「貸金業法はこう変わる! ~弁護士が教える改正の重要ポイント~」(2010/07/01開催)

「貸金業法はこう変わる! ~弁護士が教える改正の重要ポイント~」(2010/07/01開催)

短期の資金調達手段として貸金業者から借入れを行う中小事業者にとって、その法的知識はとても重要です。改正貸金業法が今年6月18日に全面施行され、過剰貸付の防止を目的に、新規の借入れの制限や、返済能力の調査が強化されます。それに対する事業者の対応策や従業員が多重債務問題を抱えた場合の対処法を知るための有用なセミナーです。

本文の後ろに添付資料がございます。印刷してご利用ください。

短期の資金調達手段として貸金業者から借入れを行う中小事業者にとって、その法的知識はとても重要です。改正貸金業法が今年6月18日に全面施行され、過剰貸付の防止を目的に、新規の借入れの制限や、返済能力の調査が強化されます。

池田

まず簡単に自己紹介申し上げます。

我々は福岡県弁護士会に所属する弁護士であり、池田は福岡県弁護士会中小企業法律支援センター、千綿弁護士は福岡県弁護士会消費者委員会でそれぞれ活動しております。貸金業法の分野は消費者問題の範疇として理解されることが多いのですが、事業者にとって貸金業者からの借入によって短期の運転資金をまかなうというケースはきわめて多いことから、中小企業支援の観点からも貸金業法の分野への対応が重要であると考えております。

今回の改正貸金業法に関しましては、巷でいろいろ話題に上ることが多くなっていますが、実際には、改正点の具体的な中身が分からないまま、不安に思われている事業者の方も結構多いと思われます。そこで、改正法の正確な知識を身につけていただき、不安を解消していただくという観点から、本日のセミナーが企画されました。

進め方としては、私が事業者の立場から、疑問点や問題点を提示し、千綿弁護士に解説してもらいます。千綿弁護士は、日本弁護士連合会の専門の委員会でも活躍しておりますので、これまでの議論状況や、今後の貸金業法をめぐる動向などといった話題にも触れられたらと思います。宜しくお願い致します。

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千綿

弁護士の千綿と申します。宜しくお願い致します。今回の法改正は概要としてはシンプルなんですが、細かい規則を見ますと、非常に分かりにくく、我々弁護士も「ここはどうなのかな?」と聞かれると、結構戸惑うことが沢山あります。また私たち弁護士は、どうしても債務者の側から多重債務整理の一環として貸金業法に取り組むことが多いので、貸金業を営んでおられる方や多重債務に陥っていない事業者さんのご意見も伺ってみたいと思っています。我々の今後の業務にも是非参考にさせていただきたいと思いますので、宜しくお願い致します。

貸金業法とは

池田

それでは、早速始めていきたいと思います。改正法の中身に入る前に、そもそも貸金業法の趣旨、貸金業法とはどういった法律なのか?といった辺りから伺います。

千綿

今回貸金業法がテーマですが、出資法と貸金業法と利息制限法、それぞれ3法改正されております。それで、メインテーマであります貸金業法については、貸金業者さん達の規制法、あるいは、業法であり、貸金業者の方々が従っていただくべき規範を定めた法律です。

池田

では貸金業法の対象となるのは、どういった業者なのでしょうか? 例えば、よくヤミ金って言いますよね?ヤミ金の定義というのは、はっきりとしたものは無いのですが、貸金業の登録を受けていないのに、違法な金利で貸付を行っている者のと言えます。貸金業法の対象には、こういった者も含まれるのでしょうか?

千綿

貸金業法上は、財務局、都道府県に登録を受けている業者さんが直接の対象です。そしてヤミ金融というのは、貸金業登録していないので、直接の規制対象にはならないという意見もあるのですが、無登録営業は厳しい処罰が科せられていますし、そういった意味では規制の対象にはなる、ということになります。

池田

あえて聞くことではないのかもしれませんが、銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫等、企業への融資を行っている機関は沢山ありますが、そういった所は、この貸金業法の対象ではないのですか?

千綿

銀行等については、それぞれ個別に業法がありますので、今回の改正となっている貸金業法の対象にはなっておりません。それは、信用組合、労働金庫さん等も同様です。 しかし、ややこしいのが信販会社さんで、私もよくクレジットカードを利用しますが、お買い物とお金を借入れするという2つの利用方法があります。お買い物については割賦販売法が適用されます。キャッシングについては、やはり貸金ですから、貸金業法が適用されます。ちょっとそこがややこしいところです。

池田

例えば、以前は独立して貸付業務をしていた貸金業者が、最近は銀行と提携していたりしますよね?そういう場合でも、元々貸金業者だった所は、登録業者として貸金業法の対象になるということですか?

千綿

はい。 なお利息制限法と出資法もご説明しておきます。利息制限法とは、貸金業者だけではなく、個人の間での貸金や、貸金業登録していない業者さんとある業者さんのお金の貸し借り等も含めて、利息に関する民事上の利率を全般的に定めたものです。 出資法は、ざっくりとした言い方をすれば、刑事上の処罰を定めたものです。

池田

この3法(貸金業法・利息制限法・出資法)は、目的がそれぞれ違うのですが、相互に若干矛盾した内容もあって批判されたり、あるいは、裁判例等で法律間の解釈の整合性を保たせるための工夫がなされていたりしますよね。

千綿

矛盾という所まで言って良いかどうかはわかりませんが、いずれにせよ、以前から3法の関係をどういう風に考えるか議論がありました。今回の改正法は4年前の平成18年に改正されていますので、その際に各方面から意見があって、国民世論を巻き込んだ上での議論を経て、法律改正されたということになるんです。  

貸金業法改正の背景

池田

さて、いよいよ改正の中身に入っていきます。貸金業法が成立したのは昭和58年で、いわゆるサラ金による過剰貸付や取立行為が社会問題化していた時代でした。 それからかなり時間が経って、改正されたのが今から4年前の平成18年でした。どういう背景があって改正されたのか、また、なぜ、改正されて直ぐに完全施行されず、段階的に施行されるようになったのか、聞かせてください。

千綿

これは、沢山議論がありますので、私の方でこれは個人的に考えている所、それから文献なんかで指摘されている所を申し上げたいと思います。 経過としては、今回の平成18年改正よりも前の平成12年、平成15年に、主としてヤミ金の問題について、その都度改正をしてきておりました。そういう過程の中で、抜本改正がされたのが平成18年です。

背景事情としてよく言われているのが、まずは破産申立て件数が急激に増加していたということです。最高裁が出しているデータですが、平成15年がピークなんですけれども、25万件に近づこうとしている件数です。特に九州は、全国都道府県の件数にしても上位10県に九州の殆どの県が入っているというような状況で、この多重債務問題を解決しないといけないのではないかということが言われていました。

それから、破産申立ての原因について指摘致します。日本弁護士連合会で破産申立ての記録を直接調べて、破産申立ての原因を約3年おきに調査しています。それを見ますと、1番多いのは生活苦や低所得者、病気、失業、転職といったことで、少し気の毒な事情ですね。いわゆる「自己責任」とは一概に言えません。ギャンブルも1.8%でそれほど多くないんです。社会構造上の問題で借入れに至って、破産を申立てるということも多く、貧困問題そのものが背景にあるというようなことが言われています。

また自殺者数も日本はかなり多いんですが、これも平成15年位に増加傾向にあり、3万5千弱位の数字に上がっています。警察庁が把握出来ている範囲で統計を出しているんですけれども、生活苦というのが9千人近く。これは、交通事故の死亡者と同じ位の数なんですが、増加しているということで、多重債務問題を抜本的に解決しないといけないと平成18年当時かなり言われていたという背景があります。

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池田

個々の弁護士あるいは弁護士会としては、早い段階から多重債務問題を人権問題として取り上げ、活動してきたわけですが、生活苦というか、経済苦による自殺者が増え、ようやく世間でも、人の生命にも関わる人権問題という意識が高まり、国や都道府県レベルで多重債務問題に正面から取り組むようになった経緯がありますよね。

このような動きと関連して、少し技術的な話になるかもしれませんが、全国の破産申立て件数が増加の一途を辿っていたのが、その後漸減傾向にありますね?民事再生手続きが法律上導入されたことも一つの要因かと思いますが、その点の背景事情について指摘できる点はありますか?

千綿

民事再生の統計をここに出しておりませんけど、破産申立て件数は平成15年にピークなんですが、民事再生の件数は少し違いまして、平成15年、16年、17年とずっと増加傾向です。これは個人版の民事再生です。通常再生は、また違う所にピークがあるんですが、個人の債務者の民事再生は平成19年がピークで、20年、21年は若干減っています。

これは何故かと言うと、個人再生手続きはまだ普及しきれていない部分があるのではないかと思っています。これは非常に使い勝手の良いもので、破産しなくても一定額カットしてもらって、払っていくという制度です。しかも、住宅ローンを払いながら、住宅を維持して使えるという、使い勝手の良い制度なんですけど、我々弁護士側もまだ研修が不十分な所もあって、本来の潜在的な需要をすくい上げ切れていなかったという面もあるかもしれません。

そういうことで、個人再生手続きは平成19年位まで増えています。最近は若干色んな社会的背景もあり、皆さん関係各機関で一致団結して多重債務問題全般に取り組んでいただいているということで、少し減っていますけど、そういう情勢があるかと思います。

池田

規模の小さい事業者さんの場合には、通常の再生手続きではなく、むしろ個人再生の手続きでやれるということですね。金額的な、総債務額に関する要件なんかもあると思いますけれども、本来は使い勝手がよく、もっと利用されても良いのかもしれませんね。

本来の筋に戻して、具体的な貸金業法改正の論点について伺います。先程若干触れましたが、平成18年に改正された貸金業法は、その後、段階的に施行されていきますよね。その経過について説明していただけますか?

千綿

はい。レジュメの1ページに、施行のスケジュールを書いております。法律が出来たのが、先程申し上げたとおり平成18年です。施行時期が、第1段階、第2段階、第3段階、第4段階となっています。 今回の、いわゆる完全施行と言われている貸金業法の改正が、第4段階の2010年6月18日となっております。

改正の第1段階は、罰則の引上げです。これは法律が出来た翌月、平成19年の1月に罰則の引上げがされています。これは、ヤミ金等の対応が必要でしたので、直ぐに引上げを施行しました。それから第2段階は、取立て規制の強化等がありまして、第3段階で信用情報機関の制度がされております。

そして、今回の第4段階です。今回の完全施行の内容としては大きく2つあります。一つはいわゆる金利に関する規制です。「グレーゾーン廃止」とかいう風な言い方がされますが、金利に関する問題、これは後で詳しく言います。それから、「総量規制」です。これも後で説明致しますが、年収の3分の1以上の貸付が禁止されます。

この2つが大きな目玉で、最後の施行であったということです。これが平成18年に出来て、結構ドラスティックな改正でしたので、平成22年まで少し段階的に施行時期をずらしました。

なお、この総量規制に関連して、年収の3分の1という所で線を引くんですが、その為に前提として情報をきちんと整理しておかないといけない。年収の金額等を把握しないと総量規制が出来ませんから、その前提として第3段階の施行が平成21年でした。指定信用情報機関制度と言いますが、信用情報を整理する、ということで、段階を踏んで施行していっているわけですね。

池田

改正自体がかなりドラスティックな内容を含んでいるので、その準備期間も必要であるという観点から、段階的に施行されたと理解して宜しいですか?

千綿

はい。そうだと思います。

池田

貸金業法の解釈に関しては、裁判例も揺れた時期がありましたが、レジュメの3ページ(8)の元最高裁判所判事の見解にも表れているように、借り手保護の観点が鮮明になっていきましたね。

千綿

やはり法律解釈というのは、裁判官が社会情勢をどのように捉えているかという所が、どうしても避けて通れない部分であるかなと思います。ここの(7)に書いている最高裁の平成18年1月24日というのは、グレーゾーン金利に関する判例なんですけど、これが非常に実務的にはインパクトが大きかった判例で、それについてどういう背景があったかというのが窺い知れるインタビューがあったので載せています。

池田

地方の場でも1000を超える議会の決議があったり、様々な考え方が示されて、行政側の色んな取組み等も段々強まって、更には全国的に署名活動も行われたり、国全体の雰囲気も改正論議を後押ししたという事情があるんでしょうね。

千綿

そうですね。署名もそうなんですが、都道府県議会で金利引下げを求める意見書が採択されたのが、43都道府県。それから、市町村を入れると1,136。これは市町村議会ですね。 それから、当時はヤミ金問題もありましたから、そういった色んな社会情勢からも、金利引下げについての世論の高まりというものがあったと受け止めています。

貸金業法改正の中身 その1(罰則・行政処分)

池田

では、個別に改正点を見ていきたいと思います。先程罰則の強化という改正のポイントがありましたが、具体的にどれ位強化されたものなのでしょうか?

千綿

レジュメの4ページに一覧表を付けていますので、これを参照いただければと思います。沢山ありますが、特に上から2つ目の無登録営業はヤミ金に関してはずっと段階的に上げてきておりまして、最終的にはここまで引き上げたというような所や、取立ての規制についても、これはもちろん無登録営業ほど重くは無いんですが、これも罰則が科せられる場合もあるという所が指摘されるかなと思います。

池田

続いて、行為規制の強化ということで、貸金業者側の日常的な業務に対する規制強化もあるようですが、簡単に説明していただけますか?

千綿

はい。レジュメの5ページです。4ページの表は罰則で、要するに刑事処罰が科せられる行為規制ですね。無登録営業とかがそうなんですが、懲役刑や罰金刑に科せられます。他方、行為規制というのは、法律的な言い方なんですが、行政処分の対象となり得る。刑罰とはまた違うんですが、行政の取締の観点から規制されているのが少々ありまして、ここはちょっといっぱい付けています。

これは、今日は色んな弁護士さんも来られていますし、事業者さんも多いので、資料としては詳しめにしようと思ったので、箇条書きにしました。1番上が貸金業者が取り扱う情報に関する規制です。情報の取扱や管理の問題です。それから2番目と3番目が消費者契約法などの発想に近いんですが、不実の告知というのは、虚偽の事実を告げてはいけないとかですね。あるいは、3つ目の適合性というのは、これも法律的な言い方なんですが、借入に不適格な人については勧誘してはいけないとか、再勧誘を禁止とか、かなり立ち入った規制が入っております。

それから、4つ目は当時平成18年の改正の時に少し社会的な議論になったものですが、生命保険をかけているということで、先程申し上げた自殺者が増えていたということもあります。そこで住宅ローンを除いて禁止になりました。いわゆる「団信」と言っていると思いますが、住宅ローンについては書面で説明した上で同意を得て、生命保険をかけることが出来る。これは、債務者側も生命保険をかけて欲しいという家族全体の思いというのがあると思います。

それから、公正証書についても説明不十分のまま作られているような指摘もありまして、規制されたというのがあります。それから、連帯保証人に対する説明などが入っています。

池田

細部にわたってかなり詳細な規制強化になっていますが、逆に言えば、そのような規制を設けざる得ない実態があり、それをなんとか改善する為に規制がなされたという背景があるのかと思います。

例えば、我々弁護士が実際に相談を受けていても、借り手が明確に意識していないのにその人の委任状で公正証書が作成されていたというケースも稀ではありませんでした。あるいは、取引履歴の開示も、今のようにすんなりとはいかず、実際の事件を処理する過程で弁護士が苦労して交渉していました。以前は金融庁のガイドラインに拠り所があったのですが、それが、このように法律上明確に規定された意味は大きいですね。

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千綿

そうですね。これについては最高裁の判例もありまして、取引履歴の開示義務ですね。貸したり借りたりの取引きの内容については出しなさいというのが、元々はガイドラインにありましたけれども、最高裁の判例でも明確に義務が言われて、法律に上がってきたという所があると思います。 それから、規制が増えていますが、これは貸金業法に限ったことでは無くて、昨年改正されました割賦販売法や特定商取引法であるとかも、かなり細かい規制が定められている状況はあるかなと思います。

池田

消費者保護の観点が、こういった規制にも影響してきていると言えますか?

千綿

そうですね、社会情勢からいきますと、一面で規制緩和が言われることもあります。政策というものは、最終的には国会機関が考えることだと思いますけど、利用者側、利用を提供する側で、それぞれ色々社会情勢、事件が起きたり、あるいは判例が出て来たり、そういった情勢で変わる所だと思います。

今回の規制についてはそういった所で、最初から申し上げていますが、多重債務問題に取り組まなくてはいけないという中で出てきたということだと思います。

池田

続いて、行政による監督についても触れておきたいと思います。せっかくの行為規制強化も、行政段階でのしっかりした監督がないと、絵に描いた餅になると思います。そういった監督強化の規定はどうなっていますか?

千綿

具体的な監督官庁の監督権限について、登録取消と業務停止のほかに、業務改善命令ということで、具体的な改善命令に立ち入った指導が出来るとなっています。それから、事業報告書も出しなさいということになっております。  

池田

登録取消とか業務停止とかは、かなり重たいというか、ドラスティックな監督の方法なので、逆に行政側もそこまで踏み込むかどうかという所で躊躇する部分もあると思います。そういう意味では業務改善命令というのは、その一歩前くらいの、やや緩やかだけれども、行政処置としては重要な監督方法だと捉えることができますね?

千綿

そうですね。やはり登録取消、業務停止は行政処分の中の不利益処分としては、かなり重たいですから、行政手続法等の規制も聴聞とか色々な手続きがありますし、なかなか踏み切るのが難しかったのです。業務改善命令であれば、勿論これも不利益処分になるのですが、まあそこまでいかないけれども、もう少し指導するということは法律上謳われたということです。

貸金業法改正の中身 その2(金利制限)

池田

続いて、改正の重要ポイントとして世間でもよく話題になっている金利規制の問題、具体的には、みなし弁済の廃止や、あるいは出資法の上限金利の引下げ等のお話を伺います。皆さん大体情報として知っていらっしゃるかもしれませんが、そもそもみなし弁済とはどういったもので、今回どうなったのかという点から分かりやすく説明していただけたらと思います。

千綿

これからの金利規制の話と総量規制の話について、ここは1番時間を割こうとは思っています。まず、金利規制の話です。今回の完全施行の山の一つなんですが、簡単に申し上げるとポイントは2点かなと思うんです。

まず、出資法の上限金利を引き下げたという所が1つ目だと思います。改正前で29.2%。これを業として29.2%を超える金利を貸付けると、先程言いました出資法により処罰されるということになっていたんです。しかし、これを20%までぐっと引き下げたというのが1つ目のポイントだと思います。

それから2つ目のポイントが、「グレーゾーン金利の撤廃」ということです。レジュメのグラフのうち、改正前の方を見ていただくと、29.2%のこの出資法の刑事処罰が科せられる範囲と、その下の階段状になっていますけど、これは利息制限法の金利です。利息制限法の金利は、民事上の有効な利率ということになります。出資法の金利と利息制限法の金利の間の部分がいわゆる「グレーゾーン金利」で、みなし弁済の要件を満たせば有効だよ、と定められていました。今回の改正では、この「グレーゾーン金利」を無くしたというのが、2つ目のポイントだと思います。

ですので、20%を超えれば出資法で処罰されますし、利息制限法のこの階段状の所を超えれば民事上も無効ということになります。ただちょっと分かりにくいのが、この20%とこの階段の所の隙間は、刑事罰は科せられないけれども、行政処分の対象になる。ここがちょっと分かりにくく、注意が必要かもしれません。

池田

行政処分としては、具体的にどのような運用がなされることになるのでしょうか?

千綿

まあ程度問題だとは思いますけど、いきなり登録取消とはなかなか無いと思うんですけれども、指導などの手段で言われるかと思います。ここの階段状の金利で営業されることはヤミ金以外の通常の業者の方は無いと思うんですけれど、ちょっと手数料とかを取ったりする時に、利息制限法のこの階段をちょっと超えてしまっていたりする時がありますので、注意が必要かなと思います。

池田

多少細かい点になるかもしれませんが、いわゆる保証料に関する特則について若干説明をお願いします。

千綿

保証料については、色んな判例を含めて議論があったと思います。これについては、貸金業者がお金を貸付する時に保証会社を付ける。保証会社が付いた場合に、当然保証料を払うんですが、この保証料が金利と同一視されるかどうかということで、最高裁の判例もあった所です。

これに対する規制としては、簡単に申し上げれば、今回の改正で保証料は利息と合算されるということになりますので、保証料を含めると利息制限法を超えてしまうことがあり得るので注意が必要ですね。利息制限法を超えた場合に無効になるんですが、これは基本的には超えた分だけが無効になるという風に言われています。契約全体が無効になるとは今の所はならないだろうと思うんですけど、保証料は利息と合算されるということになっています。

それから、超えてしまった場合は、業としてやってしまうと、出資法の5条の2ということで刑事罰の対象になりますので、ここは少し注意が必要かなと思います。

池田

形式上、利息という名目のものだけではなくて、保証料とかも対象になっていくというのが1つですよね。

千綿

はい。

池田

借りる側は自分の利益を保護する観点から十分に意識するということになるのでしょうが、貸す側にとっても刑事罰という重大な結果を招かないために、大事な知識になりますね。

それで、利息制限法に違反した場合に「契約全体が無効にならない」というのは、ヤミ金がお金を貸す場合とは違うということですよね。

千綿

はい。ヤミ金については、「契約全体が無効」という法律や判例があります。

貸金業法改正の中身 その2(総量規制)

池田

巷で、「これからは、年収の3分の1以上は借りられなくなるよ」とよく言われている、いわゆる総量規制の具体的な中身について聞いていきたいと思います。

そもそも総量規制をする前提として、借り手の収入面の情報や、その人がどの業者からいくら位借りているのか、といった情報の調査や集約方法、そのような情報を取得する方法などが重要になると思いますが、具体的な規定や運用方法について説明してください。

千綿

はい。レジュメの6ページ以降が総量規制についての説明の箇所になっています。先程もご説明しましたが、総量規制というのは貸付の総量を年収の3分の1という形で規制するわけですけど、その前提として貸金業者さんの方に調査の義務を課す。そして調査をして、総量に規制が掛かるということになります。

調査義務に関して、もう少し詳しく説明するために、レジュメの6ページの楕円形の3つの円を書いています。1番真ん中が源泉徴収票とかそういう支払い原資となる所得の資料をきちんと取得しなさいというのが義務ですね。ここは要件が50万円以上とか100万円以上とかいうことで、かかってきますが、これが1点目。

それから2つ目に、個人顧客等については指定信用情報機関の情報を得なさいよ、というのが義務として課せられます。

それから、一般的な調査義務としては、返済能力については調査して、注意して貸しなさいよ、というのは、実はこの規定は10年前からありました。 以上のような3段階の調査義務が課せられます。

池田

総量規制の問題と離れて、もともと借り手の返済能力は重要な問題であることから、今回の抜本改正以前から、一般的な調査義務は課されていたというわけですね。

千綿

そうですね。これは割賦販売法にも昨年入っていたんですけど、やはり多重債務問題で無理して借りてしまって、家族や親戚に迷惑をかけるというような状況もあって、ある程度返済能力や返済原資については少し差し出がましいかもしれないけれど、業者の方からきちんと調査しなさいよ、という風に今はなっているわけですね。

池田

しかし、現実問題として、日常数多くの貸付業務を行う過程において、本当に業者の方が調査義務を履行しているのか疑問がありますね。

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千綿

元々信用情報はあったわけで、株式会社として貸金業者系の信用情報機関、銀行系、信販会社系ということで、何社か信用情報があります。貸金業者の方はそれを利用して貸していたわけです。今までそれは、自分の貸したお金が貸し倒れになるのを防ぐ為に、自分達の為に信用情報を使っていたわけですけれど、今回の法律は更に踏み込んで、これを義務にしてきちんと調査して調べて貸しなさい、という風にしたという所がポイントかなと思います。

池田

改正法のもとでは、貸金業者の調査義務の位置づけというか性格に変化が出てくるわけですね。そのような調査義務の位置づけ・性格の変化に応じて、信用情報機関の位置づけも、今回の改正法の中では変わったと考えて良いでしょうか?

千綿

そうですね。前は任意の制度、法律上の制度ではなかったんですが、今回は貸金業法にきちんと明記して、指定信用情報機関ということで、内閣総理大臣の許可を得た機関ということで明記されたということになります。

池田

今の所、内閣総理大臣の指定を受けている指定信用情報機関は2社ですか?

千綿

私はちょっと最新の情報は得ていないんですが、私は2社ということで聞いております。

池田

指定信用情報機関に集約される情報は、貸金業者からの借入に関するものだけなのか、それにとどまらず、あらゆる負債に関するものも入るのか、この辺はお分かりになりますか?

千綿

加盟店というか、登録しないといけませんので、そこからの情報は勿論上がってくるわけです。それから、先程3つの楕円形で言いましたが、真ん中の源泉徴収票とかの取得義務というのは、貸付業者さんに課せられている義務ですから、それは貸金業者さん自らが負っている義務です。

指定信用情報機関の情報としては、私も法律が改正されてからのものは見たことがないんですが、その前のものは見たことがありますが、残高がいくらとか日付がどうとか、皆さん今日は事業者さんが来られているので、お詳しいかと思いますが、そういうのが情報として出てくるんですね。

池田

元々過剰貸付は一般的には禁止されていたはずですが、今回新たに禁止された過剰貸付について説明していただけますでしょうか?

千綿

はい。6ページの丁度真ん中を見てください。個人過剰貸付契約の禁止、法13条の2、第一項、第二項と書いてあります。これがいわゆる総量規制で、今回完全施行の対象になったものです。 ここに書いてありますが、個人貸付、個人の債務者に対する貸付が対象となってくるということです。簡単に言うと年収の3分の1を超える貸付は禁止された、というのが原則です。

池田

今言われたように、対象は個人であって、法人向けの貸付は総量規制の対象外ということになるんですか?

千綿

そうです。

池田

複数の貸金業者から借りている方も多いと思いますが、これは1社からの借入が年収の3分の1を超えるかどうか、それとも全ての借入を合算してそれが年収の3分の1以上かどうかについてはどうですか?

千綿

これは合算になります。だから、1社で年収の3分の1を超えなければ良いということでは無くて、先程から説明している信用情報機関の情報を得たうえで、複数の貸付があれば、そのトータルで年収の3分の1を超えてはいけないということになっているんです。

レジュメの10ページがちょっと字が小さくて大変申し訳ないんですけど、ここ10ページに色んなパターンを紹介しています。原則形態としては、左側の1番上ですね。A業者さんの新規貸付。これがまだ3分の1よりもかなり下です。B業者さんが追加で貸付してもまだ下。C業者さんが新規で貸付しようとした時に超えてしまった。こういう場合は、C業者さんの貸付が禁止の対象ということになります。

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池田

総量規制の判断基準となる「収入」と言っても、それぞれの方の職業や家庭によって違ってくる面があると思います。 給与所得者の場合は、給料額が収入という考え方でよいのでしょうが、事業者の場合は、総量規制の判断基準となる収入をどのように考えたらよいのですか?

千綿

事業者に対する事業資金貸付は総量規制の「例外」になっています。ただ、個人事業者さんが事業資金ではなくて、例えば子供さんの学費であるとかそういった生活資金を借入する場合は、これは総量規制の対象になるんです。少し分かりにくいですけど。その場合に、個人事業者さんの年収をどう見るかというのは、事業所得を見ることになります。

池田

レジュメの7ページにも書かれていますが、総量規制の判断基準として,なぜ収入の3分の1となったのか。別に、4分の1だって、5分の1だってよかったのではないかなどという指摘がありますが、3分の1という基準で規制がかかった立法理由はどういったことでしょうか?

千綿

ここのレジュメに書いていますが、立法担当者の本に書いてある表現を借りると、「平均的な消費者金融利用者層の返済力を踏まえて設定した」ということです。この本が解説しているのは大体年収600万円未満を念頭に置いて、そういう利用者の層が実収入から実支出を引いた額、返済に回せる額、返済金ですね、これが大体実収入の15%位であろうという風にみて、この15%を年利18%で返済期間3年位で借りると仮定した場合に、返済できる金額は年収の3分の1がぎりぎりであろうということで設定されたようです。

池田

しかし、日本は自由主義経済体制であり、貸す側と借りる側が合意すれば、年収の規制なんてかける必要がないのではないかという議論があり得ますね。総量規制は、借りる側の為に作られたものという前提ですが、現実問題として、生活のために緊急に資金を必要とする方もおられるわけで、そのような方の立場に立つと、年収の3分の1と規制されても困る、年収の3分の1を超えて借入をしても、自分は大丈夫だと言われる方もいるかもしれない。

逆に、貸す側の立場に立っても、ちゃんと返してもらえれば、3分の1という規制をかけなくてもいいんじゃないの、というような意見も出てきそうですよね。ある意味理念的な議論かもしれませんが、自由主義経済の中で、こういった規制が許されるものなのかという点については、どのように考えていけばよいのでしょうか?

千綿

おっしゃるとおりで、借りたい人と貸したい人がいて、両者が合致すれば貸していいのではないかというのが、資本主義、自由主義経済だろうと私も思います。ただ、今回この貸金業法を改正するに当たっては最初に申し上げましたけれども、自己破産件数も増えて、自殺者も増えて、しかも貧困を問題とする自殺者も増えて、借り過ぎている人が増えて、ヤミ金も増えて問題になっている情勢の中で出来ていて、これは、本当は返せない人には貸すべきではないのではないかというような価値判断があったようです。

ここは、色々喧々諤々の議論があって、「グレーゾーン撤廃は賛成するけれども、総量規制はやり過ぎじゃないか」と弁護士でも言っている人がいるように、色々な考え方があると思います。

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ただ、貸金業法の逐条解説本に書いてあるんですけれども、「制度改革を実施すると、副作用として信用収縮が生じてしまう。経済に対する悪影響を及ぼすのではないかと言われた。しかし、誤解を恐れずに言えば、一定の信用収縮は副作用ではなくて、元々今回の貸金業法改正の目的なんです。返せないなら借りてはいけない、返せないなら貸してはいけない。今回の貸金業法改正は貸し手に規制して、返せない人には貸せないようにする所に今目的があるんだと思います。ですからそこに一定の経済面の副作用があってもやむを得ないという価値判断があったんだ」ということで書かれています。

私も池田弁護士もそうだと思うんですが、実際に多重債務でお金を借りまくって、返せなくなっているのに、弁護士の所に早く来れば良いのになかなか来なくって、迷惑をかけられない、あるいは借りた金を返さなくてはいけない、ということで、朝から晩まで借金のことを考えて、自殺したり夜逃げしたりという所まで考えて、弁護士の所になかなか相談に来ない。酷い場合は、他の人の名前で借りる。あるいは、保証人を色んな人に頼んで借りまくる。もういよいよ本当に色んな人に迷惑をかけるような状態になって、本当に夜逃げとか自殺などしてしまったという事例も見てきています。

そういう債務者側に接してきた我々弁護士の現場の感覚からすると、返せない人には貸すべきではないという価値判断は一定程度説得力があるかなという風に思っております。この辺は色々ご意見があると思いますので、今日はみなさんの意見を聞いて、今後の参考にさせてもらいたいなと思います。

池田

そうですね。今日のセミナーにはいろいろな立場の方が来られていると思うので、ぜひ意見を聞かせていただければと思います。

確かに、弁護士として相談を受けると、既に奥さんは連帯保証人になっているうえに、親御さんも、さらには子どもさんまで連帯保証人、という方もおられますよね。そういう相談を受けると、もっと前に相談に来ていただければと思いますね。

しかし、日々の業務を遂行するだけで精一杯で、一歩踏み留まって自分の現在の売上げから色んな経費を差し引いて、どれだけ返済に回せるのかというのを冷静に見られない方って多いと思うんですよね。そういった意味では、どこかで何かの規制がないと、借りる側の方で自ら立ち止まるきっかけというのもないのかなと思いますね。今回の総量規制の立法化には、そういった現状認識もあるかもしれません。

さて、総量規制の関係でよく取り上げられるのは、じゃあ専業主婦が新たに借入をしようとする場合はどうなるの、ということです。確かに我々が多重債務の相談を受ける場合でも専業主婦の方が色んな所から借入をしているケースは多いですね。総量規制にあたっての収入という場合、当然その方自身の収入はないので、専業主婦はこれから一切借りられなくなるんじゃないの?という話もあるのですが、どうですか?

千綿

はい。専業主婦の方は、年収は基本的にはゼロですから、総量規制がもろにかかる。原則としては、3分の1の計算をするまでもなく、貸せないということになるんです。

それについて法律はどういう風な手立てをしているかと言いますと、この総量規制には例外がいくつかあります。専業主婦の方の事例でいうと、配偶者と合算して年収の3分の1以下の貸付であれば貸付可能ということになります。只これは、配偶者の同意があることが要件となっています。はたして配偶者の合意が得られない場合どうなるのか、そこら辺の議論もしていかないといけないかなと思います。

池田

たまにおられますよね。夫には内緒で借りましたとか、夫には黙っておいて下さい、とか言う方も。そういう方の場合、配偶者の同意という要件は厳しいですよね。

千綿

そうですね。そのような方のために、いわゆるセーフティネット貸付を充実させるべきということが言われています。これについては、後に詳しく説明します。

貸金業法改正の中身その3(総量規制の適用除外・例外)

池田

先程出てきました過剰貸付・総量規制の「適用除外」と「例外」なんですが、適用の対象外になるという風にアバウトにとらえると、両方一緒のように見えるんですけども、「適用除外」と「例外」とは違う点があるのですよね?これをちょっと簡単に見ていきたいと思うんですが、よく適用除外の例の中で住宅ローンは外れますよとか、自動車購入については対象外になりますよ、とか言われますけど、この「適用除外」の意味と「例外」の意味を説明していただけますか?

千綿

はい。「適用除外」というのが、住宅ローン、自動車の担保ローン、それから療養費。これは医療費関係ですね。どうしても治療費が必要で、という場合がやはりあると思います。そういう場合に手立てになります。この「適用除外」は、この総量規制の枠からも全く外して考えるということで、総量規制にも勿論引っかからないことになります。

こういう住宅ローンとか自動車担保ローンとか医療費貸付があった時に、他のB業者さんが貸付しようとする時に、この住宅ローンの金額は全く念頭に置かなくていいというのが適用除外の意味です。この住宅ローンを貸付する時に総量規制を考えなくていいという意味と、その住宅ローンを持っている債務者に別の業者さんが貸付する時に、住宅ローンの金額を考えなくていいんだよ、という2つの意味があります。

他方、「例外」の方は、配偶者の同意であるとか、個人事業者向けの事業資金とかいうのは例外になっているんですが、これについては当該配偶者の同意がある貸付をする時に、収入の3分の1を超えていても貸付出来るよ、という意味では総量規制の「例外」なんです。 ただ、例外による貸付をした後に別のB業者さん、C業者さんが新規の貸付をする時は、その例外による貸付の残高を見て、新規の貸付が年収の3分の1に収まるようにしないといけない。適用除外とはそこが違うわけです。ちょっと分かりにくいんですけど。分かります?

池田

「例外」として認められたからといって、じゃあまた新たに別の借入れをしようとした場合に、「例外」として借入れた残高と、新規の借入残高が、年収の3分の1を超えないようにしなければならないということですよね。

千綿

そうです。

池田

他方、「適用除外」の場合は、年収の3分の1という総量規制から、全く除外して考えて良いということですね。

千綿

はい。

池田

「例外」の一つとして、「顧客に一方的に有利となる借換契約」というややわかりにくいものがあるんですけど、これはどんな契約のことなんでしょうか?

千綿

これは、おまとめローンも含めた借換契約で、複数の業者さんに月10万円の返済をしている。これを1社にまとめて、返済額を減らすとかいう契約があります。そういうのを念頭に置いておいて下さい。

これに関して補足説明しておきますと、おまとめローンに関しては、結構議論もありまして、そのおまとめする段階で、グレーゾーン金利が有効か無効かきちっと調べて、利息制限法の引き直し計算をしたうえで、残った負債額についてだけおまとめローンを貸付しないといけないのではないか、ということが言われています。これは前に金融庁自身も注意喚起しています。単に、月10万円の返済が7万円になればいいという問題ではないのです。しかし、今回の貸金業法改正に関しては、今の所は、利息制限法で引き直した後の借換でないと、総量規制の「例外」にはならない、というところまでは要求されていません。

池田

実際に相談を受けていても、「おまとめローンでそれまでの借金を整理したのですが、やはり払えなくて来ました」という方がおられて、そういう方々の話を聞いていると、利息制限法の引き直し計算をせずに、言われたままの金額でまとめてしまったという人もいますね。このおまとめローンが総量規制の「例外」に当たるためには、利息制限法による引き直し計算までは求められていないという解釈で良いですか?

千綿

現時点ではそうなっています。ただ日弁連は5月に意見書を出して、「ちゃんと引き直し計算の要求をすべきではないか」と言っていますので、まだ分かりませんが、今の所はそこまでは要求されていない。

「引き直し計算」ということについて説明しますと、グレーゾーン金利で貸付がなされている場合に、我々弁護士が債務整理で受けた時には、利息制限法の金利で過去にさかのぼって引き直します。かなり借入残高がガバっと減るんです。それで計算した結果払い過ぎているのが、今テレビのCMでありますけど、過払いになって、それを返してくださいって言える。 その計算を我々弁護士は「利息制限法で引き直し計算をする」とか、省略して「利限(りげん)引き直し」などと言います。

池田

今日この会場にお越しの借り手となる事業者さんには、是非その辺りの知識を持っておいて欲しいですよね。おまとめローンが世間一般で流布し過ぎていて、1つにまとめた方が金利負担が軽くなりそうだからと、安易に飛びつきたくなるのはわかりますが、おまとめローンを使おうと考えた段階で、いったんは法律専門家に相談して、具体的に利息制限法で引き直し計算したうえで、本当におまとめローンを使う必要性があるのか、月々の収入の中から返済していくすべはないのかを厳密に検討しないと、債権者の数が減っただけで、借入額にはたいした変化はないという状態になってしまい、実質的な問題解決に至らないということになりかねませんよね。

千綿

そうですね。私も経験があるんですけれども、これは平成18年の最高裁の判例が出る前は、まだグレーゾーン金利とかの報道も全然なくて、あまり市民に知られていなかった。そこで僕等弁護士が事件として債務整理を受ければ、引き直し計算をしていたんですけれども、ある債務者が借金苦で自殺されて、ご家族が相談に来られて、うちの方で債務整理を受けて計算をしたら、払い過ぎていたという事例もありました。

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あるいは、そこまで悲惨な事例ではなくても、おまとめローンをしてやはり払えなくなって、相談に来て、おまとめローンの段階で払い過ぎているんで、取り返せればいいのですが、もとの貸金業者にもう連絡がつかない。そのために払い過ぎていた分を取り戻せなかった。そういう事例もあるので、やはり返せなくなればその段階で一旦は、本当は色んな所の関連機関に相談してくれればなと思います。

借りる側の注意点・セーフティネット貸付など

池田

さて、今日は事業者の方にとってのポイントとなることも含めた講義ということで予定しているんですけれども、借りる側にとってのこれからの注意事項というか、気を付けておくべき点、あるいは実際に総量規制等がかかって借入れができなくなったらどうしたら良いのか、という不安をお持ちの方もいらっしゃると思うんですが、そういった点を聞かせていただけますか?

千綿

法人の事業者の方は先程も言ったように、総量規制の対象から元々外れていますし、個人事業者の場合は「事業資金の貸付」については総量規制の「例外」になりますから、総量規制のために「事業資金が借りられない」というのは、一応無いような手立てになっています。

ただ、総量規制で信用収縮と言いますか、借りたいのに貸してもらえないというような状況になって、その段階で弁護士に相談すればいいのになと思うんですが、なかなかそこまで踏み切れないですね。自分が今までずっと何年も、何十年も一から積上げて来た事業を再整理するというのは、本当に皆さん抵抗のあることだと思います。我々も事業者ですから、よく分かります。

ですから総量規制の例外の話も勿論大事ですし、あるいは保証協会、色々な資金繰り対策、不況対策の為に色んな制度がありますので、こういうのを一応皆さんに告知しておくべきだと思いましたので、資料を付けております。レジュメ11ページが景気対応緊急保証の創設ということで、中小企業庁の貸付です。これは、その時その時で金融安定化とか色んな保証制度がありますので、事業者の方は商工会議所とかにご相談になることが多いかと思いますが、利用されたらと思います。

それから大きいのが、レジュメの12ページですが、これは平成18年なんで少し古いんですけれども、信用保証協会の保証金融に関しては、昔は第三者保証人が要求されていましたが、平成18年の3月に中小企業庁が第三者保証人徴求禁止という方針を打ち出しましたので、この第三者保証人というのは、代表者以外の従業員であるとか親戚であるとかいった第三者保証人については、原則的にとらないようにするという方針を保証協会貸付については打ち出しましたから、この辺はもう少し告知した方がよいかと思います。

池田

よくセーフティーネットと一括りで言われることが多いのですが、その中にも、対象者や貸付機関によって、取扱いに違いがありますね。例えばグリーンコープふくおかでは、純粋な消費者として借入されている方を対象として、単に貸付をするだけではなく、弁護士による債務整理と関連させるとか、その後の返済がきちんとできているかを見定めつつ、生活面での立ち直りを支援するシステムになっていますね?

千綿

はい。「セーフティーネット貸付」というのを聞かれたことがあると思いますが、これは特に専業主婦の方とかの関係を説明した方がいいかなと思っていたので、資料を付けています。先程言いましたように専業主婦の方は年収がありませんから、総量規制にもろ引っかかるんですけれども、配偶者の同意があれば配偶者の年収の3分の1までは借りられます。

それで、例えばDV被害にあっていて、逃げなくてはいけない。とても同意なんて得られない。同意を得られるような夫婦関係であれば、話し合いで結構解決出来るんですが、それが出来ないから困っていらっしゃる方とかいますよね。私も何度かそういう方の相談を受けたことがあります。そういう方に対する手立てとして、セーフティーネット貸付ということで、公的な低利の貸付制度を充実させるべきだと言われています。グラミン銀行みたいな制度ですね。

そういうことで、平成18年以降制度が少しずつ拡充していっています。その一覧がレジュメの13ページに付いていまして、セーフティーネット貸付の鳥瞰図と書いてありますが、上が公的融資制度ですね。これは、役所が貸付ける制度で、1番大きいのが1番上の社会福祉協議会以外の窓口になる生活福祉資金貸付制度。これは1番上に住宅入居費と書いてありますが、例えば家をバタバタと追い出されるような状況で、敷金礼金がなくてホームレスにならなくてはいけない、というような時、敷金礼金、入居関係資金を貸してくれる。

それからその下が、福祉費資金。それから3つ目が教育資金ですね。これはお子さんの教育の関係です。それから、公的融資制度の上から4つ目の母子寡婦福祉資金ですね。これらの社会福祉協議会を窓口とする貸付が充実してきました。これらの貸付は、年利は0.5とか2%、3%ですね。それで、これが昨年の10月にかなり要件が緩和されて、昔は本当に利用者が少なかったんですけれど、今は大体そういうDV被害の奥さんとかが、役所の窓口に相談に行けば、この辺の制度を紹介しているような現状だと思います。保証人を不要としている場合もあります。以上が、公的な制度です。

その下に地域の取り組みで、福岡の関係でいうと、グリーンコープふくおか。これはいわゆる生協ですが、組合員ではない人も利用できるようになっています。相談、カウンセリング、必要な場合は貸付、というようなことをします。私自身もこれまでに破産した人、個人再生をした人で、以前家賃滞納をしていて払わなければいけない、という時に、グリーンコープの制度を利用したことがあります。

池田

総量規制の問題の所で「例外」の話があったんですが、個人事業者は例外に当たるから、戦々恐々としなくていいですよ、みたいな宣伝もあるんですが、実を言うと収入関係の書面を出す時に、確定申告書や公的な証明を求められますよね?この公のセミナーで言うのもなんですけど、現実の収支とは違うような確定申告書を作っている、はっきり言うと、あまり信用出来ない決算帳簿を作っている事業者さんもいると思うんです。そういう事業者さんの中には、そのような資料に基づいて収入の3分の1の制限で総量規制に引っかかるという人も出てきそうな気がするんですけれども。

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千綿

私もいい加減な申告を何回も見たことがありますが、銀行から借入する為に赤字なのに黒字の申告書を作る場合と、税金を少なくする為に黒字を粉飾する場合と2通りあるように思います。

特に問題があるのは、赤字なのに本当に無理して黒字の申告書を作って、なんとか頑張っている事業者さんがいらして、本当にお気持ちはよく分かるんですが、結構事業資金借入は保証人を付けないといけないことが多いんですね。サラリーマンとかが使っている消費者金融さんではほとんどないんですけれども、事業者の事業資金は、先程の保証協会のものは第三者保証人をとらないけれど、商工ローンとかの借入は結構保証人を要求されるんで、保証人を頼んで乗り切ろうとすればするほど負担が増えますので、「早く負債整理の相談に来ればいいのに」、と思うことが非常に多いです。

個人再生手続きは事業を継続しながら使えますので、勿論色々要件があって簡単には「誰もが簡単に使えます」とは言えませんけど、いったん相談に来ていただいて、考えてもらえたらなと思います。

池田

細かな例外規定に当たるかどうか、どうクリアするかという点については、そういう状況になったらいったん留まって、弁護士などの専門家の相談を受けてもらいたいですね。

千綿

そうですね。

貸金業法の動向

池田

最後になりますが、今回こういった形で改正法が完全施行されたんですけれども、今後の貸金業法の行方というか、動向として、どういったことが考えられるのか、少し簡単に現状等をお話しいただければと思います。

千綿

早速金融庁の方もその施行を踏まえた情勢を見る為のフォローアップチームを作っておりますので、ここでまた色々議論が続けられると思いますけど、やはり1番の問題はヤミ金です。総量規制がかることで借りられなくなって、ヤミ金に向かうのではないかということが言われています。そうなると、何の為に改正したのか?となりますから、これは非常に大事なことだと思います。

この関係で、ヤミ金の検挙状況のデータを8ページに付けています。ヤミ金は、かなり減っているのが現状だとは思います。ここの被害人員というのが、上から年次という所の下が検挙件数です。これはあまり変わっていません。警察が頑張って検挙していますので、平成15年くらいから変わっていません。被害人員の所が、平成15年くらいがピークでしたけれども、半分以下に減ってきています。僕等の感覚としても090金融が昔は至る所に看板を出していましたが、今はもう全く殆ど見なくなりましたから、その辺りは規制しているんだろうなと思います。

平成15年当時、福岡県警と弁護士会でヤミ金の協議会とかをしていました。福岡県警の前の道路に090の看板がワーっと立っていましたからね。県警の人も「あれはちょっと困るんですよね」とか言っていましたね。撤去するのも手続上どうかといろいろ考えたり悩んだりしていたみたいです。その頃は多かったですけれども、やはり取締が1番功を奏しているかなと思います。

そして、ヤミ金から借りて、前は民事不介入だからとかいうことで、警察の出動が110番をしても来てくれなかったりしたことがあるようなんですが、この当時にかなり議論をして、とりあえず民事だろうと何だろうと1回110番した人の所に行かないといけない、というルール化を警察はしているそうです。ですから、民事だろうと何だろうととにかく暴行、脅迫を受けているような時は、ちょっと悩むようなことでも110番すれば来てくれるということです。

池田

それとか、ヤミ金の口座の凍結とかも以前より大分違っていて、簡単に手続きをとれるということも今はありますよね?

千綿

はい。ヤミ金については、振込先の口座等が分かっているような場合は、その振込先の金融機関に口座を凍結してくれとファックスすれば、口座を凍結してもらえるということで、法律も出来ましたから、そういう対処法も出来て、減少傾向にあるとは思います。ただ、総量規制との関係でまだ予断を許さない状況だと思います。

まだ6月18日に施行されて、借りられなくなった人の相談がどの程度あるのか、はっきり言ってよく分かりません。この間の土曜日の弁護士会でも相談会を行ったのですが、「借りられなくなりました!」と相談者が来るような、駆け込み寺みたいにはなりませんでした。

私は、県の消費者センターの人とも市の消費者センターの人ともお話ししましたが、ちょっとまだ影響についてはよく分からないようです。ただこれからのことはまだ分かりません。特にこのレジュメにソフトヤミ金と書いておりますが、昔はトイチとかトゴとか、10日で1割、10日で5割とかいう無茶苦茶な、べらぼうな金利を取っていましたけれど、最近はそこまでいかない代わりに、年利が70%とか80%とか。まっとうな業者さんであれば貸さない利率なんですけれども、昔のヤミ金よりかなり低くしているヤミ金が増えているようです。

それから、クレジットカードの現金化とか言って、おもちゃみたいな物を買わせて、それを質屋的な形で買い取ったり、色んな脱法行為をして、先程も説明した出資法を超える利率をとっているようですので、その辺りは取り締まって貰う必要があります。

僕等弁護士が依頼を受けた場合は、ヤミ金でも必ず解決するよう努力します。ヤクザだから怖いとか思うかもしれませんが、今のヤミ金は僕等が電話をするだけで取り立てが無くなることが殆どです。勿論業者によるんですけれども、95%以上のヤミ金業者は電話をかけたら取り立てしなくなる。ヤミ金に対する借入資金というのは返さなくていいというような最高裁の判例も出ましたので、ほぼここで増えるというのは考えにくいだろうなとは思っていますけど、予断は許さないとは思っています。

池田

今回の総量規制とかで借りられなくなって、ヤミ金に手を出す人が増えるのではないかという批判的な意見もありますが、むしろ、ヤミ金そのものを撲滅していく実務や政策こそが大切であるということなのでしょうね。

千綿

そうですね。

池田

以上が、本日、大体予定していた内容です。改正法が完全施行されてまだ間もないので、これからどのような影響が出てくるのか未知数のところがありますが、具体的な中身を知らずに不安を抱くよりも、まずは改正法の正確な知識を持つことが、立場の違いを超えて全ての人にとって必要であろうという認識のもと、今日の企画となった次第です。 ご静聴、どうもありがとうございました。

千綿

インターネットを見られる方は、金融庁と貸金業法というようなキーワードで検索をかけたら、金融庁のホームページが出てきまして、そこに結構充実したQ&Aが載っています。今日は、あまり細かい所まで話をしても眠くなるだけなので、細かい解説はちょっと端折った所がありますけれども、非常にわかりやすいQ&Aが入っていますので、更に必要な方におかれては、金融庁のQ&Aをご参照下さい。

添付資料(印刷用にご利用ください)

chiwata100.jpg

千綿 俊一郎(ちわたしゅんいちろう)

弁護士





ikeda100.jpg

池田耕一郎(いけだこういちろう)

弁護士

日時・場所

2010年7月1日(木)
14:00~15:30
福岡商工会議所 502号室
博多区博多駅前2-9-28
TEL 092-441-2161

JR博多駅博多口より徒歩約10分
地下鉄祇園駅5番出口より徒歩約5分
有料の立体駐車場がございます。

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