明らかに同業他社からと思われる誹謗中傷でしたが、どう対処すれば良いか迷い、相談に行った福岡商工会議所で紹介されたのが「新現役人材マッチング事業」*でした。

*(「新現役人材」とは、中堅企業や大企業を退職された方で、様々な分野での知識、技能、技術、経験、人脈等を持った人材です。現在、福岡県内だけで「新現役人材」に登録された数は約300人になります。)

最初は、クレーム処理についての相談だけのつもりでしたが、経営課題の聞き取りに来てくれたコーディネーターの方から、「千曲屋」が抱える様々な課題の中から優先して解決する必要がある課題としては「販売・マーケティング」「経営企画・戦略立案」「生産管理」の三つであると分析してもらいました。

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そこで最初に紹介されたのが「販売・マーケティング」分野の専門家である「赤松雄二」さんです。千曲屋が販売面で伸び悩んでいるところでしたが、赤松氏は直営店舗での販売強化策や、ネット通販事業の立ち上げ、会社の紹介程度で使っていたHP(ホームページ)のリニューアル強化等マーケティングに関する提案を次々に出されました。

その手際の良さと的確さに圧倒され、「新現役人材」は相当使えると思いました。

引き続き「経営企画・戦略立案」と「生産管理」面についての人材マッチングもお願いし、紹介されたのが、「北岡信二」さんと「別所諄之」さんです。会社の相談では「新現役人材」は先生と呼んでいます。

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私も従業員も先生方の指導に最初は、戸惑い、壁にぶつかり、悩みながらも、色々な取組みを繰り返しました。新現役の先生が支援に入って、ちょうど1年が経とうとしています。時間はかかりましたが、私自身もそして社員のみんなも仕事への意識が大きく変わってきました。それが、事業の成長にも繋がっていると感じています。

―「新現役人材」について紹介していただけますか?

はい、1人目は「販売・マーケティング」分野の指導をお願いした赤松雄二さんです。赤松さんは、子供用品の卸業の会社で通信販売事業を立上げた経験を手始めに、多くの企業に対して通販事業に関する支援を実施してこられました。従って千曲屋でも、直営店舗での販売やTV通販、インターネット通販等の販路開拓等について指導をお願いしています。

2人目は「経営企画・戦略立案」分野の指導をお願いした北岡信二さんです。北岡さんは大手食品会社において企画管理部門の経験が長く、中長期の経営計画の策定に長けた方です。従って千曲屋の現状の実力を把握した上で、今後3カ年の経営計画策定と事業目標設定のお手伝いをお願いしました。

3人目は「生産管理」分野の指導をお願いした別所諄之さんです。別所さんは、重機製造会社においてジャストインタイム(JIT)生産方式を導入して現場の生産性を向上させ、徹底したコスト低減にて企業再生を図った経験から、複数の会社でJIT生産方式導入の指導を行っています。従って、千曲屋でもジャストインタイム生産方式を導入して、製造工程における生産性向上の指導をお願いしました。

―「新現役人材」を活用してその成果はどのようになっていますか?

先程少しお話しましたが、社員の意識が大きく変わり、製造や販売の現場で、自分たちの問題点を自ら発見し、自分たちで改善策を考え、自分たちでそれを実行するということができるようになってきたのが一番大きいと思います。現場を回ると社員がいきいきと仕事をしているのがわかって大変うれしく思いますね。

―その他の具体的な成果については、「新現役人材」から伺います。

「経営企画・戦略立案」分野を担当した北岡信二さんです。

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千曲屋は、3年後に売上高を40億円にするという経営目標を自ら立て、それに向けて事業を展開しています。現在、小売部門は3店(博多区、中央区、早良区)のみの直営店舗を9月までに4店舗(博多区、南区2、東区)増やし、計7店舗にする予定です。

卸部門は九州の量販店への積極的な営業活動を展開し、今後は全国レベルの量販店にも営業活動は行う予定です。

また、本社工場(博多区)の横の敷地を確保して第2本社工場(仮称)の建設を予定しており(H22年9月竣工予定)完成すると、現在の製造能力を約3倍に伸ばせる予定です。ここ数年以内で千曲屋は博多辛子明太子の業界の中で確固たる地位につけるものと確信しています。

「販売・マーケティング」分野を担当した赤松雄二さんです。

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新規販路としては、九州自動車道の広川SA、大分自動車道の山田SAや長崎自動車道の金龍SAでの販売を始めました。また、西鉄沿線では二日市と久留米の駅ビル内での店舗販売の交渉をしています。実績として直営店舗「ちくま家」3店舗の売上は昨年度比で300%アップを達成しています。そこで直営店舗は秋口までに7店舗にまで増やすことは決定していますが、過去の出店条件・周辺環境・販売実績等を分析して今後の直営店舗展開にあたり情報活用していく必要があると思っています。大事なことは、販売状況を視て柔軟に対応していくことだと思います。

また、TV通販への卸し販売の展開や自前のサイトからのインターネット通販の拡大等を積極的に進めており、最適なIT技術としてPPC広告(検索連動型広告)を活用して、新規顧客のさらなる取込みを進めたいと考えています。

また、建設する第2本社工場の中に明太子クッキングスタジアム(仮称)を併設し、様々な明太子を使った惣菜の研究開発や料理学校、近隣や幼稚園等とタイアップした食育学級等が可能な空間を考えています。もうすぐ、お中元や贈答品のシーズンですが、それに合せてこの5月から「ぞっこん」シリーズや有田焼陶器入りの高級辛子明太子等を新発売していますので、こちらもよろしくお願い致します。

「生産管理」分野を担当した別所諄之さんです。

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当初、生産部門にジャストインタイム(JIT)生産方式を導入する際は、勉強会を繰り返し実施して、「生産性を向上させる目的」について、社員に十分に理解してもらうように努めました。と云うのも、いくつかの企業の支援に入った経験から、この「生産性を向上させる目的」について社員の理解がされないまま進めた場合、生産性が向上して余った時間の扱いで良くトラブルになることがあることを知っていたからです。

例えば、朝9時から夕方4時まで製造作業をして1時間清掃して5時に作業を終える製造工程において生産性を向上させた場合、2時頃に製造作業を終えてしまうと余力時間の使い方を次の製造に回すとか決めておかないと、だらだらと清掃作業を3時間も続けてしまいます。

まして、最近の製造作業員はパート社員化が進んでおり、生産性が上がると作業は辛くなる上に作業が早く終わって収入が減るというように望まない方向に進むことになり、その反動は大変激しいものになります。そのため、生産性向上策を検討する際には、自分たちの作業に本当に無駄はないか問題点はないか、自分たちで気づき自分たちで納得して改善策を考え、自分たちでそれを実行してもらうという手順をしっかり踏むことにしました。

その結果、明太子製品を作り込む工程で、生産性が60%向上するという形で現れました。つまり単位時間当たりで100個の製品ができていたのが160個の製品ができるようになったということです。丁度、「切り子の家庭用辛子明太子」がヒットして販売量がどんどん増えていた時期でもあり、思わぬ増産体制を取ることができ、大変助かったということでした。

また、現場での勉強会は続き、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾け)の取組みに始まって生産計画や在庫管理や原価管理まで一通りの生産方式の研修は完了しました。最近は、親会社のタケショクの生産部門への指導も行っていますが、これまでの取組みや経験が活かされて、千曲屋の第2本社工場が順調に立ち上がることを期待しています。

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―将来の夢を竹元社長に伺います。

バスや屋上広告にも載せていますが、「うまいを気軽に、うまいを毎日、うまいをあなたへ」というのが、私のポリシーです。毎日の食卓に美味しい辛子明太子をお届けする。そのためには千曲屋が、どこよりも美味しい明太子をより安価な価格で提供していこうと考えております。可能な限りこの夢を実現したいと思いますので、今後ともご支援をよろしくお願い致します。


レポーターのコメント

博多辛子明太子は一般的に100gあたり約1000円という高価な食品で、お中元やお歳暮等の贈答品として扱われる他、新幹線が博多まで伸びて以来、九州に出張や旅行で来られたお客様がお土産として購入されるという高級品のイメージが強くなっています。

しかしながら、千曲屋さんでは、親会社タケショクとの原材料の共同調達や独自の企業努力を続けており、100gあたりで300円~400円の価格帯で直営店舗から販売しています。

また、最近ではTV通販やネット通販を通じて全国各地に送料を含めても他社の価格の半分以下で販売ができる状況です。他社との価格差から博多駅や福岡空港等の主だったお土産ショップでは千曲屋商品を取り扱ってもらえないことから、直営店舗での販売や通信販売を中心に事業展開してきました。

あまりの安さに、「安かろう不味かろう」とか「頼まれても千曲屋の明太子は食べん」といった同業他社からと思われるネットを通じた誹謗中傷もあり、クレーム処理対策で福岡商工会議所に相談に来られたのが、最初の竹元社長との出会いでした。

経営課題の聞き取りを行ったところ、成長段階にある企業が持つ課題が散見されましたが、「販売・マーケティング」「経営企画・戦略立案」「生産管理」の3部門について優先して課題解決を図ることを推奨し、「新現役人材」をマッチングした中で、3人の新現役との支援契約が成立し、支援が始まってちょうど1年が経過しました。

中小企業オーナーが抱える課題を把握し、その解決に向けた適材である「新現役」を選定してマッチングし、その支援を通じて組織が変革し社員が成長する等で企業の経営課題が解決され、事業が順調に進展していく姿を観るのがなによりの楽しみです。

添付資料(印刷用にご利用ください)

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レポーター:黒川 恒治(くろかわ つねはる)

行政書士

民間企業の情報システム部門にて、原料・製造・営業・物流・社員・会計等の基幹情報システムの企画・開発に従事。退職後、福岡市内にて行政書士事務所を開業し中小企業支援等を開始。平成20年度から、福岡商工会議所にて「新現役人材活用」事業のコーディネーターを担当し、「専門家派遣」と「新現役人材活用」をうまく連携させて、効果的な中小企業の経営課題の解決に取組んでいる。
(株)千曲屋

福岡市博多区東那珂2-7-20
TEL : 092-434-2600

設 立: 平成19年9月
事 業: 魚卵の製造・販売
資本金:100万円
従業員:98名

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