「サービス残業問題と会社はどう戦うか!」(2010/3/18開催)
ある日突然やってくる、退職した労働者からの「サービス残業代」の請求・・・。
この問題に会社はどう対処すべきか、このような請求をされない為にはどんな事前対策が有効か。マクドナルド事件に見る管理監督者とは何かなど、労働問題の中でもサービス残業に的を絞って、企業が取るべき具体的な対策についてお話しをします。
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こんにちは。社会保険労務士の島村と申します、宜しくお願いします。今日は、今お話がありました通り、サービス残業の問題ですね。経営者の方々は、色々と頭の痛い問題だと思うんですけども、それについて、タイトルは会社はどう戦うべきかというようなお話ですから、今日は100%会社側の立場に立って、どういう形で労働者に対応していくべきか、あるいは行政に対して対応していくべきか、ということについてお話をしたいと思います。
今日集まっていらっしゃるのはほとんど経営者の方か、企業の人事とか、総務とか労務とか、そのへんをご担当なさっていらっしゃる方ばかりだと思いますので、実務の話を中心に今日はお話をしていくことにします。
法律の話は、出来るだけしません。ただこれを全然しないと、「今日の講師は適当なこと言うなー」と言われても困るので、少しだけします。ただ、皆さん方も当然日々の実務の中では、ご理解(なさっているの)だとは思うんですけども、法律というものはどうしても理想論になってしまうので、なかなか中小企業が法律通りに会社を経営していて、それで上手くいくかというと、やっぱりそれは難しいということですから、法律は法律としてで、実務ではこういうふうな形で活用されたらいかがでしょうか、というところでお話をすることにします。
今日は3月の年度末の大変お忙しいところだと思いますが、このタイミングでサービス残業のお話をするのは、恐らくこれからこの問題は多分大きくなるだろうなと(考えているからです)。
商工会議所の方で経営相談も担当しているんですけども、サービス残業に関するご相談はやっぱり多いですね。どうも相談を聞いていると弁護士さんと司法書士さんで煽っている方がいるみたいなんですね。サービス残業をさせられていませんか、それに対してお金を取れますよ、というようなことを、どうもやっている方がいるみたいなんです。
お聞きになったことが多分あると思うんですけど、サラ金の過払い金請求ってありますよね。払いすぎた金利を取り戻せるというやつです。テレビCMや新聞広告とかにずいぶん載っていますよね。
あれだけ資本投下して、何でそんな(事を)するのかなと、一回ちょっと弁護士に聞いたことがあるんですけど、一兆円産業なんだそうです。マーケットが一兆円あるんだそうです。弁護士と司法書士の独占業務なんです。一般の企業さんは当然することが出来ないというふうになっていて、弁護士と司法書士さんが一兆円マーケットで、あそこを一生懸命やっているんですね。ですからあれだけテレビCMや新聞広告等を出すことが出来るんだ、ということを聞いてたことがあります。
ところが、今年の6月に改正の貸金業法が完全に施行される、というふうになりまして、これからはいわゆるグレイゾーン金利の問題は新しくは発生しません。そうすると、それを専門にしていた専門家は新しいマーケットをどこかで見つけないといけないわけです。それで、どこに目を付けたかというと、どうもこのサービス残業に目を付けているみたいです。ですから、会社で働いていた間にさせられたサービス残業の請求は出来ますよ、というようなことがもう東京ではテレビCMになっているらしいです。あとは電車の中吊り広告とかにも出ているんだそうです。
実は福岡の方でも、昨日ちょっと弁護士さんとお話をしたんですけども、福岡県の弁護士会で、若手の弁護士が中心となって、労働問題専門の研究会が一つ出来たんだそうです。サービス残業の請求を、これからちょっと力を入れてやろうかというようなところで、どうも動き始めたみたいです。ですから多分これからは、もしもサービス残業をさせているのであれば、皆さん方の所に請求がきたり、もうすでに来ている所ももしかしたらあるかもしれませんけど、そういうような事になるであろうということでで、このタイミングでサービス残業のお話をしている訳です。
このサービス残業問題なんですけども、一番怖いのは、退職した後にやってくるというやつです。これがなにしろ一番怖いです。在職中だったら、まだこう色々、話合いとか交渉とか、そういうようなことで解決をすることは可能なんですね。やり方としてはあんまり良くはないんですけども、在職中であれば、話が出来ますから、じゃあ今後の検討課題にしようか、みたいな形で、先送りをするということも、やろうと思えば出来なくはないんです。
ところが退職をしてしまうと、大体のパターンでいうと、いきなり内容証明郵便が来ます。その中に、「サービス残業代200万払え。1週間以内に払わないと、法的措置を取ります」という書類が来るだけです。後は、もう携帯電話にも出ません。そんなパターンは沢山あります。何故かというと、辞めているからなんですね。もう退職しているので、社長のことも怖くないんですね。もう本人さんとしてはやる気満々なわけです。、一般的には、もう電話にも出ない、交渉にも一切応じない、もう払うか喧嘩するかどっちかというようなやり方をするんです。だからやっぱりこれは問題なんですね。

ちょっとレジュメを見ていただきたいんですけど、レジュメの頭の所に、サービス残業の請求に関して、これが問題だという所。一番頭の①番ですね、退職後であるケースが圧倒的に多い。もう実務的には、ほとんど退職後だと思います。在職中に請求してくるケースはまずありません。
労使のトラブルというのは、在職中の労働者が、現在または将来の不利益あるいは不合理、この解消を求めて起こるのが一般的で、今まではもう殆どこれでした。労働組合なんかの紛争を見ていただくと大体分かるんですけれど、もう殆ど労働者という地位でもって会社側と交渉するとか、そういうのが一般的なんですけど、サービス残業のケースは、在職中は「サービス残業じゃないんでしょうか、ちょっとお金出してもらえないでしょうか」というような、せいぜい交渉の世界です。
多くは退職後にやってきます。在職中にするのは、大体の人がやるのはタイムカードのコピーですね、証拠集めです。それからもう一つは、従業員の人は、「就業規則を見せてくれませんか」と言い出します。これを言い出したら注意をしないといけません。
何故かと言いますと、我々や、行政機関なんかもそうですけど、労働者からのご相談をお受けすることもあるんですね。労働者からのご相談を専門に受けている労務士や弁護士が大抵一番最初に何を言うかというと、まず就業規則を見なさいと言います。これは我々も必ず言います。
就業規則を見て、残業の所がどうなっているか一回確認をしなさいと。色んな仕組みをとっている企業さんも当然あるので、そこを一回確認した上で、もう一回相談に来なさい、というふうなお話を必ずします。ですから、従業員の人が「ちょっと一回就業規則を見たいんですけど」、というふうなことを言い出すと、何かちょっと問題を抱えているんだろうな、そのうち何か言ってくるだろうな、というようなことはちょっと注意しなくてはいけないと思います。
就業規則をコピーしたり、タイムカードをコピーしたりして、請求は退職後にまとめてくるというのが大体のパターンです。ですから、ここにちょっとあるんですけど、ちょっとあちこち飛んでいますけれど、揉めて辞めた時、労働者と揉めた結果、辞めたというような時には、やっぱりこれは要注意だと思います。
逆の言い方をすると、円満退職で、気持ち良く辞めてもらうというケースでは退職した時に社長さんがちょっと肩でも叩いて、「新しい会社にはいったんやったら、新しい会社のパンフレットを持ってこんね。うちの方でなにか買えるものがあったら買うよ」とかですね、何かそういうようなことをちょっと言ったりすると、この問題はかなり解決出来るのかなと思います。
ですから、労働者と揉めて辞めたというようなケースだと、やっぱり会社側はちょっと心配はしないといけないでしょうね。サービス残業の請求というのは、もしかしたら揉めて辞めると、それだけであるのかな、という気はします。
レジュメの②番の所ですけど、退職後に言ってくるというのは、時効の問題があるんです。これは労働基準法という法律がありまして、多分経営陣の方は大嫌いな法律だと思うんですけれども、この労働基準法で、賃金の請求権については2年間ありますと、いうふうに法律で決められているんです。
ですから、極端に言ってしまうと、退職してすぐに請求すれば、2年分をまとめて請求することは出来るという言い方になるんです。2年分でまとめて請求されると、実務的には200~300万くらいがボリュームゾーンになるでしょうね。この辺がやっぱり一番請求としては多い。このくらいだったら請求しても価値があるというようなところ、弁護士費用は払ってでもこれはやれるな、というところだと思うんですね。
200~300万というのは、1日大体2時間くらいルーチンで残業があると、月間では大体50時間くらいということになると思うんです。そうすると、1年間だと大体600時間くらいですね。2年分まとめてくると1,200時間くらいになります。
ご存知だと思いますけれど、残業代については1.25倍で払いなさいというふうになりますから、その人の時間単価で考えると、1,200時間分というのは1,500時間分に相当するんですね、単価ということで考えると。そうすると1,500時間分の仕事量のお金をくれと言っているわけですから、月間の労働時間が大体150~160時間が多分所定労働時間になるんじゃないかなと思いますから、1,500時間というと、ほぼ10ヶ月分くらいの給料という考え方に、恐らくなるでしょう。そうすると10ヶ月分ですから、大卒の初任給で約20万円でしょうから、10ヶ月分だと200万円くらいになるんですよね。もう少し上の人たちだと、300万円とか400万円とかというような金額になることも十分あり得ます。
ですから、残業代の請求については、辞めても2年間は出来るということですから、この辺はやっぱり気をつけないといけないところです。
3番目ですけれど、仮に裁判になった時にですが、いきなり裁判には多分ならないと思います。まずは1度請求するというような行為が前提になりますから、1回請求をしてきて、それから労働者が話合いに応じてくれれば、「満額は難しいので、ちょっと減額で了承してもらえないだろうか」とかいうようなことも出来ると思います。
仮に話合いにも全然乗りません、携帯電話にも出ません、もう払わないんだったら裁判でいいですというふうな労働者の場合には、裁判になりますと倍払いになります。これは悪質なケースに限るということなんですけれど、会社側に過失があるような場合ですね。会社側に過失があって裁判になりますと、これもやっぱり皆さん方の嫌いな労働基準法なんですけれど、残業代を支払わなかった使用者に対しては、裁判所が未払いの残業代を払えと当然言います。
それに加えて、同一額の付加金と言うんですけど、同一額のお金を上乗せにして払いなさいというような命令を出すことが出来るというふうになっています。ですから、未払いの残業代に加えて同一額の付加金ですから、結果としては倍払いというような形になってしまうわけです。だから裁判になると、会社側に過失があれば非常に厳しいことになりますね。1人だったらいいのですが、2~3人まとめて喧嘩して辞めたり、あまり皆さん方の企業でおやりになることは勧めませんが、仕方なくリストラというような事もすることは当然あり得ると思うんです。そういう時に労働者が何人かまとめて辞めたりすると、まとめて言ってくるようなケースもあります。
うちで今対応している案件では、5人の労働者が一気に辞めまして、5人が全員まとめて請求をしてきたというケースがあります。そこはちょっと比較的給料が低いのと、2年間働いていた社員が2人くらいしかいなくて、後は1年足らずで辞めているので、金額的には200~300万円の人が2人と、残りが100万円とか80万円とかそのくらいの金額なんですけど、それでも合計すると400~500万円くらいの金額になってしまいます。
仮に裁判になると1,000万円くらいになるかなというような、非常にあまりよろしくないケースなので、うちの方でお話をして、今和解しようとしています。少しずつ、一気に5人来ると大騒ぎになるので、1人ずつお呼び出しをしまして、「この会社は、こんなには払えないので・・・」と、少し泣きながら経営者の方にも頭を下げてもらいながら、少しずつ減額交渉をしています。
多分3人は減額に応じると思うんですけど、5人のうち1人が非常に強硬なので、ひょっとしたら訴訟になる可能性はあるかな、というふうに今は思っているところです。
ですから、サービス残業の請求に関しては、退職後に2年分をまとめて請求されて、場合によっては裁判になって、そうなると倍返しというような話になるので、経営にとっては非常に頭の痛い問題だなというふうに思います。
レジュメの2番目ですけど、この問題が割とこうやって注目されるようになったのは、やっぱりマクドナルド事件だろうなと思います。マクドナルド事件以前にも色々とサービス残業の請求というのは随分ありまして、行政側が割とこれについては一生懸命摘発をしていたということもありました。
福岡でも、何とか銀行さんとかホームセンターの何とかさんとか、そういうところに監督署が入って摘発をしたとか随分新聞にも載りまして、労働者とか行政側については割と前から関心は高かったんです。しかし、経営者の方々は今まではそれ程危機感はなかったと思います。そういう摘発があちこちでされてるね、というような感覚だったんじゃないかなと思います。
マクドナルド事件が注目されるようになって、これで経営者の方々も、もしかしたらうちも来るかもしれんな、来たらえらい目に遭うなと、ようやく危機意識をお持ちになられたような感じ、感想を持ちます。
ただ、マクドナルド事件には非常に誤解がありまして、一般的に管理職にも残業代がいるんだと経営者の方が仮に思われたのであれば、それは間違いです。管理職には原則的に残業代はいらないというのが、元々のルールです。これは間違いがありません。
一般的に経営者の方の誤解の一つに、管理職にも残業代がいる、というような誤解があるんですけども、それは誤解です。
何故かというと、労働基準法です。経営者の方が大嫌いな労働基準法もたまには良いことを言いまして、レジメにあるように、「監督または管理の地位にあるものは、労働基準法の1日8時間を超えた労働に対する残業代の支払いなどに関する規定は適応しない」となっています。
労働基準法の41条というのは、我々にとっては非常に有名な条文なんです。監督または管理の地位にあるものはというのを41条該当者とか、管理監督者というような言い方をするんですけど、法律の条文が言いたいことは、管理監督者については8時間を超えて働かせても残業代はいらんよ、というような事が言いたいということです。
これは労働基準法の条文にそういうふうに書いてあるわけですから、つまり残業代はいらないということです。だから管理監督者、管理職にも残業代がいるというのは誤解だと思ってください。
そうするとマクドナルド事件の場合には、どうだったのかと言うと、マクドナルドとしては、店長さんはここで言うところの管理監督者です。だから残業代は払っていない、というのが言い分なんです。労働者側の店長さんの言い分は何かというと、「私は管理監督者ではありません。だから41条とは関係がなく、残業代を貰う権利があるんです」、これが労働者側の言い分なんです。
ですから管理監督者を巡る争いというのは、マクドナルドの店長が管理監督者に当たるかどうかという争いであって、管理監督者に当たるのであれば、そもそも残業代はいらないということです。管理監督者であるのか、それとも一般の労働者であるのかというのがマクドナルド事件の争いのポイントです。ですから、管理職に残業代がいらないというのはまず前提だというふうにご理解いただいて構いません。その上で、管理職とは何ぞやというような話が、マクドナルド事件の話なんです。
その下の①番にあるんですけど、これで、マクドナルドのあの店長さんは管理職ではありません、という事になりましたよね。結果として残業代は払ってくださいと、一審で判決が出ました。最終的には和解しましたから、管理監督者に当たるかどうかという最終的な判断は出ていないんですけど、1審ではとりあえず労働者側の勝ちでした。ただし、それはあくまでも今回のケースに関してだけということです。判決を普遍的なルールだと思っては駄目ですよ、という話が1番目です。
ですから①番は、判例はあくまでも個別具体的な事案に対する回答です。ですから、普遍的なルールではないという事です。今回のマクドナルド事件の場合には、マクドナルドの、あのお店の、あの店長さんは管理職ではありません、という事だけです。ですから、マクドナルドの他のお店の店長さんはどうであるとか、ロッテリアの店長さんはどうであるとか、皆さん方の会社の管理職の方がどうであるとかというのは、それは分かりません。まだ答えが出ていないからです。それを普遍的なルールだというふうに捉えると、それは経営者の方が大変になるんですけれども、基本的には、あのお店の、あの店長さんだけが管理職ではなかったという事だけに過ぎません。ですから全ての管理監督者が、みなし管理職、名ばかり管理職であるというような事にはならないわけです。
②番にあるんですけども、あれは結局、裁判によって労働者の主張が認められたケースですよ。裁判によって労働者の主張が認められたというのは、逆に言いますと、裁判以外では、会社の主張が通っていたということです。労働者も、いきなり裁判はしません。あの人は、しかも在職中ですからね。在職中で裁判をするというのはかなり、かなりレアなケースです。あまりありません。

恐らく、まず、最初にやったのは個別交渉だと思います。会社側に就業規則を見ながら、私はこんなに働いているので、残業代を下さいよという話を多分したと思います。会社側も就業規則を見ながら、あるいは労働基準法の41条を見ながら、「いや店長は管理職だから、うちは残業代を払わないよ」というふうに言ったんだと思います。
労働者はそれで納得しませんでした。それでどうしたかというと、多分労働基準監督署、行政機関ですね、そこに相談に行ったと思います。一般的に残業代の未払いについても必ず労働基準監督署に相談に行くので、多分労働基準監督署に相談に行ったんだと思います。そうすると、マクドナルドの方も多分呼び出されたと思います。監督署に来て、就業規則を持ってきて、というふうに多分言われたと思います。それで就業規則を見せまして、「いや、店長は管理監督者です。だからうちは残業代払わないんです」と主張したと思います。
監督署としては、もうそれ以上は手が出せません。それはもう労働基準法という法律の中に、管理監督者には残業代は払わなくていいというふうに書いてあって、監督署は労働基準法を実際に運営している所だからです。基準法に書いてある以上、それを曲げてまでやることは出来ないわけです。ですから監督署のレベルでは、労働者の主張は通らないわけです。
恐らく、マクドナルドに労働組合あるかどうか私は知らないんですけれど、もし仮に労働組合があれば、労働組合とも多分お話をしたでしょうね。それで、労働組合の方から交渉をしたかもしれません。でも労働組合と交渉をしたとしても、労働基準法という法律の方が大きいわけですから、そうなるとそこから先には行かないんですね。やっぱり会社側の主張がそこは通ってしまうという話になるわけです。でも、とうとうやることがなくて、裁判以外にはもう手がないということで、裁判にしたというケースです。
ですから、裁判になるまでは、かなり長い長い道のりがあって、それなりの苦労をしているわけですよね。それでもやっぱり労働者の主張が通らないので、ようやく初めて裁判というような手段に訴えたということです。もう最終手段ですあれは。このように労働基準法の中に、管理監督者については残業代はいりませんという規定があって、管理監督者であるか否かというのがはっきりしないような問題。何をもって管理監督者と言うのかというのが、法律の中に書いていない問題。こういう問題のことを、③番にあるんですけど、民事の問題というふうに呼びます。
ここではグレーゾーンという言い方をしていますけども、所謂サラ金のグレーゾーン金利みたいな、悪い意味のグレーゾーンではありません。会社の制度設計によって、白にも黒にもなるという意味でグレーゾーンという言い方をしています。ですから、ここにもある通り、会社の方ではきちんと正当性が主張できるような制度を作りなさい、ということです。そこで白ですよ、というようなことをはっきり主張しなさいということですね。これが大事なんです。
だからマクドナルド事件の場合には会社として、労働者に主張をして、労働基準監督署にも主張をして、それなりの制度だっただろうと思います。ですから、労働者側の言い分が通らなかったんですね。会社側の言い分がずっと通っていたということになるわけです。ですから、こういうような所謂グレーゾーンの問題、民事の問題ですね、これについては正当性を主張できる制度設計をいかに作っていくかというところ、法律の知識を使いながら、いかにこの制度設計を使って納得性を高めていくかというところ、これが重要だということです。
ちょっとその下にあるんですけれど、労働者、(これが)一番最初に主張する相手です。会社側としては、まず労働者に主張しますね。制度を説明して、「こういうふうになってるので、あなたは管理監督者だから、残業代は払いません」というような説明をするわけです。
そこで労働者が仮に納得をしなければ、今度は行政機関に行くでしょうから、そうすると行政機関に対して説明をするわけです。「うちの会社はこういう制度になっています。だから店長には残業代は払わないんです」、という説明をするということになるわけです。それで納得しなければ、マクドナルド事件のように裁判になるわけですね。裁判になったところで、主張すればいいという話なんです。
それは後ろめたいものを作れという意味ではなくて、きちんとしたものを作りなさい、ということ。きちんとしたものを作れば、どこに行ってもちゃんと説明は出来るわけですから、裁判所に対してだって、それをきちんと説明をすればいいということになるわけです。
裁判所に説明をして、勝てるかどうかというのは別の話です。それは、負けてしまうというような事ももちろんあるとは思うんですけども、ただ一つ言えるのは、何の制度もなければ、絶対に負けます。これはもう行政機関での説明時点で負けます。行政機関に行った時に、「おたくの制度はありませんね、じゃあ店長さんには残業代払わないといけませんね」というような話になって、それで終わりです。
ですから、きちんとした制度を作ることによって労働者、それから行政機関、裁判所、これに説明が出来ることが重要です。ですからこの制度については、いかに納得が得られやすい仕組みを作るかだろうなと思います。
納得性の問題で言うと、一応行政機関とか裁判所とか、気を使ってレジュメの中には書いていますけど、私の感覚では本当はこれはどうでもいいです。行政機関とか裁判所とかは所詮役人なので、役人は経営が分かりませんから、ここはどうでもよくて、一番肝心なのはやっぱり労働者だろうと思います。労働者がいかに納得が出来る仕組みか、会社として正々堂々とどれだけ説明が出来る仕組みか、これが一番重要なところだと思います。
ですから、労働者が納得出来ないような、客観的に見てもそんなの無茶苦茶やんというような、そういう仕組みを作ったら、もうそれは意味がないですね。それは我々の所にもよく、色んなサービス残業に関するご相談はありまして、「とにかく1円も払いたくない、とにかく何でもいいけん作っちゃってん。絶対払わんでいいようなやり方しちゃってん」と言われることはもちろんあります。
我々も素人ではありません、専門家ですから、やろうと思えば出来なくはないかなと思います。かなり法律を研究して、かなり文言を捻くって、かなり色んなやり方をすると、残業代を絶対払わなくていい方法はあるだろうな、とは思います。やろうと思えば出来なくはないかな、と思います。ただ、意味がないですね。労働者が納得しないと、会社そのものがやっぱり上手くいきませんからね。ですから、無茶苦茶なやり方というのは私はあまり勧めません。無茶苦茶なやり方をしている労務士もいないとは言いませんけれど、あんまり宜しくはないかなとは思います。
皆様方も当然、労務士さん等とのお付き合いがもしかしたらあるかもしれませんが、相談をなさった時に、無茶苦茶な事をいうのは出来るだけやめて下さい。労働者の人がやっぱり納得が出来るようなものを作りたいんだ、という事をお話しされないと、後々やっぱり会社側が大変な目にあうと思います。
サービス残業とはあまり関係がないんですけど、実際に大変な目にあった話があります。、社会保険料をタダにする方法というのを売っている我々の同業者がいまして、セミナーなんかもやっているみたいです。私はそこの事務所の職員とちょっと知り合いで、どんなやり方をするのか1度聞いたことがあるんですけど、それを少しお話します。
今日のテーマとあまり関係ないんですけどね。どうするかというと、ペーパーカンパニーを1つ別に作るんだそうです。そして、労働者を全員そっちに転籍で出向させるんだそうです。籍を変えてしまうんです。給料はそのペーパーカンパニーの方から出します。そうすると、元々ある会社というのは従業員が全員退職したという形になるんですね。ペーパーカンパニーの方に移籍することになりますから。そうすると、元々あった会社というのは従業員が誰もいないので、そこは社会保険料は掛からないという話になるんだそうです。それはその通りですね、合法的だと思います。
もう一つのペーパーカンパニーの方はどうするかというと、そこはですね、会社全体として社会保険には加入しないんだそうです。これも、合法的にやろうと思えば実は出来なくはないんです。それで、給料はそっちのペーパーカンパニーの方から全額出します。ただし、ペーパーカンパニーの方は元々社会保険そのものを成立させない、というようなやり方をするんだそうです。
結果としては、元々の会社は社会保険を全員脱退する、新しい会社の方は社会保険がそもそも成立しないという形になるので、そうなると社会保険料が1円も掛かりません、というようなやり方なんだそうです。酷いですよね。無茶苦茶だと思いませんか?だって従業員の人にとっては、仕事はどうするかというと、元々の会社に戻すんだそうです。在籍で出向させるというやり方です。ただ、一回転籍でペーパーカンパニーに移しておいて、ペーパーカンパニーの方は在籍出向で元の会社に戻すというやり方をするんだそうです。
労働者にとっては何にも変わりません。今までと同じ所で同じ仕事をするんです。何が違うかというと、保険証がないんです。会社に取り上げられるんですね。みんなこっちに移籍して、こっちの会社は社会保険に加入していないので、全員保険証がありません、保険証は会社に返して下さいという形にするんだそうです。
それは労働者は納得しないですよね、やっぱり。保険証がないと不安ですから。ただ、労働者が納得するためにどういう話をするかというと、「これから、給料からは社会保険料の天引き分がなくなるとよ」と言うんです。「毎月何万円も取られてるでしょ?手取りが増えるよ」って言うんだそうです。
労働者は一瞬喜ぶんですね。「手取りが増えるらしい。社会保険なんか病院にかからなかったら別に大丈夫だし・・・」、というふうに思うんだそうです。労働者方もそれで一瞬喜ぶんですけど、病気になった時にやっぱり困るんですよね。今の世の中、保険証がないと病院に行けませんからね。国民健康保険の保険証がないために、病院に行けなくて死んだ人が、年間で50人だか60人だかいる、というようなことが新聞に載っていました。
だから慌てて、遡って国保に加入するんです。そうすると保険料がまとめ請求されるんです。国保の保険料って物凄く高くて、多分サラリーマンで所得がある人は、社会保険より国民健康保険の方が確実に高いと思います。倍くらいになるんじゃないですかね。それを何ヶ月分もまとめて請求してくることになるので、あとで物凄く大変な目にあうんですね。
これに加えて、国民年金も加入しないといけないですから、国民年金の保険料は別に払わなくてはいけないという事になるわけです。そうすると、労働者としては一瞬手取りは増えるんですけれど、結果としてはそこから国民健康保険の保険料だ、国民年金の保険料だ、と自分で手出しをしなくてはいけなくなります。そうなると、結果としては損するということになるんですよね。
ですから、この話を聞いた時、物凄いと思いました。これは無茶苦茶やな、と思いました。実際に労務士でもそういう事をやっている人もいるようですので、まあ、お勧めはしません。それは労働者が後で何か絶対に言ってきます。行政機関に全てのカラクリがばれれば、もう会社側は立ち行かなくなると思います。それはもう目的が不当ですからね。労働者を一回転籍させて、在籍でもう一回逆出向で戻すなんていうようなやり方が、正当性を主張できるわけがないので、そんなやり方をしたって絶対に意味がありません。
残業代のお話も同じなんです。どんなやり方だってそれは出来ると思うんですけれども、無茶苦茶なやり方をしたということであれば、絶対に上手くいかないだろうと思います。ですから、無茶苦茶なやり方ではなくて、やっぱり労働者にきちんと説明ができるような、それから納得性が得られやすいような仕組みをやっぱり作らなければいけない、という事だろうと思います。

レジュメの次のページですけれども、こういうご相談をお受けしていますと、よく聞く屁理屈があるんです。経営者の方は、残業の話になるとこれを必ずおっしゃるんです。特にサービス残業の請求がやってくると必ず言うんですけれど、一番よく言うのが①番ですね、社員が勝手に残業したというやつです。これ本当に経営者がよく言うんですね、「社員が勝手にやりました」。やりませんよ。それはあり得ないと思います。そもそも、社員の勝手を許しているんですか、という話に絶対になります。
逆に、社員が勝手に残業していて、それは別に放置しています、許していますというのであれば、じゃあ社員が早退した時に何て言いますか、という話になります。社員が勝手に早退しました、文句言わないんですか、という話になりますよね。あるいは9時始まりの会社で、お昼ご飯が終わったくらいの時間に社員が遅刻してやって来て、「いや~遅刻しちゃいました、勝手に」って言ったらそれは注意しまよね。ちゃんと「9時始まりだから9時には来なさい」って言いますよね。6時終わりの会社だったら、それは「6時までは働いてもらわんといかん」って当然言いますよね。会社の労務管理の問題としては社員の勝手は絶対許さないはずですよね。
そういう意味で言えば、社員が勝手に残業したというのは、勝手を許しているんですかという話になるわけです。では、遅刻とか早退とか欠勤とか全部許すんですね、というふうに必ず言われちゃうわけです。そんな経営は成り立ちませんからね。だから、社員が勝手に残業したという言い方は、それは無理だと思います。それはどこに行っても通りません。
いや、だから遅刻とか早退とかも勝手にさせていますと、堂々と言えるんだったらそれは通るかもしれませんけれど、それが言えない以上、勝手に残って残業したという話はなかなか出来ないだろうと思います。
それから2番目、これはよく言いますね、「残業時間の記録がない」。これは、①番の勝手に残業したという話よりもっと悪いです。勝手に残業したというのは、まだまだ労務管理の問題ですから、そこの会社ごとのスタイルの話になりますが、残業時間の記録がないというのは法律違反になります。
これも労働基準法ですね。労働基準法という法律の中で、会社は残業時間の記録を付けなさいと定めています。皆さん方の会社でも賃金台帳を作っていらっしゃると思うんですけれど、その賃金台帳の中に、残業時間の時間を書きなさい、というふうにちゃんと決められています。これは基準法の中にちゃんと書いてあります。
そうすると残業時間の記録がないというのは、うちの会社は労働基準法に違反していますと言っているのと同じなんですね。これは法律違反の問題になってしまうんです。労働基準法は強行法規ですから、違反するとペナルティーが付きます。民事の問題ではありません、刑事の話になります。
労働基準法で最も重たいペナルティーは懲役10年です。10年ですよ。この、残業時間の記録がないという話になると、それは懲役10年までにはなりませんけれど、罰金刑になりますね。罰金30万円になります。ただ、前科はつきます。ですから、労働基準法違反という形で前科がつくと送検されてしまいます。残業時間の記録がありませんというような事は、そもそも法律違反という話になるので、それは法律違反ですと言っているのと一緒なので、これも言い訳としては通らないだろうと思います。
それから3番目、「仕事が遅い、能率が悪い」。分からなくはないですね。これは人を使っていらっしゃる所は、どこも感覚としてお持ちかもしれませんね。従業員の仕事が遅いとか、能力が低いとか、ダラダラやっている、とかというようなこと、これは、私も確かに分からなくもないです。ただ、仕事が遅いとか従業員の能率が悪いというのは、経営上はマイナス要因になりますよね。会社としては、マイナス要因というのは改善していくのが経営者の義務です。そうしないと会社は経営出来ないですから。
だからどんな要素にしろ、マイナス要因があれば、それを改善するのが経営者のお仕事という考え方です。労働者のマイナス要因、例えば仕事が遅いとか、能率が悪いというふうなマイナス要因を、経営者はどうやって改善していくかというと、それは指導です。あるいは教育とか、訓練とか。そういう事で改善をしていくということになるわけです。ですから、例えば会社の中で従業員の仕事が遅い、あるいは能率が悪いというような時には、それはきちんと指導はしているんですか、教育や訓練はしているんですか、という話に必ずなります。全くやっていません、放置しています、ということになると、おたくの会社は経営のマイナス要因は改善しないんですね、それは経営者としての努力を怠っているんですね、というような話に、やっぱりこれはなってしまうわけです。
ですから、その次の※印のところですけれども、結果として、やっぱり労務管理というのは会社の責任なんです。勝手に残業したのであれば、それは許してはいけませんし、残業時間はきちんと記録を取らなければいけませんし、マイナス要因があればそれは改善していかなければいけない、というのがこれは会社の経営陣の仕事です。逆に言うと、その仕事はちゃんとやっています、会社としてはきちんと責任は果たしています、とやっているのであれば、それは堂々と主張できるだろうなと思います。
例えば、社員が勝手に残業したという話。これに関しては、勝手にしないようなルールを作ればいいんですね。うちの会社の、残業する時のルールはこうです。このルールに則って残業はやって下さい、というふうなルールをあらかじめ作っておいて、それをきちんと労働者に説明をしておくわけです。そうすると、そのルールに則らないでやっている残業は、それは勝手にやった残業ですよね。ですから会社の中できちんと、残業させる場合についてはルールを作るということ。これも制度設計の話になりますね。
それから2番目、残業時間の記録がないという話も一緒です。残業時間の記録を取るルールを作ればいいわけです。うちの会社の残業はこうやって記録をするんですよ、というルールをあらかじめ作っておいて、そのルールに則って記録を取っていけばいいわけです。その上で、会社の取ったルールと違う残業時間の記録が本人から出てきた時には、「それは違うでしょ」、というふうに言えるわけです。「うちの会社のルールはこうでしょ」、「うちの制度はこうでしょ」、と。ですから、それに則った形での残業時間をうちはちゃんとこうやって記録をしているんですよ、というふうに説明さえできれば、それに則らないものというのは、そんな記録はありませんよ、という話になるわけです。
同じく仕事が遅いとか、能率が悪いというようなところについても、やっぱり経営者としてはしっかり指導して、教育をして訓練をして、それでもどうしても仕事が遅い、能率が悪いというようなことであるのならば、それは処遇を見直せばいいんです。その人を降職とか降格をするとか、そういうような形にして処遇を見直す、というようなやり方を取ればいいだけなんです。
ですから、ここで屁理屈という言い方をしていますが、よく聞く経営者の言い訳というか、必ずこういう事を言われるので、それはどちらにしても通りません。ですから、きちんとした制度、ルール、これを作った上でこれを言ってください、ということです。
その次が4番目ですね、サービス残業問題に悩まない制度。ここからがちょっと具体的なお話になります。ではどういうふうな制度設計が会社としてはいいのか、というところなんですけど、一番いいやり方は、「何にもしない」でしょうね。全く何にもしない。もう労働者が残業と言ったら全部残業をつけて、タイムカードで1分単位で全額払うというようなやり方です。これは、絶対労働者の文句は出ないと思います。
ただ、それはもう別の話になります。放漫経営ですからね。それで人件費だけがばっと膨らんで、もしそこの会社が株式公開していたら、それは株主が文句言いますよね、「あんたの会社の人件費はなんだ」って。「こんなんで配当出来んやったら認められん」って絶対言いますよね。ですから、放漫経営も当然駄目です。きちんとしたルール・制度、それを作った上で、サービス残業の問題は解決していかなくてはいけないということです。
制度の導入例として、①番にあるんですけど、許可制です。厳格な許可制を導入するというやり方です。勝手にしても残業ではないというものですね。別紙を付けております。別紙の①番をちょっと見て下さい。右肩に別紙①と入っている資料です。
これは、全部、私の事務所で作っている就業規則の実例です。就業規則を例に挙げているのは、皆さん方が直感的に思っていらっしゃるより、就業規則は労働の世界ではものすごく重要なものだからです。

一般のイメージでは、「就業規則って何か作っとけばいいでしょ、雛形がネットでダウンロードも出来るでしょ」、というような感覚も多分あるんだと思います。そういう雛形はあんまり意味がないです。やっぱり会社の実情に応じて、例えばサービス残業で悩んでいらっしゃるということであれば、その実情に応じたものを作らないと何の意味もないですね。雛形はそんなところに気を使っていませんから、単純にお役所の言う通りに作っているだけなので、あんなものは100%労働者寄りのものです。そんなものを、うちの会社の就業規則だよと行政官庁に持っていったら、はい就業規則ですね、これは労働者の主張が通りますね、で終わってしまいます。そこはきちんと労働者に、あるいは行政機関なりに、きちんと説明ができるような就業規則じゃないと意味がないということです。
それから、就業規則を拝見すると、どこの会社も厳しめに作っているんですね。何々しなければいけない、このようなものは認めない、とか随分厳しく作っているんですけれども、就業規則は労働者側に、うちの会社の労務管理はこういうふうなルールなんです、というのを説明するものなんです。ですから、いわば社内向け、従業員向けの会社案内のパンフレットみたいなものなんです。労務管理とは何ぞや、うちの会社の制度とは何ぞやというのを、労働者に分かりやすい説明をしているものが就業規則なので、当然それについては理解をしてもらわなくてはいけないですし、出来れば納得をしてもらわなくてはいけないわけです。なので、やたら厳めしく作ったって読みませんよ、そんなもの。やっぱり、労働者に分かるように作るというのは重要だろうと思います。
就業規則、これは実際に私の事務所で作っているパターンなんですけれども、時間外と休日労働に関する規定です。ここの会社の場合は、たまたま第10条だったということですね。時間外及び休日勤務、第10条です。「会社は、所定の就業時間外、または所定休日において業務上必要が生じた場合は時間外労働及び休日労働(以下時間外労働等といいます)、これを命じることが出来ます。それから、社員は時間外労働等を命じられた場合には拒んではいけません」。どこの会社の就業規則にも多分ここは書いてあるだろうなと思います。会社が命令でやるんだよ、拒んではいけないんだよ、というふうな規定にしていると思います。
その他、従業員の厳密な許可制というのがその次の②番です。「社員は業務上必要があると判断した場合は、時間外労働等を行うことができます。ただし、時間外労働等は、業務上の必要性に基づいて行うものであり、第4項に規定するような目的を持って行う時間外労働等は業務上の必要性がないだけでなく、経営の健全性、業務効率、社員の健康状態などを大きく損なうものであり、労務管理上認めることはできません。したがって社員が自らの判断で時間外労働等を行おうとする場合には、この点に留意し、必ず上長に事前に申請をして、許可を得た上でやってください」と、かなり厳格な許可制というやり方にしています。
社員が自らやるのは構わないんだけれども、必ず上長に許可を受けてね、というような方法です。上長の義務というのがその次の③番です。「前項の規定により時間外労働等の申請を受けた上長は、内容を精査し、業務上の必要の範囲においてのみしか許可を与えてはいけません」、と記載されています。
ここで、チェックを二つかけるということですね。まず1つ目は、労働者が本当に業務上の必要性に基づいて、この時間外労働をやるんだということで、労働者自らがチェックするようになります。「こんな時間外労働は通らんもんな」と、無茶苦茶なやつは労働者が自らそこで撥ねてしまいますから、ここで1つチェックができるんですね。
さらに上長に書類が来た時には、上長がそこでもう1回チェックをするということになりますから、ここでダブルチェックがかかります。上長も残業代の請求がボンボン上がってくるようになると、「これは業務効率上マイナスやな、うちの課は残業代の請求がやたら今月上がりような」、というようなことを上長が自分で自覚するようになります。そうすると、「こういう命令を出すとまずいんやな」とか、「こういう仕事の段取りやったら残業代がどんどん上がっていくんやな」ということは、上長が自分で気がつくんです。そうすると命令系統を変えたり、仕事のやり方を変えたりするようになります。ここでもう一回チェックがかかるようになるんですね。
ですから、労働者の人が自ら一枚書類を書くというだけで結構大変なところに、更にそれを上長が見てチェックをして、「これ本当にいるとか」、というふうに上長が言うわけですから、そこでやっぱり労働者の人も、「残業(申請)は出せんな」、というふうに思うわけです。
ただ、許可しないというのは駄目ですよ。どんな残業だって、全部上長が弾くみたいなやり方ですね。それは当然駄目です。少なくとも上長が見て、「これはしゃーない、必要や」と思うような残業だったら、それは認めてあげないと駄目です。そうしないと、労働者は絶対に納得しませんからね。「結局弾かれるんなら出しても一緒やん」、という話になって、辞めた時に後でまとめて請求をするという話にどうせなります。「上長にこうやって出したんですけど、全部はねられたんです」、と労働者が言っちゃったらもう何にもなりませんからね。うちの会社は残業ゼロですって(言っても)、それはおかしいでしょという話になりますから、そんなのは駄目ですよ。必要の範囲ではちゃんと認めなければいけないということです。
どういうようなものが不要残業だと会社が考えているかというのが④番ですね、第4項です。「第2項に基づき、以下のような目的を持って時間外労働等を行い、または行おうとした社員は、本就業規則の規定によって懲戒の対象とします」と、結構厳しいですよね。ここまでやっているところは殆どないと思いますけど、うちはこういうような条文は入れるようにしています。これをすることで、無意味な残業をなくすという会社の姿勢というかスタイルですね、これをきちっと出すということです。
無意味な残業とは何かというと、まず無許可残業ですね。うちの会社はこういうルールなんです、というルールを作っているわけですから、上長の許可を得ずに行う時間外労働は、それはルール違反になりますからね。そんなものは駄目ですよという話。会社としては必要があれば認めるんだから、ちゃんと(申請を)出せという話です。
それから時間調整ですね。「電車の時間まで30分あるから・・・」、というやつです。「そしたら30分ぶん残業代稼ごうか」、というやつですね。時間調整。
それから3番目、上の人が帰らんと帰れんというやつですね。他の社員につき合うために、仕方なく残っているような人。課長が帰らんと永久に帰れないというような職場の風土ですね。そういうようなやつも認めませんということです。
それから4番目、時間外労働等を前提とした仕事配分によって行う時間外労働等。そもそも8時間で終わるというようなものを、1時間残業するつもりで仕事を配分するというようなやり方ですね。8時間で終わる部分を9時間やって、1時間分の残業代を稼ごうとするケースです。1時間は何をしているかというと、無駄な事をしてるわけです。そういうようなのも駄目ですね。手書きでもいいのに、わざわざテプラで作らんでええやんっていうようなやつですね。そのテプラの部分に関して1時間残業して、1時間分の残業代を払う。それは経営効率上マイナスですよね。手書きでいいところは手書きでいいんです。だからそこの部分をなくそうというのがこの4番です。それから仕事が遅い、能率が悪い、ですね。
5番目の、複数回指導、教育等を行っても仕事が遅いための時間外労働等。費用対効果などの話ですね。それからケアレスミス、これは注意を喚起するという目的です。ケアレスミスなどのために発生する時間外労働等。人間ですからケアレスミスするのはしょうがないんですね。ただ、ここで1回注意しておくと、それなりに労働者も注意するようになります。「ケアレスミスはやっぱりいかんな」、と気を付けるようになりますから、こういうことも入れておくということ。
その他、業務上の必要性なく行う時間外労働とか、上記に準ずる理由などによって行う時間外労働等、ということで、労働者と上長のダブルチェックをかけて、本当に必要なものを認める、それ以外のものは認めないというような許可制を作るということです。
それから、その次の割増賃金です。社員が前条第10条により、業務命令、または上長の許可を得たうえで、時間外労働等を行った場合には給与規定に基づいて、ちゃんと残業代はお支払いするんですと。ですから、会社の中できちんとルールを作って、そのルールに則った残業代については気持ち良く払いますということです。逆に言うと、きちんとしたルールに基づかないで、残業代やサービス残業だと言ってもそれはおかしいでしょう、というふうに労働者にご説明をされたらいかがでしょうか。これが就業規則の目的です。

その次の特別勤務は今の話とは全然関係がありません。宿日直勤務なので、ちょっと就業規則をそのまま持ってきただけなので関係がないと思ってください。レジュメに戻ります。
レジュメの真ん中あたりですかね、②番ですか、サービス残業に悩まない制度の②番。固定残業保障給というやつです。残業代を含んだ給与の規定を作ってしまうというやり方です。例えば、基本給20万円の場合。基本給20万円一本、あとは全部サービス残業というようなやり方、これは駄目ですからね。そうではなくて、この基本給20万円という仕組みを、基本給を16万円にします。これに残業保障給という形で4万5千円を別に付けるというやり方。合計して20万5千円にしています。昇給の時期にやるのが一番効果的だと思います。
皆さん方の会社も4月が多いですか、毎年4月の昇給の時期とかに給与規定全体を見直して、昇給と同時にやってしまうと労働者の納得性も得られやすいですね。20万5千円にしているのは、5千円昇給しているという意味です。
労働者にとっては、要は5千円給料が増えるということ。今までの20万円、あとは全部サービス残業というやつよりも、きちんと20万5千円という形で残業代を幾ら分含んでいますというような形をとることで、会社側としては昇給の部分で、費用負担は増えるんですけれども、労働者の納得性が得られやすいので、5千円上げるというようなやり方が私は有効かなと思います。そうすると、昇給の時期にやるのが一番タイミングがいいかなというような感じです。
この4万5千円の計算の仕方なんですけど、ここの括弧書きですね。残業保障給の4万5千円とは、基本給が16万円ですから、それを160で割るわけです。160って、大体一般的な会社で、完全週休2日制にされていらっしゃれば、大体月の労働時間の平均は160くらいに多分なるはずです。皆さん方の会社の就業規則なり給与規定なりをご覧になられて、1時間単価の計算の仕方というやつが多分載っていると思うんですけども、一般的にはやっぱり160くらいで割るケース、それから月の労働日数22で割って、1日の所定労働時間8で割って計算するというようケース。大体この辺が多いかなと思います。
ここはちょっと計算しやすいように160時間で割りまして、1時間単価を出します。残業代はさっきお話をした通り、1.25倍しないといけないようになっていますから、1.25倍します。4万5千円ですから、36時間を掛けます。これで4万5千円になります。つまり基本給16万円、プラス36時間分の残業代としてあらかじめ4万5千円を払いますということです。これは給与台帳上は別立てで計上します。
この給料の場合は、基本給は16万円、残業保障給36時間分4万5千円です。4万5千円という形で、きちんと別立てで計上して、給与明細にも別立てで表記します。そうすると、毎月の給料は36時間分の残業代を含んだものとして支給している、というような理屈になるわけです。
給与規定をちょっといじりましたので、総支給額をここの場合では5千円増やしています。5千円増やして、労働者に説明する時には、今まではサービス残業としてさせていた分については、会社としては改めて36時間分の残業代を含むというような形にします、昇給枠として5千円を付けます、というような説明を従業員にするということです。36時間を越えたらどうなるかというと、越えたらそれは許可制にしたらいいでしょうね。36時間を越える残業があるんだったら、厳格な許可制にしておいて、ちゃんと許可(申請を)出せよというような形でやるという方法、こういう事が考えられるだろうなと思います。
それから③番、いわゆる管理職、マクドナルドですね。一定の管理職には管理監督者、労働基準法の41条を使います。この条項がそもそも作られた目的は何かというと、まず管理監督者というのは、経営とか人事に少なくとも一部は参画しているものである、というのがそもそもの考え方です。ですから、例えばマクドナルドで言えば、店舗のバイトの人事権、こういうものを与えているかどうかがポイントです。
実はマクドナルドの場合は、店舗のバイトの人事権に関しては与えていたんですね。これに関しては、マクドナルドには1ポイントだったんです。会社側としてはちゃんと店舗の人事権は店長に与えています、という説明をしていました。
それから、例えば何とか課、人事課とか営業課とか、そういう課で欠員補充をする場合に、課長さんは面接に同席をしてくださいとか、課長さんと次長さんについては、一緒に面接をしてくださいとかいうふうにして、人事権の一部を与えてしまうというやり方です。
あと、会社の中での予算決定会議、これは人事というよりも経営でしょうね。経営の部分で、予算会議等に課長さんなんかを同席させるというようなやり方ですね。この辺が、経営とか人事への一部参画というものです。
他にはマクドナルドで、一番駄目だったのが2番目です。お金です。これがマクドナルドはもう最悪でした。何が駄目だったかというと、店長さんの1ヶ月の給料がありますよね。あの1ヶ月の給料を、その店長さんの1ヶ月の本当の労働時間、これで割って時給を出してみたら、あの店長さんはバイトよりも時給が低かったんです。これでは、会社の言い分は通らないですよ。時給400円の管理監督者なんてあり得ないですよ。
ですから実際に労働時間が、本当にマクドナルド事件のようにものすごく長いのであれば、それはそれなりの処遇をしないと、時給400円で管理職と言ったって労働者も納得しないでしょうし、私が聞いたって納得しませんよね。「それだったらバイトの方がましだよ」っていう話に絶対なりますよね。
ですから、実際に労働時間が本当に長いんだったら、それなりのお金は払わないといけないだろうなと思います。実際にそんなに労働時間が長くないようにするか、それなりのお金を払うかというのは、やっぱり必要だろうと思います。ここでは一定の手当て、それからボーナスですね、賞与。賞与の査定時期については、管理監督者に関しては給与面で優遇をしますよというようなやり方、ちょっと下駄を履かせてあげますよというようなやり方で少なくとも給与面についてはある程度の保障をしないといけないと思います。
だから頑張って下さいね、という話ですからね。労働者の給与が低いままで、「いやお前は管理職やけん時給は400円だよ」、みたいなことを言われたって、それはやっぱり難しいだろうと思います。
それか3番目ですけれど、労働時間について厳密な管理。これは基本的に管理監督者はやっちゃだめでしょうね。遅刻とか早退した時に、その分の給与はカットします。その代わり、いくら残業しても残業代は払いませんよっていう主張は、それは私は通らんと思います。ですから、厳密な労働時間の管理はやりません、それはあなたの責任の範囲の中で、自由にやって下さい、その代わり重たい責任がありますよ、結果として労働時間が長くなっちゃうことはありますよ、というのだったら通ると思うんですけどね。遅刻とか早退に関して厳しく言うのに、残業代は1円も出さん、それはもうずっと働け、みたいなことだったら、それはやっぱり話としては通らないだろうなと思います。
それから、一番下の問題ですね。極端に長時間労働をせざるを得ないような環境であれば、これは改善しなければだめですね。これはもうサービス残業とかそういう問題ではありません。別の問題が出てきます。後でこれは詳しくお話をします。ただ、この対策としてヒアリングなんかも有効ですから、実際にその管理監督者の人とお話をして、「労働時間ってどう?長時間になってるけど、きつくない?」、というような事はきちんとヒアリングをしてそれなりに改善をする、何とかするというようなことは必要です。これをやらないとサービス残業とか、この問題が小さくなる見えるような、もっともっと大きな問題が起こるだろうと思います。この問題についは後で詳しくお話をします。
実例をつけておりますので、別紙の②ですね。労働基準法41条2号、いわゆる管理監督者のことです。それからここの会社では、きちんと就業規則を作っておりまして、たまたまそれが26条だったんですけれど、就業規則の26条の中にきちんと管理監督者とはなんぞや、という考えをちゃんと入れておいて、管理監督者についてはこういう考えなんだから、労働時間の管理はやりません、だから残業代も払いません、というような規定はきちんと作っていました。
マクドナルド事件を知って、社長さんがちょっと怖がりまして、「これだけで大丈夫?」って言い出しました。「そうしたら、一回従業員と話合いばしましょう」ということで、従業員と話合いをしまして、「就業規則の中で管理監督者ってこういう考え方なんだけど、これについてもう一回話合いをして整理しよう」、ということで、従業員と話し合いをして整理しました。整理したものを協定書という形で文書にまとめました。これがいわゆる協定書です。管理監督者の範囲についての協定書です。
会社と社員は、標記の件について協議を行い、以下の内容で合意をしましたので、本合意を確実なものとするために協定を締結します、と記載されています。ここの会社の場合には、課長職以上の地位にあるものについては、労働基準法の41条に規定する管理監督者とします。就業規則書の26条に規定する管理監督者としますとあります。
第2条ですね、管理監督者は、自らの管掌する組織単位においては、経営層に準ずる権限を有するものとします。組織単位というのは、例えば課長さんであれば課ですね。これが組織単位になります。ですから店長さんであればお店でしょうね、それが組織単位になります。ですから自分が持っている組織単位、課長さんであれば課、店長さんであればお店、そこでは経営層に準ずる権限を有するものとします、ということできちんとした権限の付与をします。
その上で第3条、管理監督者は前条によって与えられた権限の範囲内において、重要な職務を行い、責任を有するものとします。ですから、与えるのは権限だけではなくて、責任も与えますよっていう意味です。これは権限の裏っていう意味ですよね。権限だけを与えるのではなくて、責任も同時に与えるということです。
その上で第4条ですね。会社は管理監督者に対し、前条の規定に基づく職務の遂行を要請します。その場合は、労働基準法及び就業規則に規定する労働時間、休憩、休日の規制を越える場合があります。だから会社としては、サービス残業をやれということを言いたいわけではありません。「あなたには権限があるんです、裏返しとして、責任もあるんです。その責任の中で仕事をした結果、労働時間が8時間を越えちゃうことはあるんです」、ということを言いたいわけです。ですからただ単純にサービス残業をやりなさいというような意味ではありませんし、そういうような考え方は元々ありません。サービス残業しなくても構いません。責任と権限の範囲で、8時間で終わるんだったらそれでもいいですということです。「少なくとも、自分の責任の範囲、権限の範囲の中で職務はやってくださいね。結果として(8時間を)越えてしまうことはあるんです」、というようなことを言いたかった、ということです。
それに対する代償が第5条ですね。会社は管理監督者に対し、前条に規定の代償として、賃金規定に定める管理職手当をちゃんと払います、ということ。さらに、賞与の査定についても、支給率などで考慮するものとします、ということで給与面についても処遇をするというふうにしています。以上、協定締結の証として本書2通を作成し、会社と社員はそれぞれ一通を持ちます、ということで会社の中にこれは保管をしておきます。
ですから、ここの会社の場合には、従業員と管理監督者とは何ぞやというようなことを話合いをして、それについてまとめたものです。だから、さっきの就業規則の例も全部一緒なんですけれど、これはあくまでもそこの会社のケースということです。

皆さん方の会社は皆さん方の会社で、それは事業の種類であるとか、規模であるとか、会社が抱えていらっしゃる問題点であるとか、色々なことによって作り方は沢山あるだろうなと思います。もちろん、これをそのまま使えるとか、これを応用できるというような場合には自由に使っていただいて構いません。応用して使ってください。考え方としては、1回話合いを従業員とされて、管理監督者とは何ぞやというようなことについて書面でまとめたということ。手法としてはそういう手法です。
ではちょっとレジュメの方に戻りまして、④番ですね。外回りの社員の人、下から5行目です。外回りの社員の人には、これも労働基準法の規定なんですけど、事業場外のみなし労働時間制という仕組みがあります。
事業場外のみなし労働時間制というのは、外回りの人は、会社で労働時間が管理出来ないので、その人は所定労働時間働いたものとみなします、というような規定です。これが労働基準法の中にありまして、そのままは使っていませんが、それを少し応用したものが別紙の③になります。
これも就業規則のパターンです。別紙の③ですね、第3章勤務、第6条。一日の所定就業時間と休憩時間は次の通りです。ここの会社の場合は、平日が9時半から5時半で、出勤土曜があるんです。月に一回かな、会議をやっていると言っていましたけど、出勤土曜日が9時半から3時までです。休憩がこんなふうになっています。
ここは広告代理店さんです。営業職に関する特例として、前条の規定に関わらず、営業職1および2、これはこの会社の規定です。1は全国転勤がある人。2は九州から動かない人だったか、何かそういうようなところです。営業職1および2に該当する一般社員、主任、課長については、主に事業所外において業務を行うため、会社の指揮監督は及ばず、労働時間を正確に算定することが出来ません。したがって、この場合は、所定労働時間と同じ時間、労働したものとみなします。
これは労働基準法の事業場外労働のみなし労働時間制というものの考え方とほとんど一緒です。ただ、事業場外のみなし労働時間制というのは、実はそもそも営業職などを想定しているものではなくて、社員の人が出張とかするような時に、会社に来ない、直行直帰っていうパターンですね。ああいうような場合の時を想定しているものなので、いわゆる営業職の人にそのまま使うには、私は無理があると思っています。
営業職の人だって朝一回会社に来るじゃないですか、普通。それで、仕事が終わったら1回会社に帰って来ますよね。それで日報とか書くじゃないですか。ですので、それを事業場外だというふうに、会社として言い切るのは、私はちょっと無理があるだろうなという感覚を実は持っているんです。ですからそのまま使っていません。
第2項ですね、前項の規定により業務を行う社員は、自らの労働時間数が所定労働時間と同じになるように、業務に支障のない範囲の中で随時休憩をとるなどして、時間調整を行うものとします。つまり、労働時間のマネージメントを自分でやってください、というようなことを言いたいわけです。労働基準法の場合には、8時間労働というのは実働のことを指します。休憩時間は労働時間にはカウントしません。
ですから、拘束時間がどんなに長かったとしても、休憩時間が多くて、実働の労働時間が8時間で収まるような時、実際に働いている時間が8時間で収まる時には、残業の問題は発生しないという考え方になっています。ですから、随時休憩を取って、その上で8時間ということを自分でセルフコントロールをしてください、社員教育をしっかりしてると、こういうような規定を設けたときに、「あーラッキーやな、仕事時間中にパチンコもできるやん」、というようなことにはやっぱりならないですね。それはやっぱり自分の仕事は一生懸命やりますし、ここにもありますけど、業務に支障のない範囲内において、というふうな言い方をしていますから。仕事の途中でパチンコをやる人は、どんなに厳しい規定を作ったってそれはやるでしょう、という話になるので、規定をつくってなくても同じなんです。
ですから、会社としての考え方では、業務に支障のない範囲においては、セルフコントロールを認めます、ということを言っているということです。
それから前項の規定による時間調整が業務の必要性から行えない場合も考慮し、調整出来なかった時間に相当する手当として、給与規定に定める外勤手当を支給します、ということで、やっぱり必ず時間調整が出来るとは限らないんですね。
仕事を沢山抱えていたら、休憩を取りたくても取れないことは当然あるわけですから、それに対する代償措置としては、外勤手当という名目で別に給料はちゃんと払うんです、これはセルフコントロールした結果、残業が発生した場合の代償措置です、ということです。
ですから、ここまで読みますと大体はお分かりだと思うんですけど、労働基準法を知っていらっしゃる方は、お気づきかと思いますが、これは事業場外労働のみなし労働時間制の規定を活用はしていますけれども、それをそのまま使っているということではありません。
それを使いながら、労働時間の管理を労働者側に委ねる、そのための手段として随時休憩を与えると(いうこと)。それでも随時休憩が取れない可能性も考慮して手当を払う、営業手当なり外勤手当なりを払う、というようなやり方をしているということです。
ではまた元のページに戻りまして、その他の規定ですね。一番最後のところ、下から2行目ですか、その他の規定として、⑤番ですね。変形労働時間制。これも労働基準法の中にあります。色々な単位の変形労働時間制というのがあって、その変形労働時間制などを上手く使って、実情に応じた制度設計です。
例えば例として挙げているのが、大体完全週休2日制で、祝日を全部休むと、多分年間休日が120日くらいになると思います。年間休日が120日あるのであれば、変形労働時間制という仕組みを導入すると、1日の所定労働時間を8.5時間にすることができます。
つまり、毎日30分間残業をさせたとしても、それは残業にはあたらないというやり方です。仕組みとしてどういうやり方を使うかというと、変形労働時間というのは、例えば年末年始とか、ゴールデンウィークとかにバッと休みを取りますよね。休みを取った分、その時間の労働時間が減るわけですから、減った労働時間を平日の方に少しずつ割り振って乗っけていくというようなやり方です。これを変形労働時間制というふうに呼びます。労働基準法を研究されるとよく分ります。変形労働時間制を使うと、凄くややこしいこと、ゴールデンウィークとかそういうのを計算しなくても、多分年間完全週休二日制をとっていらっしゃる企業は、多分120日間の所定休日があると思いますから、それで計算をすると、一日の労働時間を8時間30分まで規定をすることが出来るということです。30分は当然残業でもなんでもありません。所定労働時間の枠というやり方も出来なくはないということです。もっと休日があれば、年末年始とかゴールデンウィークとかに、もっとガバっと休ませるのであれば、もうちょっとこの労働時間を増やすことも可能です。
その他、色んな手法があります。みなし労働時間制については、専門業務型のみなし労働時間とか、それからホワイトカラーの仕事については企画業務型であるとかですね。色々な仕組みが確かにありますから、労働基準法は皆さん方あまりお好きではないのかもしれませんけど、きちんと研究をすると、それなりに会社に良いことも書いてあります。それをきちんと研究なさって、そこの会社の実情に合った、問題点を抱えていらっしゃるのであればその問題点が解決できるような、そして労働者にきちんと説明ができるような、納得が得られやすいような仕組み、これを是非色々と導入していただければなと思います。そうすればサービス残業の問題はかなり解消できるだろうと思います。
レジュメの次のページなんですけど、さっきから何度か、残業の問題で、サービス残業なんか小さな問題ですというお話をしているんですけど、一番大きな問題は5番目の過労死です。労働時間が長くなって、結果として労働者が過労死するというようなケースです。
こんなもの、サービス残業なんかのレベルではありません。会社はもっと大変な目にあいます。つい最近も、先月の2月でしたか、全紙に載りましたから、ご覧になった方も沢山いらっしゃると思うんですけれど、鹿児島のファミレスの店長さんのケースです。
店長さんが過重労働で、会社で倒れられまして、脳溢血を起こされまして、一命はとりとめましたが障害が残りました。ご家族が、お父さんとお母さんでしたか、裁判を起こしました。過重労働の結果、脳溢血になり、下手すれば過労死でした。会社側に問題があるんじゃないんですか、というところで訴えた事件です。
この事件は労働者側、お父さんとお母さん側が言った論点が2つあって、1つはサービス残業の問題です。名ばかり管理職の問題。この名ばかり管理職の問題に関しては、会社側の負けです。鹿児島地裁の一審なんですけど、これは会社側が負けという形になりました。残業代の請求としてやってきた金額は700万円です。
それからもう1つの問題は、管理職であるかどうかに関係なく、労働者が倒れるほど仕事をさせた会社に責任はないのかという問題です。これがもう1つの問題です。その問題に対する裁判所の回答は、会社に責任がありますね、ということです。これに対する賠償金額は1億8千万円です。サービス残業は700万です。700万と1億8千万、考えただけでも分りますね。もちろん金額の多寡ではないですけれど、問題としてどっちが大きいかということを考えると、過重労働の結果労働者が倒れてしまったら、それは会社のもの凄く重たい責任になます。
結果としてサービス残業代と、それ以外の部分ですね、管理職であるかどうかに関係なく過重労働をさせた責任の部分とで、合計で約1億9千万円。これに遅延利息が入りまして、金額は2億円を越えました。一審で会社側がこてんぱんにやられて負けまして、結果としては和解しましたけど、ほぼ裁判所の言い分通りです。もうこれは上に行ってもどうせ同じですからね。どうせ時間がかかるだけで、負けることは分っていますから。結果としては、会社は遅延利息も含めて2億円強のお金を、労働者とそのご家族に払って決着をした、というような事件です。
ですから残業問題で、本当に怖いのはやっぱりこっちの方です。過重労働の結果で、一番怖いのは過労死とかそういうような問題の方が遥かに怖いと思います。
この過労死の問題は非常に多くて、そこの①番にもあるんですけど、労災、労働災害ですね。これちゃんと認定基準とかが決められていまして、1ヶ月で残業が100時間を越えたら、あるいは100時間を越えないとしても、2ヶ月から6ヶ月の平均で、1ヶ月あたりが80時間を越えて、その結果、労働者が倒れたら、それは会社の責任ということです。
ものすごく分りやすいでしょう、100時間ですよ。タイムカードを計算したらすぐ分るということです。ですから否も応もないんですね。100時間を越えているでしょう、その結果労働者が倒れたら、はい賠償です、という話に結果としてはなってしまうということです。ですから、行政側でも裁判でも、一定の基準を作っています。100時間を越えたら駄目ですよ、それから2ヶ月から6ヶ月の平均で、80時間を越えたら駄目ですよ、というふうに線が出てきているわけですから、この線に抵触するようなことであれば、それはやっぱり会社としては、何とか対策をしないと駄目だっていうことです。それで倒れたら損害賠償を言ってきますからね。
②番ですね。過重労働の結果、労働者が死亡するというケースの他に、先ほどの鹿児島のファミレスの事件のようには障害が残ったケース、それからメンタルヘルス不全ですね。これもやっぱり多いです。過重労働の結果、精神的なプレッシャーでうつ病になってしまったというようなケースです。そうすると会社は民事上、損害賠償の責めを負うというふうになります。法律上は安全配慮義務というふうに呼びます。
労働契約法という法律の中で、会社は社員が仕事中に怪我や病気をしないように、きちんとした労務管理をしなさい、というふうに労働契約法の中にあります。結果、過重労働で労働者が倒れたら、それは安全配慮義務に反していますよね、それは不法行為ですよね、そして賠償、というような形になるということです。
これも裁判がいっぱいあって、代表的な例を挙げています。電通事件、電通の社員ですね。これはメンタルヘルスです。過重労働の結果、メンタルヘルス不全、うつ病になりまして、結果として自殺をしてしまいました。会社側は訴えられまして、これは最高裁までいきました。結果として高裁差し戻し和解で賠償額が1億円を越えました。それから、さっきからお話をしております鹿児島のファミレスのケースですね。ここの事件は2億円弱、遅延損害金をいれると2億円を越えたということになりましたから、損害賠償の責めを負うということです。
それから3番目、労働者本人に対する安全配慮義務とかの賠償以外にも、例えば労働者が何か加害行為を起こしてしまった時、過重労働の結果加害行為を起こしてしまった時については、それに対する賠償も会社に言ってくるということです。使用者責任というふうに呼びます。
ケースとして一番分かりやすいのは、旅行会社のスキーバスの運転手です。これも実際にあった事件です。旅行会社のスキーバスの運転手は季節労働ですから、冬のスキーの時期はもの凄く忙しいんです。もうピストン輸送です。スキーバスの発着所からスキーに行くお客さんを乗せて、市内まで連れて来て、またこっちへ戻って、ということをピストン輸送でどんどんやるわけです。全く寝られないんですね。スキーバスって夜中走りますから。朝着いたらスキー場、みたいな感じですから。そうすると労働者は全然寝られませんので、結果として意識が朦朧となったまま、つまり過重労働のままバスを運転しまして、高速道路で事故を起こしました。居眠り運転ですね。
この結果、会社側はどうなったかというと、賠償そのものは保険に入っていましたので、保険の方から賠償が受けられたというふうに聞いています。ただ、会社側としては過重労働の結果事故を起こしたということで、労働基準法違反、労働安全衛生法違反で摘発されまして、会社は潰れました。これも結構有名な事件です。
ですから、仮に労働者、この中に運送業とか旅行業とかそういう方がもしいらっしゃれば、例えば過重労働の結果車の運転で事故を起こすとかですね、タクシーの運転手さんなんかもそうですけど。そういう事故を起こすというようなケースがあって、結果として誰かに怪我をさせたとかいうような事になれば、それはそれで会社の責任ということです。
ですから、この問題に対しても、会社がどのように取り組むかということ。これはもしあるのであれば、やっぱり明文化しておく必要があるだろうと思います。この例が別紙のその4ですね、一番最後の別紙になります。

時間外及び休日労働に対する基本的な方針ということで、就業規則に明文化しています。業務の都合上時間外労働や休日労働が発生するのは仕方がないところですけれど、事務所としてはこれを出来るだけ削減したいと考えています。これは税理士事務所のパターンなんです。この中に税理士さんいらっしゃいますか?税理士事務所さんは、この時期は無茶苦茶忙しいんです。確定申告だからですね。大体事務所に戻るのが25時とか、そこから2時間仕事をして、事務所を出るのが27時とか。翌日朝9時から仕事とか、もの凄い過重労働です。
税理士事務所の所長とよくお話をするんですけど、「これで社員が倒れたら絶対過労死やね、賠償1億やろうね」、っていう話をします。ですので、そういうことにならないように、きちんと考え方を明文化をして、従業員にもきちんとお話をしています。労働時間が過剰になれば、業務効率上マイナスに作用するだけではなく、皆さんの健康面にも重大な悪影響を及ぼしますし、職員の方々は事務所の時間外労働等に対する基本的な方針を認識して、積極的に時間外労働の短縮に取り組んでくださいとお話をしてます。
基本的な方針、漫然と放置しない、というやつです。きちんと会社としては対策をとっています、というところですね。勤務は19時まで、21時以降はサーバーを止めます。それから水曜日は絶対定時で帰りなさい。6時以降に事務所を出るなら上長の許可を得なさい、とかいうふうにして、過重労働にならないように会社としてきちんと配慮をしていますとか、その配慮のやり方がこういうところです、というふうにしているわけです。
特に、第2項の⑥ですね。過重労働等により体調の不良がある場合には、必ず上長に申告をして指示を受けてくださいと。ですから、過重労働でどうも目まいがするとか、朝起きられない、とかいうことがあるのなら、それはちゃんと言ってください。それはあなたたちの方から言ってもらわないと、会社だってなかなか分かりませんよ、という話です。
それで労働者の申告制というのを作って、会社としてきちんと対策をとります、ということ。実際に申告があれば、指定医に健康診断に行かせたり、労働時間を減らしたり、というような努力、これは会社の経営者の方にお願いをしているところです。
それから3番目。だからといって、サボってもいいですよ、という意味ではないということ。手を抜けというようなことは言いませんと。それから繁忙期には別の指示をすることがあります。繁忙期とは、今のことです。1月、2月、3月の15日まで。繁忙期になってしまって、これでは絶対に終わらないことは分かっているんです。ですから、繁忙期には別の指示をしますけど、その時にもやっぱり会社はちゃんと配慮をするんです、というような規定です。
繁忙期がなければ、そんな勤務だったら人を入れなさい、とうちは言うんですけどね。「そんな残業をさせるんだったら、人を入れたらいいのに」って言うんですけれど、税理士事務所の場合には季節労働というところもあって、その時期だけしか忙しくなくて、普段は6時に帰る日もあるということなので、単純に補充も出来ないというような悩みも持っていらっしゃって、それでこういうふうな規定を作っています。
第18条、その次が時間外労働に対する許可制、申請制の規定。それから休日労働の規定が19条なんですけど、これは実は下の2行のところがちょっと重要なところでして、休日労働は当然しょうがないんだけれど、いずれの場合でも、上長及び申請者は週1日の休日を確保するなど、事務所の時間外労働等に対する基本的な方針の順守を原則としますと記載されています。
これは実は医学的見地のお話になるんですけど、医学的見地から見ると、1日の労働時間の長さが過重であるかどうかよりも、連続して労働することの方が、医学的には労働者に負担が大きいというふうに言われているんですね。ですから、普段の勤務が深夜1時や2時になるとかであっても、ちゃんと1週間で1日の休日が取れるのであれば、疲労回復にはかなり役立つんだそうです。これはお医者さんからみた医学的見地です。
ですから、週1日のお休みを与えるというのは結構大事なことなんだそうです。「これでゆっくり休めると、過労死の問題はかなり防げるはずなんですけどね」、というふうなお話をしていました。ですから週1日の休日を確保することによって、労働者が過重労働にならないようにきちんと会社は気を使っております、というところです。
これが、過重労働の結果、労働者が死亡したり障害者になったり、あるいはメンタルヘルス不全を起こさないように、会社として対策をとっているという姿勢です。
またレジュメに戻ります。レジュメの最後、6番ですね。もし訴えられてしまったら。労働者側としては色々訴えるアクションというのがあるんですけど、監督所の申告とか、裁判前の斡旋とか労働審判とか、民事訴訟とか色々やり方はあります。仮にもし訴えられてしまったら、労働関係の相談窓口に私がおりますので商工会議所に相談に来てください。
相談にまずお見えになって、労働者側からどういう申し立てをされたのか、どういうふうな手段に訴えられたのか、というお話をお聞きして、個別に対応をするというところをアドバイスします。
あとは申し訳ない、ちょっとそこを読んでいただいて、「なるほど、こういうふうなポイントで労働者は訴えるんだな」と。それぞれに色々と長所とか短所とかがありますので、そこの部分もご覧になってください。
以上ですね、かなり早口で、かなりガチャガチャっとご説明をしました。もし何かご質問等ございましたら、挙手していただければ、職員の方が回ってきますので。何かございましたら、お聞きになって下さい。
○質問者
(聞き取り不可能)
○島村
最後の6番、訴えられてしまったらというやつですか?はい。それでは時間が過ぎておりますが、もし訴えられてしまったらというところに関して、リクエストがありましたのでお話をします。
一番最初に起こすアクションは、①番にある通り、労働基準監督署への申告です。監督署に必ず相談に行きます。そうすると、監督署は一番最初は手は出しません。どうするかというと、労働者に、1回会社側に請求を出しなさいと必ず言います。
労働者側が会社に1回きちんと請求をしたんだけれど、それでも会社が受けあってくれないようであれば、もう1回相談に来なさい、というふうに必ず流します。ですから、労働者の方から内容証明なり書留なりが届いて、それっぽいことが書いてあったら、労働基準監督署に申告をしたんだな、というふうに思っていただければよろしいかと思います。
会社側にもし落ち度があるような時、これはもうどう見てもあかんな、というような時には、労働者と和解して下さい。話合いに応じるようであれば、話合いをして下さい。どうしても労働者が話合いに応じてくれない、携帯電話にも出でくれない。その時には会社の方から監督署に行ってください。
労働者の方から、こういう申し立てが来ました、会社としては解決したいと考えているんですけど、全然電話に出ないんですと言ってください。そうしたら、監督署が仲立ちをしてくれます。お役所も嫌なところばかりではないので、解決することが前提なので、ちゃんと相談に乗ります。監督署の方から、その労働者に電話して、「会社が話合いをしたいって言ってるから、1度話し合いをして見ませんか?」というふうに必ず言ってくれます。
そこで会社側はきちんと労働者とお話をして、もうこれはあかんな、落ち度があるな、ということであれば金額の交渉の話になるでしょうね。あるいは全額は一気に払えないので分割で、というような話をするとかですね。あるいはちゃんと労働者側に会社側の考え方を主張するというやり方もあります。きちんと制度を作っておけば、そういうやり方も当然あるだろうなと思います。これは監督署に対してもきちんと主張されたらよろしいかと思います。
これで解決をしないと、その次に一般的によくやるのが斡旋と呼ばれるやり方です。裁判の前の段階でして、労働者と使用者の両方を呼び出して、斡旋員という人が中立的な立場でお話を聞くというやつです。
これは費用が1円も掛からないというところと、公正なところでお話が出来るということで、労働者は比較的よく使っているみたいです。ただ、斡旋については会社側のメリットが1つあって、参加しなくてもいいということです。
ですから、斡旋しますよと仮に呼び出しを受けたとしても、もう話合う意思が会社の方になければ蹴ることが出来る、というふうになりますから、蹴るという事も1つの選択肢だと思います。どうしても解決をしたい、監督署レベルでも解決できない、和解にも応じない、それでも解決をしたいということであれば、参加することは有効だろうと思います。
何故かというと、これは決着点が低いんです。裁判になると200万円というところを、斡旋だと20万円くらいで解決したりします。決着点を低くして、できるだけ解決を図るというのが斡旋の目的ですから、決着点が低いというメリットもあるので、会社として例えば「20万円払ってこの問題が解決出来るのであれば、それはそれで安い」と思われるのは一つの考え方でしょうから、それによって解決するというのは一つの方法だろうと思います。
それからその上の段階になりますと、労働審判と呼ばれるもので、労働事件専門の裁判制度です。この辺が、弁護士さんが一生懸命やっているところです。通常の裁判のように、何年という単位はかかりません。2ヶ月程度で決着します。これは、仕組みは裁判ですから、不参加は認められません。これは行かなかったら欠席裁判で大変な目に遭うだけですから、これは必ず参加しないといけません。
ただ、実務的には和解がほ殆どです。ですから、労働審判の場合には審判官という人が立つんですけど、その人たちが「和解しなさい、このくらいの金額でどうですか」、というようなところで和解をかなり強烈に勧めています。それから、本来的にはこれは裁判制度なんですけれど、弁護士なんかの代理人を立てなくて、本人で申し立てをするということも、実はやり方としては可能です。
元々、裁判は本人訴訟が出来るんで、労働審判も、裁判制度に近いような言い方をしているんですけど、やっぱり労働者寄りの仕組みですから、労働者が自分自身で申し立てをする時には、何となく裁判官にあたる審判官の人たちが、ちょっと労働者に肩入れしたりとか、「あんたが言いたいのはこういうことじゃないの?」というような事をちょっとサジェスチョンしたりとかするもんですから、本人訴訟というようなケースも結構増えています。それでも裁判ですからね、参加しないわけにはいきませんので、これは出席しなければいけないということです。
ただ、会社側として和解ものまない、それから労働審判ものまない、審判も判決ではありませんから、のまないということは可能です。そのような場合は、その上の民事訴訟に行くんですけど、これはもうハードルが高いです。
実際に裁判になるということであれば、やっぱり数百万お金が取れないと、勝つ見込みがないと弁護士が受けませんから。ある程度の証拠があって、金額が取れるというような場合については、民事訴訟というケースになり得るということです。この場合には、さっきお話をした通り、悪質であるという場合には付加金で倍返しになってしまいますので、会社側に明らかに落ち度があるというような場合については、この民事訴訟に行く前に、会社側としてなにか色々な方法で解決を図られることをお勧めしております。こういうところでよろしいでしょうか。
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講師:島村 進(しまむら すすむ)
社会保険労務士
1961年神奈川県生まれ。近畿大学法学部法律学科を卒業後、広告代理店入社。その後、経営者団体相談員を経て、平成8年、社会保険労務士試験合格。平成11年、福岡総合労務管理事務所設立。通常の社会保険等の手続き業務に加え、企業防衛のための就業規則の作成など労務管理に関する法的整備のコンサルティング、事業承継・事業再生における労務問題対応、労働者・退職者との労使紛争解決支援、訴訟対策支援など、企業における労務の「困った」の解決に力を入れている。- 日時・場所
2010年3月18日(木)
14:00~15:30福岡商工会議所 505号室
博多区博多駅前2-9-28
TEL 092-441-2161JR博多駅博多口より徒歩約10分
地下鉄祇園駅5番出口より徒歩約5分
駐車場は有料の立体駐車場がございます。



















