労務Q&A

過重労働

Q.当社は、精密機械の部品を製造いたしております。大手企業の下請的企業であるため業績は親会社からの受注量に左右され、近年の不況による影響をまともに受けたため、15名程いた従業員も漸減し現在11名です。ただ、最近になってようやく受注量が増え始め、生産量も回復してきておりますが、それにつれて残業量も増えてきており、休日労働も合わせると残業時間が月に80時間を超える従業員も中にはおります。これが過重労働になるのではないかと心配いたしておりますので、当社として注意しておくべきポイントについて教えていただけたらと思います。

A.近年、働き盛りの方の「過労死」について新聞紙上等でも取り上げられ、また、社内における働き過ぎによる精神疾患等罹患者の激増等にも社会的関心が寄せられています。過重労働は近年の労務管理においても最大の課題となってきております。

その対策として国から「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置等」という指針が示されていて、その中で過重労働の原因となる労働時間と脳・心臓疾患の発症との関連性について以下の基準が明示されています。

  1. 残業が月100時間超または発症前2~6ヵ月間に1ヵ月当り80時間を超えると、業務と発症との関連性が強まる
  2. 残業が発症前1~6ヵ月間に1ヵ月当り45時間を超えると、残業時間が長くなるほど業務と発症との関連性が強まる
  3. 残業が発症前1~6ヵ月間に1ヵ月当り45時間以内の場合、業務と発症との関連性が弱い
  

この基準は、医学的知見に基づいて定められているため、長時間労働となり残業時間が増えると健康障害へのリスクが高くなるということになります。基本的には残業時間が1ヵ月当り45時間を超えないよう注意する必要がありますし、そのためには労働 時間の実態を把握しておくのは言うに及ばず、冗漫な無駄な残業は極力なくす必要があるわけです。

万が一、長時間労働による過労死もしくは精神疾患罹患による自殺等が惹起されることになると、会社は労働契約法上の安全配慮義務違反による企業責任が問われ、経済的、社会的に相当なリスクを負う可能性がありますから、メンタルヘルス対策は、本気で取り組むべき重要課題です。

いずれにしても、現場の責任者は各従業員の勤怠や職務の負荷状況をしっかり把握して業務量を調整したり役割分担の見直しをすることが求められます。

あわせて、残業時間が長時間となった場合には、医師による面接指導を行うことが義務づけられました。具体的には、労働安全衛生法が改正され、残業時間が1ヵ月当り100時間を超え、従業員本人から面接指導を受けたい旨の申し出があった者が対象になります。

また、残業時間が1ヵ月当り100時間を超えなくてもかなりの残業時間が認められるような場合で、従業員本人から面接指導を受けたいとは言いにくいことも考慮して、たとえば3ヵ月連続して残業時間が1ヵ月当り80時間を超える者については申し出がなくとも面接指導を受けさせるなどの社内での取り組みを制度化して見ると良いかもしれません。

更には、定期的に従業員の皆さんに疲労の蓄積度合いをチェックしてもらうという方法も良いでしょう。厚生労働省のホームページに「疲労蓄積度チェックリスト」が掲載されていますので、活用してみてください。

碇宏介

碇 宏介(いかり こうすけ)

社会保険労務士・行政書士

1959年生まれ。大学卒業後、学校法人勤務を経て碇労務管理事務所に入職。労務顧問業務のかたわら、受験予備校での講師職、経営者協会での講演等を行う。平成20年に社会保険労務士法人碇人事労務センターを設立し、代表社員に就任する。その間、大手総合病院、専門病院等で人事制度策定、人事考課者訓練、中間管理職研修を行う。人事制度構築のほか、社内規程整備、労務相談などを積極的にこなしている。

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