事業承継のポイントは?・・・「潔い判断と行動で臨んでいます!」(株式会社ベンソン 野村康也さん)

事業承継のポイントは?・・・「潔い判断と行動で臨んでいます!」(株式会社ベンソン 野村康也さん)

昨年春、第三者承継という比較的難しいといわれる形で社長交代を果たした株式会社ベンソン(福岡市東区原田)。その後、新社長の野村康也さんが如何に事業を引き継いできたか、現在何に注力しているか、併せて今後の事業展開等について、昨年に引き続き追跡取材を行いました。

-(1年半前に社長に就任された時と比べて)今の心境は?
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弊社は1974年(昭和49年)の創業から38年目を迎えておりますが、事業環境的には「最悪期」と言える1年でした。

就任直後の決算(平成22年6月度)は、前年とほぼ横ばいの業績結果でした。ところがその決算期前後から、急激な変化が我々を襲いました。
それは、まずは昨年の記録的な猛暑。連日38℃近い気温を記録し、熱中症への心配からゴルフ場はおろかゴルフ練習場もゴルファーが激減。過ごしよかった短い秋もあっという間に終わりを告げ、今度は冬の寒波です。福岡は数十年ぶりの記録的な低温に加え、九州は例年以上の大雪の影響で、多くのゴルフ場が長い期間営業ができない状態が続きました。
さらに、宮崎・鹿児島など南九州地域では、口蹄疫、鳥インフルエンザ、新燃岳の噴火などが次々と起こり、地元経済の打撃に加え、観光収入も落ち込み、地元ではゴルフコンペが激減しました。

そして、3月の東日本大震災。直接的な震災被害は無かったですが、全国的に自粛ムードが広がり、かつ原発事故による電力不足も加わりゴルフ業界全体に深刻な影響を及ぼしました。

弊社の業績低迷の全てを、気象の大きな変化や自然災害のせいにするつもりはありませんが、過去に経験の無い影響であったのは間違いなく、弊社内でこの1年は「最悪期」と位置づけています。なので、今の心境は最悪ですが(笑)、でも、もう底は打ったかな、と。

-先代社長の仁戸田会長との1年半の両輪運営は如何でしたか

実は、私の社長就任時に株式は100%移転し、同時に代表権も私一人となっていましたので、会社の運営については当初から全面的に私に任せていただきました。
しかし、仁戸田前社長が会長として在籍頂いたことについては、社内の環境づくり、取引先や金融機関との関係維持などの点で大きな存在であり、安心して事業の承継を進めることのできる貴重な期間となりました。
お陰様で、この1年間の大きな環境変化対応においても、最高の相談相手であり、心の支えになりました。

-代表者交代を経験されて、第三者の承継を上手に進めるポイントやコツはあるのでしょうか。

私自身は社長就任時から、“お客様との関係維持と従業員の雇用継続”については大きなテーマとして掲げておりました。
いきなりの大きな変革は避け、先ずはベンソンがこれまで築いた経営の仕組みや事業活動を維持することを前提においた運営を行っています。
よって、営業戦略や営業方針も特別大きくは修正していません。これまでどおり、これまで以上に自由に、のびのびと営業活動に専念していただいてます。

しかし組織人事においては、私のカラーを少しだけ出しました。優秀な中堅社員を部長級に抜擢しました。実力があるのは、みんなが認めておりましたが、いきなりの抜擢人事には、みんな一様に驚いたようです。人事は社長の専権事項であることを強烈に印象付けたようです。

これからは、気象変化や自然災害などではなく、ゴルフ人口が激減するというゴルフ業界が抱える構造的な環境変化が起こります。この環境変化に対し、これまでのゴルフ関連事業にプラスの新たな事業の柱の構築を進めていきたいと考えています。
従業員には、これまでどおりお客様とのよりよい関係づくりをしっかり継続してもらい、新たな商品開発や新たな販路開拓等については、社長の私自ら積極的に先導していきたいと思っています。

中小企業では一般に、親族内の承継が大半だと思いますが、逆に親族ではできにくいことも、第三者承継なら、「情」ではなく「理」で適切な判断ができ、思い切った意思決定ができると思います。これまでのご縁やコネクションを生かしながらも、しがらみや遠慮の無い行動が可能で、第三者だからこそ「負の遺産」を整理し、経営を前向きに維持・発展させることができると考えています。

-現在の事業運営は全体的に如何ですか。

この1年間の大きな環境変化においては、ゴルフ業界の企業も大きな影響を受けています。ただ、このような環境下で、「ベンソンはいいねぇ。 売る物がたくさんあって。それに、小口が多いだろうけど、たくさんの売り先があっていいね!」と言われています。
これは、結果的に、弊社がどこかひとつのメーカーや顧客に依存することなく、これまで長く事業を続けることの出来た秘訣であるリスク分散につながっていることを示している象徴的な言葉です。

たしかに、減収減益にはなっていますが、同業界他社さんの中には、弊社以上に大きく業績が悪化している企業も多くあるようです。その中では、まだ、マシなほうかな(笑)。

ただ、弊社でも、この機会に各事業部門の損益を客観的に判断し、今後の損益予想を勘案しなおした結果、やむなく一部の事業を撤退しました。
こういう厳しい時期に、新たな事業分野への進出は難しいですが、縮小均衡的な考えばかりでは、企業は発展しないと思いますので、こういう環境下だからこそ、新しい事業分野への進出をじっくり勉強してゆきたいと考えています。

-新たな事業への取り組みはありますか。

昨今の急激な円高・株安による国内景気の減退や、韓国をはじめとする海外のゴルフツアー客の低迷により、九州域内のゴルフ場、ゴルフ練習場およびゴルフショップも非常に苦戦を強いられています。
また業界では「2015年問題」と言われる、シニアゴルファーがゴルフそのものからリタイヤし、ゴルフ人口が激減するとも言われています。
ゴルフという事業分野そのものを客観的な視点で評価し、弊社の事業全体を見直す機会だと考えております。

今後のゴルフ関連事業についてですが、2016年に行われるリオデジャネイロのオリンピックからゴルフが正式種目になります。これに伴い、一層、ジュニア層へのマーケット拡大が期待されていますし、これまで以上にゴルフがレジャーや娯楽から「スポーツ」への認識が高まると思います。
弊社も、より競技志向の高いゴルファー向けの新商品導入や新製品開発、マーケティングに力を注いでいきます。

そして、新事業展開については「健康や美」の分野を意識した企画を進めようと考えています。まずはゴルフ用品関連の他用途への転換・他市場への展開を検討しています。
ゴルファー向けに開発されたサプリメントやシリコンブレスレットなどをゴルフ業界以外の新たな販路の開拓も進めているところです。
既存事業であるゴルフ関連分野と、新規の商品や市場の展開が、既成概念にとらわれることなく、上手く融合していくようなイメージで展開してゆきたいと思っています。
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-さて社長業の魅力とは何ですか。

(サラリーマンと違い)我々規模の中小零細企業の社長は“潔い判断ができる”ということでしょうか。個人保証をしているため、もちろん大きなリスクも伴いますが、自らの判断と行動が事業活動そのものですし、たとえそれが一時の間、いばらの道であろうがのりこえて行かなければならない仕事であると、腹を据えてかかろうと思っています。

それに、私はまだ40歳代半ば。自分で言うのは気恥ずかしいですが、気力も体力も充実している。行動力もあるほうですし、がむしゃらに社業に打ち込みたいと思います。
社長就任以来、1年半。いきなりの大きな環境変化は、ゴルフのプレーに例えると強いアゲインストの風です(笑)。 ボールは飛ばないし、右に左によく曲がる(笑)。でもスコアは悪いですが、なんとかホールアウトしてきました(笑)。アゲインストに負けない経営者としての能力や体力・技量を身に付けたいですし、いつまでもアゲインストであるはずがない。いずれフォローの風が吹く。その時に、石川遼選手のようなビックリするような好スコアを出せるよう、これからも、潔い判断と行動力をもってベンソンの経営にあたっていきたいと思います。

-最後に、社長就任後、当福岡商工会議所の支援策の活用やこれからの要望等を教えてください。

若手社員の採用に関する支援を受けました。
これは、福岡商工会議所の「福岡県地域ジョブ・カードセンター」の仕組みを有効に活用させていただきました。コーディネーターの方の非常に手厚い指導とサポートを受け、お陰様で、将来有望の優秀な若手社員の採用・入社が決まりました。入社して半年ですが、期待以上に頑張っており、大変感謝しております。

また、今後についてですが、我々にとって新しい販路になる商談会の参加支援、知名度の向上・販売促進に関連しホームページリニューアルやカタログ作成等に関する支援、社員へのさまざまな教育研修支援、異業種の経営者との交流支援、そして新たな事業展開(異業種企業との事業提携や連携などのビジネスマッチング)への支援等を望んでおります。
「困った時は、まずは福岡商工会議所に相談しよう」と思っております。

レポーターのコメント

日本では、“創業”と“事業承継”とは分けて対応する考え方が一般的です。ちなみに、西欧特にフランスあたりでは、事業承継は創業の一つとしてとらえられております。会社を引き継いでいくという考えよりも、企業の事業基盤を活用して新社長が事業を始めるという考え方が強いようです。
この点で、野村さんもこのような考え方に近いものを感じます。起業家精神に富み、自らの信念や理想に向かって、この第三者承継という事業承継のパターンを上手く進められています。まさに“創業マインドに富んだ後継者”と言えるでしょう。

また、事業承継した2年目の社長とは思えないほど、 “攻めと守りのバランスを備えた経営”をされています。就任直後のこの1年間の思いもよらない大きな逆風の環境変化にも、微に入り細に入り対応されてきて、常にお客様との取引き継続と従業員の雇用を基本テーマに、この急場をしのぎ事業運営を進めています。一方で、将来にわたり大きな経営環境の変化を読みとり、新たな事業の柱の構築を意識しながら、新商品開発、新市場展開も積極的に展開をされています。

“艱難汝を玉にす”との言葉のとおり、就任直後のこの難局を乗り越えることで得たノウハウや技術が、今後の事業の発展や事業継続に活かされることでしょう。野村社長とベンソンの益々のご繁栄と更なる事業永続を期待しています。


関連ページ http://keiei-online.jp/interview/succession_1/post_134.html

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レポーター:薗田 恭久(そのだ やすひさ)

中小企業診断士

民間企業勤務を経て、情報通信関連会社を同僚と創業。以後代表取締役含む14年間に亘る企業経営実務を経験。その後2005年、有限会社薗田経営リスク研究所を設立、経営コンサルタントに転身する。事業承継支援、事業再生支援、経営革新支援、およびBCP(事業継続計画)・BCM(事業継続管理)の企業経営リスクマネジメント構築支援等を専門分野として、中小・中堅企業の支援を積極的に行っている。

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