「オーシャンロード(株)は平成8年3月に創業しました。
高速道路から一般道路まで、道路補修工事の中で路面の切削工事を専門に行ってきました。建設工事にケガや事故はつきものですが、大型の建設機器でもし事故が発生した場合には「命」に関わるような重大事故につながります。どんなに注意をしていても事故は完全には無くなりません。
しかし、常に注意を払っていたら「命」にかかわるような重大な事故は防げる。そう信じています。」 大切な社員を危険から守るため、常に安全面に気をつけた経営に心掛ける。そんな強い意志が感じられるオーシャンロード(株)の西口正夫さんです。

―オーシャンロード(株)の事業内容を教えてください。
高速道路や一般道路の路面の補修工事の際に路面の表面を一旦削り取る必要がありますが、当社はその路面の切削工事の専門業者になります。
ここ数年、公共工事は相当減ってきていますが、道路の補修工事自体は交通安全面の問題もありそんなに減ってはいません。むしろ高速道路の新設工事が減った分、高速道・一般道の補修工事は増えている感じです。
営業エリアは、九州一円と南は沖縄、東は山口から岡山くらいまでカバーしています。そのため、熊本と鹿児島に営業所を設けています。また従業員は現在36名ですが、毎年2~3名くらいは新人も採用しています。

―従業員は全員正社員ですか?
建設業はサービス業ですから良質のサービスを提供するためには優秀な社員が必要です。
その意味では、正社員として採用して人材育成するのが大事ではないでしょうか。
うちではロードカッターという大型の特殊自動車の運転操作が必要ですので、教育してスキルをつけると同時に関係する資格も取得させる必要があります。きっちりとした人材育成を図る意味で、正社員として採用するのが当たり前だと思います。
―オーシャンロード(株)の年商はどのくらいですか?
年商は平成22年度で約 7億円といったところです。
世間では「リーマンショックで売上げが半減した」というような話をよく聞きましたが、そこまでひどいことはありませんでした。
現在、当社が保有する路面切削機(ロードカッター)は12台ありますが、1台あたりのオペレーター(運転操作担当)は2名必要です。 また、1台の路面切削機に1台の路面清掃車(スィーパー)がセットで稼働しそのオペレーターは別に1名必要です。
したがって3名1組の班編成をして作業配置するようにしています。
もし、保有するロードカッター12台がフル稼働したら最低36名のオペレーターを出動させる必要がありますが、実際にはそうゆうことはありません。
今は無理に背伸びして自社が持つ能力以上に多くの新しい仕事を受注するのは避けるようにしています。
若い社員も増えています。内向きのマネジメントというか、社員のスキルや意識を向上させ良好なサービス提供が出来る体制を維持したいと考えています。
―「新現役人材」を活用されていますが、どのような経緯でこの事業を知りましたか?
平成21年の夏頃に福岡商工会議所から当社にダイレクトメール(DM)が届きました。
そこでは、「新現役人材マッチング事業(※)」が紹介されていました。大企業や中堅企業のOBやOGが人材登録されており、経営企画や財務管理、営業支援や生産性向上といった企業が抱える様々な経営課題の解決のために最適の人材をマッチングしてくれるとのことでした。
当時当社の一番の経営課題は、安全面での体制作りでした。
早速、人事・労務管理の分野で「安全衛生管理」に関する知識や経験を持つ人材の支援をお願いしたい旨の要請を商工会議所にいれました。
商工会議所のコーディネーターのニーズ確認のあとに、コーディネーターと一緒に当社に見えられた方が、20年来仕事でたいへんお世話になっていた阪本健夫さんでした。
運命的な再会でしたが「阪本さんなら間違いない・・・と」確信しておりましたので、すぐに支援をお願い致しました。
それから現在まで1年半くらいが経過いたしましたが、毎月2~3回程度は当社に入っていただき顧問の形で安全衛生管理の面での支援・指導をお願いしています。
※「新現役人材」とは、中堅企業や大企業を退職された方で、様々な分野での知識、技能、技術、経験、人脈等を持った人材です。現在、福岡県内だけで「新現役人材」に登録された数は約300人になります。「新現役人材」活用の費用は、初回マッチング(紹介)までは無料ですが、実際の支援に入る時は企業と「新現役」間で個別契約等が必要です。
―「新現役人材」について西口社長から紹介していただけますか?
はい、「人事・労務管理」分野のうち安全衛生の関する教育・指導の支援をお願いしている阪本健夫さんです。
阪本さんとは彼が大手の道路資材関係メーカーで安全衛生関係の教育・指導をされておられたころからの知り合いになりますので、もう20年以上のお付き合いをさせていただいております。
阪本さんも現場で育った人間なので現場の苦労や難しさ作業の危険性も良く理解されていて、当社の社員に対して適切に指導して戴いていると思います。

―具体的な支援の成果について、「新現役人材」の阪本健夫さんから直接伺います。
昨年度までは、「新現役人材活用」事業は、適用する分野に登録している人材に対して支援を要請する企業名を伏せて、公募するやり方でした。
オーシャンロード(株)の場合は、「大野城市にある路面補修工事のうち路面切削専門工事業者が安全衛生面の指導教育ができる人材の支援を要請しています・・・」といった内容で公募してきたと思います。
企業名は伏せていましたが事業内容の説明から、私には直ぐにこの企業は「オーシャンロード(株)」だと分りました。「西口社長がこまっているなら支援せんといけんな」と思い、直ぐに手を挙げました。
コーディネーターと同行して訪問した際の初回マッチングで西口社長と再会して色々と話を伺いましたが、これは長期的な支援になるのかなと感じました。
というのも、オーシャンロード(株)は若い新入社員も多く、特殊で専門の車両を使う作業のレベルはスキルや資格も必要でたいへん高度なものが多いということでした。
一度や二度の安全教育を実施しただけでは安全衛生面の意識は定着しません。日常に安全衛生意識の定着を図る活動を繰り返す必要があると思いました。

その後、一通りの安全衛生教育や危険予知関係の講習会をオーシャンロード(株)全社員に対して実施した後、安全パトロール隊を編成して定期的に安全パトロールを実施しています。
毎月、翌月分の作業計画を策定しますが、「誰」が「どこで」「何の作業をするか」が決まる時に合せて、安全パトロールの計画も作成します。
工事の繁忙期や閑散期もありますが、月に2回程度は安全パトロールを実施することにしています。大事なことは、万遍無く安全パトロールを実施することです。ベテランだから実施しなくて良いわけではありません。かえってベテランの方が慣れっこになり安全確認の手順をさぼっているかもしれません。

―阪本さん、安全パトロールの実施要領を教えてください。(後日、安全パトロールに同行してみました。)
現場に安全パトロールで入る時は、作業服、ヘルメット、安全ベスト(夜でも見えやすい黄色や橙等の蛍光色)は欠かせません。交通を遮断しての工事もあり、早朝とか夜中に工事する時にはその時間に合せて安全パトロールを実施します。
安全パトロール点検の見落としや評価の偏りを防ぐため、必ず2人の検査員が入って安全パトロールを実施します。チェック項目は手元の「安全衛生パトロール点検票」を使いながら漏れのないようにチェックしていきます。
安全パトロールの点検結果は直ぐに現場にフィードバックし、問題点はみんなで考え改善し、事故への歯止めを図っています。




この日の安全衛生パトロールでは、点検表の26番と27番の項目で×がついていました。
内容はスイーパーと呼ばれる路面清掃車は、切削機が路面を切削している間に少し離れた場所で待機しますが、その待機中にタイヤの歯止めを忘れていたこと。
また、担当者が単独対応となることから指差し呼称を適切に実施していなかったこと等です。
―その他に安全パトロールの実施で大変なことはありますか?
早朝や夜中の作業は慣れているので仕方ないですが、パトロールの駐車の関係は困りますね。郊外でも市街地でも安全パトロールは通常は自家用車等で出かけます。2時間程で安全パトロールは終了しますが、その間に車を置いておくところがなかなかありません。最近は駐停車するのも非常にうるさくなってきました。
この日も早朝からの北九州方面での安全パトロールでしたが、開店前の時間帯でしたので、近くのホームセンターの駐車場に勝手に停めました。
すると開店と同時に担当者が飛んできて自動車を直ぐに撤去してくれとのことでした。何百台も停められる駐車場に数台停めているだけでしたが、最近は監視カメラも回っているので夜間や早朝の駐車場でのやり取りも監視しているのだと思います。
また、安全パトロールが大変というよりも、路面切削工事で大変なのは雨が降った時です。
普段、路面を切削すると切削ドリルの周りと接触個所および切削廃材(けずりくず)は非常に高温になってます。したがって晴天の日等は少量の水を切削個所に散水しながら切削作業をします。
しかし、大雨が降っても、工事のスケジュールは相当前から決定して取組んでいるので、簡単には変更が出来ません。切削廃材は雨で流されて散り散りになると掃き集めるのが本当に大変です。


―安全衛生へのこだわりについて西口社長にお聞きします。
会社の中で安全衛生管理や危険予知(KY)活動を徹底しても、完全に災害が無くなるとは思っていません。
安全衛生を徹底し過ぎても、作業が委縮して事故に繋がる可能性もあります。
安全衛生への取組みはインフルエンザの予防接種みたいなものと考えています。誤解している人も多いですが、予防接種を受けてもインフルエンザに罹る人は罹ります。全く罹らなくなる訳ではありません。
でも予防接種を受けた人はインフルエンザに罹って重体になるように劇症化することはないそうです。それは、予防接種でインフルエンザという外敵情報を免疫という形で体得することで、早期の対応を取れるためです。
安全衛生面も日頃に危険を感知する意識付けをすれば、もし事故や災害にあっても体の反応から致命的な事故にまでは繋がらないということだと思います。
このことは企業経営者の方にとって大変重要なことだと思います。特に建設業は昔から3K(危険・怖い・汚い)職場と呼ばれますが、安全衛生面での取組みを軽視されている方も多いようですので、注意してほしいと思います。
―西口社長の夢を教えてください。
公共工事の予算削減の動きもあり、工事単価が下がり続けています。単価が下がっている状況で無理して仕事を受注すると企業体力が極端に落ちるものです。
そうすると、安全に注意を払っていても、どうしても大きな事故を起こしてしまうものです。社員の安全を第一に考えていますので、ここ数年は我慢がまんでしょうね。
このような厳しい状況ですが、毎年2~3人は新入社員も採用しています。会社の体力をつけながら、経営を続けています。もし売上高10億円という壁にチャレンジするようなチャンスがあればその時は思い切って挑戦したいと思います。
―オーシャンロードには事業の承継者は、いますか?
創業してがむしゃらに働いてきました。事業承継については、今のところはっきりとした事業の後継者は決まっていません。福岡商工会議所でも事業承継の相談も受けてくださると伺いました。一度、真剣に相談に伺いたいと考えています。その時はよろしくお願いします。

【レポーターのコメント】
最近ですが、安全衛生関係の指導をお願いしたいといった相談が少し増えているような気がします。これは不景気が続く中で、雇用条件や労働条件がより厳しくなり、社員の就労環境が悪化し、相当無理を強いているのかもしれません。
一例では、「普通はやらないような高所作業をやって落下事故を起こした・・・」というようなものでした。
土木・建設業は昔から3K(汚い・怖い・危険)職場などと呼ばれており、事故や業務災害と隣り合わせで社員は働いています。
したがって、これらの企業においては、よく「安全は全てに優先する」とスローガンがかかっており、安全衛生への取り組みが強調されていますが、ほとんどは形式的な取り組みだけで、サービスのスピードや品質やコストが優先されており、実際には安全衛生への取り組みは二番手、三番手に置かれているのが実態だと思います。
その点、オーシャンロード(株)では2年程前から安全衛生管理をする部署をしっかりと設置し、定期的な安全衛生パトロールを企画し確実に実施しています。
これらの安全パトロールは法令で決められた会社の義務を超えたもので、サービスのスピードやコストの面で負担になると思われますが、当社ではまさしく「安全をすべてに優先して」実施されていました。
後日「新現役人材」の阪本さんと一緒に、北九州市近郊の工事現場の安全衛生パトロールに同行させて頂きました。雪がちらつく寒い日でしたが早朝から出かけました。我われが到着すると同時にロードカッターも到着してすぐに作業は始まりました。
路面の切削工事は基本的に2人でロードカッター(路面切削車)の運転・操作をし、後ろから1人でスイーパー(清掃車)が付きます。
車を運転しながら同時に切削機を操作するという二つのことを同時にやるというのは意外に難しく、しかもドリルの高速回転部分もあり、作業には細心の注意が必要です。油断をすると大事故に繋がります。素人目に見ても結構危険な場面が大変多くあるように感じました。
安全衛生への取り組みは、やりすぎても作業が委縮して逆に危険性が増します。適度なレベルで継続してやるのが重要だと西口社長も述べておられ、当分の間「新現役人材」の阪本さんには、オーシャンロードの安全衛生管理の徹底のためにご支援をお願いしたいとのことでした。
西口社長様には、お忙しい中また風邪気味で体調をくずされている中、「新現役人材」事業活用についてのインタビューをお受け戴きまして、大変ありがとうございました。あらためて深く感謝いたします。
追伸ですが、福岡商工会議所では事業承継の相談も受け付けています。最近では身内や社員の中に事業の後継者がいないような相談も増えており、そのような場合には第三者とのマッチングも実施します。
また、B/S、P/L等の財務諸表には表れない「企業の強み」については、「知的資産経営報告書」を策定して、企業価値や企業の魅力を引き出して、効果的な事業承継のお手伝いもしています。
















