法務Q&A

中国取引についての法律問題~進出形態と契約書~

Q.当社は、現在九州地域で商品の展開を行っており、徐々に知名度も上がってきました。最近では、市場としての中国が魅力だと聞いており、私自身も、当社の商品を中国で販売していきたいと考えています。ところが、これまで中国取引の経験は全くなく、まずは何を検討したらよいのかもわかりません。未経験のことで大きなリスクを抱えたくないとも考えておりますので、まずは一般的なことでよいので、教えてください。

A.中国が、生産拠点としての魅力から市場としての魅力に変わってきたのは、ここ数年のことです。しかし、膨大な人口という潜在的な市場と、飛躍的に向上した経済力、購買力という点から、最近では、多くの企業が中国での商品展開を考えるようになってきました。

ご質問の件は、非常に漠然としていますが、まず第一歩として決めなければならないことをご説明します。

まず、中国で商品展開する場合に、自社の何が強みなのかをよく検討し、それを最も生かせる進出形態を考える必要があります。

中国に進出するには、一般的に、次のようなパターンがあります。

①販売代理店方式
中国で自社の商品を販売してくれる協力企業を見つけ、そこを通じて、中国国内に商品展開をしていくやり方で、いわば、通常の輸出、あるいは総代理店方式での輸出という形といっても良いと思います。

②連絡事務所を設置する
これは、市場開拓や取引先との連携強化を図るため、現地スタッフや日本から派遣したスタッフを常駐させるやり方です。この方法では、現地営業行為はできません。

③独資企業を設立する
中国資本を参加させず、自社のみ、または自社と他の日中国企業とが共同で出資して現地で会社を設立するパターンで、現在では非常に多くなっている形態です。

④合弁企業を設立する
中国企業との共同出資によって新たに会社を設立するパターンです。中国国内での地に足をつけた展開を図ることができるメリットがあり、いくつかの業種では、合弁企業が義務付けられるものもあります。

⑤合作企業を設立する
中国側パートナーとお互いの協力関係について自由に取り決めるやり方です。柔軟性が魅力ですが、一方で法的な部分に不透明なところもあり、実際に行う場合には、注意が必要です。

以上のような方法では、それぞれ一長一短があるところですが、最初にアンテナ的に商品を展開してみるという場合で、コストもあまりかけられないという場合には、①の方式が最も手堅いとは言えます。

ただし、この場合、どのような企業と組むのかというパートナー探しや、組んだ相手方と締結する契約内容、利益設定や中国国内での販売状況等をどうやって監督するかといった点を十分に検討しておかないと、後にトラブルを招くことになります。

特に、中国では、日本で裁判をして得た判決ではそのまま中国で執行できないので、紛争が生じた場合の解決方法をどのようにするかを定めることは重要です。実際には、仲裁などが使用されるケースが多いようですが、そもそも、なるべく紛争が起こりにくいスキームを考える必要があります。

ごく一例をあげると、たとえば商品代金の支払いなどは、日本企業同士の場合は、月末締めの翌月払いといったように、後払いとすることが多いのですが、このような方法では、債権回収について紛争が生じる可能性が高いので、お勧めできません。

前払い、または、相当部分の前払いと残余の部分の後払いを併用するとか、与信枠を徐々に上げて行き、決済ができない限り、どんなにうまい話があっても取引額を増やさないといった、紛争を未然に防ぐための、冷静なリスク管理が必要です。

次に、自社の強みが何かを考えた上で、模倣対策や、事業そのものを中国企業等に乗っ取られないかの検討が必要です。

特許や商標などの知的財産権がある場合には、それを中国国内でもきちんと権利化することはもちろん、一定の周辺国でも知的財産権を押えておく必要がないか、流通ルートや予想される模倣ビジネスのスキームを考慮に入れた上で、十分に検討しておく必要があります。

また、そもそも知的財産権という前に、模倣やノウハウを取られないための管理が重要となります。たとえば、安易に展示会などで商品写真の写っているパンフレットなどを配らないとか、展示会に出す前に意匠権等の権利化をしておくとか、取引先企業にも重要な部分の技術やノウハウは開示しないとか、一部を模倣や盗用されても全体としてビジネスが成り立つようなスキームを構築するといった配慮が必要です。

せっかく中国取引を始めたとしても、すぐに自社の虎の子の技術やノウハウが盗用され、結果として市場から撤退した、という例は枚挙に暇がありません。そうなると、大事な技術をわざわざ他人に差し上げた結果、自社のこれまでの事業展開すら危うくなることになりかねません。このようなことになるくらいなら、進出しない方がよほどよかった、ということになってしまいます。

中国取引を開始するには、最初のリスク管理が非常に重要です。

九州においてこのような取引を始めるには、経験ある企業などから情報をもらうといった横の連絡も重要です。

また、福岡商工会議所(社)福岡貿易会JETRO福岡や、福岡県、福岡市、北九州市といった行政機関も相談に乗ってくれる他、上海などに現地事務所もあり、一定の支援を提供してもらえます。

法的なことについては、日弁連の設立団体である「弁護士知財ネット九州・沖縄地域会」が、上海や北京の複数の協力事務所と提携の上、包括的な中国取引支援を展開していますので、こちらにもご相談をされることをお勧めいたします。

いずれにしても、せっかくの商機をリスクに変えてしまわないよう、十分に準備をした上で、新たな事業展開を図って頂きたいと思います。

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田中 雅敏(たなか まさとし)

弁護士・弁理士

1971年山口県生まれ。1994年慶応義塾大学総合政策学部卒業。1999年弁護士登録。2001年弁理士登録。弁護士知財ネット理事。アジア弁理士協会会員。弁護士としてベンチャー企業から上場企業まで幅広く企業活動関連業務を行う。特に、企業活動における総務、人事労務、法務等の組織作りや契約書等の経営インフラ作りに積極的に関与する他、知的財産権全般に関する業務を扱い、経営支援やコンサルティング業務も手掛ける。常に依頼者とともに、目的達成に必要な方法を能動的に模索・提案し、依頼者にとってベストな解決を図ることを目指している。

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