法務Q&A

商標権侵害の警告

Q.当社は、創業50年になる和菓子店で、地元の商店街で販売を続けております。規模はそれほど大きくありませんが、昔からの顧客も多く、安定的に売り上げも上がっています。中でも主力商品の最中は独特の形態とネーミングで、創業以来かわらず定番商品となっています。
ところが、今般、大手菓子メーカーがこの当社商品と同じ名前の商標登録をしたと言って、当社商品の名称の使用差し止めを請求してきました。当社の方が昔からこの名前を使っているのに、このような差止請求に応じなければならないのでしょうか。

A.最近では、商品やサービスの名前や形などについて登録できる「商標権」をめぐる紛争が多くなっています。

商標権は、一定の要件を満たせば誰でも取得することができます。

商標権をはじめとする知的財産権の中でも、商標権は少し特殊で、特許権などは自分が初めて考えた世界初のアイデアでなければ登録できないのに対し、商標権は、すでに世の中に存在する名前であっても、最初に出願した人が商標権を取得することができるのが原則になっています。

したがって、他社に商標登録を先にされてしまった場合、いくらあなたの会社がそれ以前からその名前を使用していたとしても、商標権侵害となってしまいますので、原則として差止請求が認められてしまいます。

もっとも、知的財産権を巡る紛争には、いくつもの例外が存在しますので、簡単にあきらめる必要はありません。

まず、あなたの会社が昔からその名前を使ってきたことによって、相手方の会社が商標出願をしたときまでに「周知性」を獲得していた場合、先使用権が認められ、あなたの会社がその名前を継続して使用することができます。

ただし、ここでいう「周知性」とは、その商品の名前があなたの会社のものであることが需要者の間で広く知られていることが必要で、「地元商店街では知られている」とか「○○市では知られている」といった程度では足りず、もう少し広い範囲で知られていることが必要です。

また、そもそも、相手方の商標権が有効であるかどうかを、十分に吟味する必要があります。

仮に商標登録がなされていたとしても、本来商標登録することが許されないようなものが誤って商標登録されているとして、その商標権自体を無効にすることができる可能性があります。

たとえば、既に一般的にその商品に対して使用されているありふれた名称や、他人の商品等と混同を生ずる恐れのある商標、他人の周知商標と同一または類似の商標などがこれにあたります。

その他にも、商標権には多様な無効理由があり、訴訟になった場合、相手方の商標権を無効とできる場合も少なくありません。

このように、商標権侵害であると言われた場合でも、早々にあきらめるのではなく、法律上有効な対抗手段がないか、必ず知的財産権を取り扱う弁護士か、または侵害事件を取り扱う弁理士に相談することをお勧めします。

このように、商標権侵害の警告を受けたとしても、対抗手段は十分検討できますが、そもそもそれ以前に、自社の主力商品やこれから力を入れて行きたい商品については、きちんと商標登録をしておくことが不可欠です。

そうでないと、多額の資本と時間を費やしてやっと売れ筋になったところで、商標権侵害の警告を受け、肝心の商品の名前を変更しなければならないという事態を招いてしまいます。

特に、最近では、日本でちょっと売れた商品になると、すぐに中国など近隣アジア諸国で無関係の人がその名前を商標登録してしまい、輸出しようと考えたときに、すでに外国では販売ができなくなっているといった事例も頻繁に見られるようになってきました。

商標を出願するときには、日本以外のどの国で出願をするのかといった検討も必要になっていると言えるでしょう。

いずれにしても、昨今では、知的財産権に関する知識も一般に浸透していますので、主力商品については必ず商標権を取得しておくという姿勢は、非常に重要になっています。

これを機会に、自社の商品のブランド戦略を、一度きちんと見直しておくことをお勧めします。

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田中 雅敏(たなか まさとし)

弁護士・弁理士

1971年山口県生まれ。1994年慶応義塾大学総合政策学部卒業。1999年弁護士登録。2001年弁理士登録。弁護士知財ネット理事。アジア弁理士協会会員。弁護士としてベンチャー企業から上場企業まで幅広く企業活動関連業務を行う。特に、企業活動における総務、人事労務、法務等の組織作りや契約書等の経営インフラ作りに積極的に関与する他、知的財産権全般に関する業務を扱い、経営支援やコンサルティング業務も手掛ける。常に依頼者とともに、目的達成に必要な方法を能動的に模索・提案し、依頼者にとってベストな解決を図ることを目指している。

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